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125話 金色のガルザヘッサ その1

 新たに村が襲われたという情報を得たウィンドとリサヴィはその村に向かったがすでに金色のガルザヘッサは姿はなかった。

 村には一組のパーティがベルフィ達より先に来ており、ベルフィ達の姿を見ると去っていく。


「おい、生存者はいなかったのか?」


 ベルフィの問いかけに、

 

「知るかよ!そんなの俺達の仕事じゃねえ!」


 と彼らのリーダーらしき者から返事が返ってきた。


「あんたらっ、埋葬ぐらい手伝ったらどうだいっ!」


 ローズの叫びに彼らはバカにしたような笑いで返した。


「なんだいっあいつらっ!」

「落ち着けって。俺らみたいなのが少数派だぜ。悲しいことにな」


 ローズがナックにふんっと鼻を鳴らした。


「生存者がいないか調べましょう」

「……ああ」


 サラの言葉にベルフィが頷く。

 死体は村人だけでなく、冒険者の姿もあった。

 たまたま居合わせたのか、知らせを聞き退治に向かって返り討ちにあったのかもしれないが確かめる術はない。

 ベルフィは静かに拳をきつく握りしめた。


(くそっ、またなのか!まだ俺は仇を討てないのか!)


 そう思った時だった。


「ベルフィっ」


 ローズの決して大きくはない、しかし緊張を含んだ声だった。


「どうした?」


 ローズは森を指差す。


「さっきの奴らが去った方から悲鳴が聞こえたよ。その中に魔物の声も聞こえた気がする。……ガルザヘッサに似てる気が……」


 ローズの言葉からガルザヘッサの名前が出た瞬間、ベルフィは森へ向かって走り出した。


「ベルフィ!?」

「ちょっと待ちなって!あたいが慎重に行動した意味ないだろっ!」


 しかし、ベルフィの足は止まらない。

 このときのベルフィは頭に血が上り、何も考えず走り出していた。


「仕方ないな!追いかけるぞ!」


 ナックが走りだす。


「しょうがないねぇっ」

「わかった」


 ローズが続き、リオ達も追いかける。

 

「やっと会えるのかな」


 皆が緊張する中、リオはどこか緊張感がなかった。

 サラがリオに注意をしようとした時だった。

 

「サラ!ちょっと待て!」


 カリスがサラの腕を掴んで止める。

 二人だけみんなから遅れる。


「カリス!?」

「俺達は様子を見よう」


 カリスはキメ顔でそう言った。


「はあ?」

「副リーダーとしての判断だ!あんな自分勝手な奴は放って……って、ちょ、ちょ待てよ!」


 サラは既に副リーダーを降ろされた事をすっかり忘れているカリスの寝言を聞き流し、強引に腕を振り解くとリオ達を追いかける。

 サラの後を追ってきたカリスが再びサラの手を掴もうとしたが、サラリとかわして加速する。


「さらぁ!」


 カリスは情けない声で叫びながらサラの後を必死に追う。



 先行したベルフィが森の中のちょっと開かれた場所に辿り着いた時、金色のガルザヘッサがいた。

 金色のガルザヘッサは先ほどの冒険者パーティと戦っていた。

 いや、一方的な虐殺で、逃げ出そうとした最後の一人が背中から爪で串刺しにされた。


 それを見てベルフィの脳裏に自分が守れなかった村の惨劇が甦った。

 助けられなかった村人達、かつての冒険者仲間、そして愛する女性。

 ベルフィを除くすべてが死んだ。

 金色のガルザヘッサの前に無惨な最期を遂げた。

 ベルフィにいつもの冷静さはなく、パーティの仲間を待たずして金色のガルザヘッサへ向かって走り出した。

 金色のガルザヘッサが突進してくるベルフィへ顔を向けた。

 その顔に凶悪な笑みを浮かべる。

 金色のガルザヘッサは爪で串刺しにした八十キログラムは優に超えるであろう冒険者を軽々と持ち上げ、ベルフィに向かって放り投げた。

 その冒険者はおそらく死んでいるであろうが、ベルフィは冒険者のことをまったく気遣う素振りも見せず避けた。

 後方でグギッ、嫌な音がしたが振り返ることもない。

 今のベルフィの目には金色のガルザヘッサしか見えていなかった。



 サラと彼女を追いかけるカリスはあっという間にナック達を抜き去り先頭に出た。

 そしてベルフィが大きな金色の魔物と戦闘を始めているのを目にする。


「あれが金色のガルザヘッサ!?」


 サラは自分も戦いに参加すべきかと一瞬立ち止まり躊躇した。

 それがまずかった。

 サラに追いついたカリスはその隙を見逃さずサラの前に出た。

 カリスはもう決して抜かせはしないとでもいうようにサラの前に立ち塞がる。


(この男は一体何と戦っているの!?)


 カリスの理解不能の行動にサラはイライラが募る。


「サラ!無茶するな!俺の後ろにいろ!」


 カリスは荒い息を吐きながらも必死にキメ顔をサラに向ける。


「私の事より早くベルフィの援護を!」

「任せろサラっ!金色のガルザヘッサは俺が倒してやるぜ!」


 カリスはキメ顔でそう言ったが、一向に金色のガルザヘッサに向かって行く様子はない。

 サラが戦況を窺おうとするとその動きを察知し、その視界を遮っては振り返り、


「サラ!前に出るな!俺に任せておけ!」


 と言ってキメ顔をサラに向けるだけであった。

 カリスは戦いに加わるどころかベルフィに加勢しようとするサラの邪魔をするのだ。


「カリス!」

「おうっ!」


 カリスは名前を呼ばれて嬉しそうに振り返り、サラにキメ顔をする。

 それだけだ。


「早くベリフィを助けに行きなさい!」

「任せろ!」


 カリスははっきりそう返事はしたものの、金色のガルザヘッサに向かっていく事はなく、サラの行く手を阻む行為をやめない。

 サラはイライラしながら再度催促する。


「カリス!」

「おうっ!」


 カリスが振り返り腕を上げてキメ顔する。

 それだけだった。


(あれ?時間がループしてる?)


 サラは一瞬、そんなバカな考えが浮かんだが、確実にベルフィは傷を増やし、金色のガルザヘッサに追い詰められていく。


(何考えてるのよ私!そんなバカな事あるわけがないでしょう!そう、バカはコイツだ!)


「退きなさい!あなたが行かないなら私が行きます!」

「馬鹿野郎!俺に任せてお前は下がってろ!」


 カリスはキメ顔でそう言ったが、その言葉とは裏腹にサラのそばから離れようとしなかった。


(ダメだこいつ、この”バカリス“が!!)


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