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124話 生存者の共通点

 リサヴィとカリスがウィンドとギルドで合流した。

 カリスはベルフィにまた命令無視した事で怒鳴られたが、ヘラヘラしており、まったく反省していなかった。

 それどころか、怒られている最中にサラに向かってキメ顔をする始末であった。



 ベルフィ達はこの街で金色のガルザヘッサの情報を収集することにし、宿を取ると一階の酒場で食事をとっていた。

 ヴィヴィはいつも通りひとり部屋に残った。

 ナックがエールをグッと一気飲みする。


「あの金色の野郎、わざとだよな?」


 ナックの言葉にベルフィが頷く。


「ああ。これだけ続くと偶然じゃ済まないな」

「何が?」


 ナックとベルフィの会話にリオが首を傾げる。


「鈍い奴だな。おまえも当事者だろ?」

「ん?」

「奴が殺戮を行ったあと必ず生存者が一人いるんだ」

「そうなんだ」


 ローズが立ち上がり、リオの頭を小突いた後、金色のガルザヘッサの奇行に首を傾げる。


「何か理由があるってのかいっ?」

「……生存者に何か共通点があるのでしょうか?」

「自己顕示欲が強いだけじゃないかっ」


 サラが疑問を投げかけるとカリスが真っ先に答え、サラにキメ顔をする。

「お前もな!」と皆が心の中で叫んだ。


「自分の力を誇示するための証人か」

「確かに証人がいなければ誰の仕業かわからないものな」

「そうですね……その可能性は否定出来ませんね……」

「だろっ!」


 カリスは適当に言った意見が皆に認められ誇らしげな顔をサラに向けるが、サラには考える事があり、カリスの視線を感じてはいたが無視した。

 ベルフィが厳しい表情をして言った。


「ひとつはっきりしていることは奴は明らかに殺しを楽しんでいるということだ」

「そうだな」

「だねっ。それは間違いないよっ!」


 ベルフィは何事か考え込んでいるサラに気づいた。


「サラ、何か思い当たることでもあるのか?」

「え?」


 そこでサラは考えに浸っていた事に気づき、顔を上げてベルフィを見た。

 いや、見ようとしたところ、にょっ、とカリスの気持ち悪いニヤけ顔が正面に現れたので反射的に殴り倒した。


「ってなサラァっ」

「……気持ち悪い」

「おいおい」

「カリス!いい加減にしろっ!」

「わかってるよ」


 しかし、そう言ったカリスの顔はまったくわかっているようには見えず、サラに殴られて何故か嬉しそうだった。


「そもそもなんであなたが私の隣にいるんです!?」


 そう、さっきまではサラの右は壁、左の席はリオが座っていたはずなのだ。

 そのリオはさっきまでカリスが座っている場所にいた。

 

「お前が俺のそばに来たいと思ってな。気にするな。俺から来てやった」


 カリスはどこか誇らしげに言った。


「寝言は寝て言え」

「おいおい……」

「リオっ!あなたの席はここです。ほらっカリスっ、さっさと退きなさい!街の外まで!」

「おいおい、そんなに照れんなよっ」


 やはり、カリスにはサラの真意は伝わらず、席も退こうとしない。


「ベルフィ!」

「おいっサラっ!相談なら勇者の俺……」

「さっさとカリスをパーティから脱退させてください!その場ですぐにストーカー登録しますので!」

「なっ……」

「でなければ私達……リサヴィは“コレ”がいなくなるまで別行動をとります」


 サラは私達、ではまたカリスがバカな勘違いをすると思い、リサヴィとわざわざ言い直した。


「さらぁ……」

「気持ち悪い!さっさとどっか行け!」


 サラは嫌悪を隠しもせずカリスを怒鳴りつける。


「カリス!自分の席に戻るか、追放か今選べ!」


 カリスはベルフィの言葉に舌打ちしつつも、リオに蹴りを入れて退かすと元の席に座った。


「サラ、追放は勘弁してやってくれ。金色のガルザヘッサとの対決が近いかもしれない。今、戦力ダウンはしたくない」

「私はいる方が戦力ダウンだと思いますが」


 サラは正直な感想を述べる。

 すると、


「さらぁ、そんなこというなよぉ。おれはおまえのゆうしゃなんだぞぉ」


 カリスのショタ真似?にサラだけでなく皆が切れた。

 最初に声を上げたのはベルフィだった。


「話がややこしくなるだろ!黙ってろ!!」

「な……」

「次口出したら即、追放だよっ!!」

「ああ、俺もローズに賛成だ」

「……」


 皆の怒りを当てられ、やっとカリスは黙った。


「済まないが今回は大目に見てくれ。頼む」

「……わかりました」


 ベルフィはリオが席に着くのを確認し、改めてサラに尋ねる。


「それでサラ、どうだ?今までに似たような事例を聞いたことないか?」

「いえ、申し訳ありませんが私は聞いた事はありません」


 それは嘘ではなかったが心当たりがないわけでもなかった。

 やがて魔王となるはずのリオが生かされた事を考えて、金色のガルザヘッサは魔王候補、そうでなくとも魔に堕ちるものをなんらかの方法で見分けて生かしているのではないのか、というものだった。

 

(でもそんなことがあるわけないわよね。驚異的な強さをもっているとはいえ相手はただの魔物なのだから……)


「ただ、一つ気になっている事はあります」

「なんだ?」

「ベルフィ、リオ、そして今まで生存した者達に何か共通点があるのではないか、という事です」

「共通点だと?」

「はい」

「他の奴らはともかくさ、ベルフィとリオの共通点?」


 ナックが首を傾げる。

 

「どこもないんじゃないか」

「そうだよっ!ベルフィとこのボケガキのどこに共通点があるって言うんだいっ!?」

「済まんが俺も思いつくものはないな」

「そうなんだ」


 サラは他人事のようにいうリオの頭を最早条件反射のようにどつく。


「そうですか。あなた達が言うのでしたらそうなのでしょう。私も何か根拠があって言ってるわけではありませんので」



 姿をまったく現さなかった金色のガルザヘッサであるが、この日を境に目撃情報が増え始めた。

 イコール、それだけ村が襲われた、ということでもあった。


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