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122話 堪忍袋の緒が切れた

 次の日。

 街を出るとすぐにカリスが隊列を崩し、サラの元へやってきた。

 サラはその行動とニヤけた表情を見て全く反省していない、と思った。

 そしてその通りだった。


「サラ、昨日の事だが気にするな。俺は全然気にしてねえ。誰だって虫の居所が悪い時もあるぜ」


 カリスがキメ顔で言うがサラは見向きもしなかった。

 カリスはサラがまだ虫の居所が悪いと思い宥めようとその肩に手を伸ばすが寸前で弾かれた。


「なっ、サラ!?」

「あなた前衛でしょ。さっさと持ち場に戻りなさい」

「お前、何命令してんだ?流石に温和な俺でも怒るぜ!」


 カリスの怒りの表情をサラは冷めた目で見る。

 先に折れたのはカリスだった。


「なあ、機嫌直せよ」

「前衛に戻りなさい」


 サラは機械的にもう一度言った。

 カリスはムッとしたものの、「やれやれ、仕方がない奴だな」とまるで彼女のわがままでも聞いてやったみたいな顔で勝手に納得して戻っていった。

 


 そして、休憩でサラは再び密着してこようとするカリスに我慢できず、今夜、宿で言うはずだった昨日の結論を言うことにした。

 

「ベルフィ」

「おいっサラ!俺がいるだろ!相談なら俺にしろ!」


 サラは冷めた目でチラリとカリスを見た後、


「私達は別行動をとることにしました」


 その言葉にベルフィ、ナック、ローズは驚かなかった。

 一人驚いたカリスが、照れたような表情でバカな事を言った。

 

「ちょっと待てサラ。勝手に決めるなよ。いや、俺達二人ってのは反対するわけじゃないが、前もって話してくれねえと。本当お前は思い込みが激しいなぁ」

「「「「「「……」」」」」」

「だが、まあそう言うことだベルフィ、ちゃんと連絡はとるからよっ」


 カリスの最初の言葉で呆然としていた皆が今の言葉で我に返る。

 サラは肩を震わせながら「何故こんな説明しなくてはならないのか」と思いながら言った。

 

「カリス、あなただけ何故か理解できていないようなのではっきり言いますが、“私達”とはリサヴィの事です」

「なっ……」

「当然、あなたは含まれていません」

「ちょ、ちょ待てよ!聞いてねえぞ!なんでそうなる!?」

「いや、カリス、お前とサラちゃんで別行動とるって方こそ、なんでそうなる、だぜ」


 ナックが正論を言うがカリスに正論が通じるはずもない。

 

「俺は反対だ!お前もだろベルフィ!」

「俺はサラの意見に賛成だ」

「な、何でだっ!?金色のガルザヘッサは強敵なんだろ!神官は必要だぞ!」

「心配するな。さっきお前が言ったようにリサヴィとは連絡をとる」

「いやっしかしっ!せっかく仲間にした神官だぞ!」

「リオがな」


 とナック。


「そ、それはそうだが……リオについて来たのは俺の力が必要だったからだろ!?」


 カリスがサラに詰め寄るがあっさりと否定する。


「あなたの、ではありません」

「あ、ああ、俺達のだ俺達の!ってこんな時まで恥ずかしがってんじゃねえぜ!」


 あくまでもサラには自分の力が必要だと全く疑わないカリス。


「……私の任務は今のパーティ、リサヴィでも対応可能と判断しました」

「ふざけんな!俺の力がリオやヴィヴィに劣ると言うのか!?」


 サラは思わず「はい」と言いそうになったが、出来るだけ穏便に済ませたいとの思いからその言葉をどうにか飲み込んだ。

 

「……リサヴィの力で十分だと判断しました」

「いやっ、それは、それでも力は大きいに越したことがないだろう!」

「ですから別れても連絡を取りますので難しいようならベルフィと相談します」

「なんでそこでベルフィが出て来るんだ!」

「ウィンドのリーダーですから」

「俺は副リーダーだぞ!」

「それが?」


 カリスはそう言われて初めて馬鹿な事を言ったと気づく。

 そこにベルフィがカリスの間違いを指摘する。


「カリス、お前はもう副リーダーじゃないだろう」

「なっ……」

「ぐふ?」


 ヴィヴィが少し首を傾げたのでナックが補足する。


「カリスは副リーダーを解任されたんだ」

「おいっ!ナック!それは言わない約束だろ!約束破りだぞ!」

「何言ってんだいっ!約束破ったのはあんたの方だろうっ!副リーダーだって言わないって約束をねっ!」

「な……」

「なるほど。では、もう強引に理由づけするものもないようですね」


 サラが冷めた目でカリスを見ながら言った。

 しかし、カリスは諦めはしない。

 この程度で引き下がるものがストーカーランク一位を維持できるはずがないのである。

 

「……わかった」

「やっとわかってもらえましたか」

「ああ、仕方ない。俺もリサヴィについて行ってやる」


 カリスがやれやれ、という顔で言った。

 しかし、この解答が来ることを予想済みだったヴィヴィが即拒否する。


「ぐふ。寝言は寝て言え」

「な、なんだと棺桶持ちが!」

「ぐふ。私達はお前を必要としていない。助けが必要としてもそれはお前ではない」

「てめっ!おいっサラ!こんな馬鹿な事言う棺桶持ちと一緒にいる事ねえ!俺と来い!」

「お断ります」


 サラはカリスの提案を即拒否する。


「な……さ、さらぁ……」

「前から言ってますが、その気持ち悪い言い方やめてください」

「な、何言ってんだ!ショタコンのお前のために……!!」


 サラに睨まれてカリスが黙る。

 

「ともかく、私達は別行動をとります」

「ゆ、許さん!」

「あなたの許可など必要ありません。私はあなたと一緒にいると気が狂いそうです」


 サラは冷めた目でカリスを見ながらそう言った。


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