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119話 カリス脱退す!? その1

 その日の夜。

 ベルフィはウィンドメンバーだけが揃った宿屋の部屋でカリスの勝手な行動を厳しく注意したのだが、全く反省する様子はなかった。

 更にサラが言ったカリスを拒絶するあらゆる言葉がカリスの中で自分に都合がいいように解釈されている事を知って愕然とする。

 ベルフィが「サラはお前のストーカー行為に迷惑している」と事実を何度言ってもカリスはサラが自分の事を愛しており、勇者だと思っている、という考えを変えない。

 ベルフィはウンザリしながら再度カリスに確認する。


「ではサラの方がお前に気があると言い張るんだな?」

「言い張るも何もそれが事実だからな」


 カリスがちょっと人を馬鹿にしたような笑みを浮かべた。


「ベルフィ、お前、自分が勇者に選ばれなかったからって僻むなよ」

「はあ?」


 ベルフィはカリスがここまで言葉が通じなくなっているとは思わなかった。

 それはローズとナックも同様だった。

 言葉だけでの説得が無理と判断したナックがある提案を持ちかける。


「じゃあカリスの言う事が事実か確かめようぜ」


 ベルフィがナックに尋ねる。


「どうするんだ?」

「簡単だ。カリスからサラに近づいたり声をかけるのをやめるんだ」

「なるほど。カリスの言う事が本当ならサラの方から我慢できずに声かけてくるか」


 だが、その提案をカリスが否定する。


「サラは素直じゃないんだ。そんな事したら意地になって俺に寄って来ないだろう」

「本当に好きなら我慢できずに声かけて来るはずだ」


 ナックの言葉にベルフィとローズが頷く。


「よし、それで行こう。これでサラの方からお前に寄ってきたり声をかけてきたらお前の言う事を信じよう」

「なんだとっ!?」

「これは決定だカリス。明日、サラに俺から話す」


 カリスは納得できず激怒して立ち上がると、


「わかったぜ!そこまで俺を信用できないってならウィンドを抜けるぜ!」

「「「……」」」


 カリスがそう言ったあと、部屋がしん、となる。

 カリスは直ぐにみんなが「言い過ぎた」と謝るものと思い、その言葉を待つが一向に誰も謝りも引き止めようともしないので焦り出す。


「おいっ、いいのか?本当に出ていくぞ!?」


 ようやくベルフィが口を開いたが、それはカリスが待ち望んだものではなかった。


「……そうか、わかった。元気でな」

「へっ?」

「ヴェインの家に置いてあるお前の荷物はまとめておく。家の購入にお前が出した金だが、購入する時に決めた額をお前の口座に振り込んでおく」

「ちょ、ちょ待てよっ!」


 焦り出すカリスを置いてローズもベルフィに続く。


「ヴェインに帰ったらマジックキー解除しとくよっ。あそこはウィンドの家だからねっ」


 最初は脅しのつもりだったカリスだが、誰も止めないので本当に出て行く決心をした。


「勝手にしろ!だがなっ、俺一人で出て行くんじゃないぞ!俺が出ていくと知ればサラも間違いなく俺についてくるからな!」

「そうか」

「そうかな」

「あたいはそれでもかまわないよっ」


 その脅しも彼らに通じなかった。

 そもそも脅しになっていないことにカリスだけが気づかない。

 カリスは「ちっ!」と舌打ちするとドアを乱暴に開けて部屋を出ていった。



「もうみんな寝ていますので」


 リサヴィの部屋にやって来たカリスが強引に部屋へ入ろうとするのをサラが部屋の前で押し留める。

 不満顔のカリスを無視して用件を尋ねる。


「それで重要な話とはなんですか?本当の本当に重要なんですよね?嘘だったらベルフィに言いつけます」

「ああ、本当だ!実はな……」


 カリスは先ほどのカリスがウィンドを脱退する決意をした経緯をベルフィ達に問題があったかの様に説明する。


「……ということなんだ」


 サラは実際にあった出来事を正確に理解した。

 ついにベルフィ達はカリスを切る決心をしたのだと。


「そうですか。お元気で」


 サラは意識して「お世話になりました」を省略する。

 お世辞でも絶対にその言葉を言いたくなかったのだ。

 その事に気付いた様子もなく、カリスが笑った。


「はははっ、何を言ってんだ。心配するなっ。当然お前も一緒だっ」

「寝言は寝て言え。お元気で」


 カリスの提案を即拒否するサラ。

 まさかサラに断られるとは夢にも思っていなかったカリスは一瞬思考停止し、驚きの表情で問う。


「何故だっ!?俺が出ていくんだぞ!?」

「ですからお元気で」

「違うだろ!お前の勇者が出て行くんだぞ。お前が一緒に来ないでどうする!?」

「……これを言うのは何度目かはわかりませんが、」

「どうしたっ?なんでも言ってみろっ」

「私はあなたを勇者と言ったことも思った事もただの一度もありません。お元気で」

「ちょ、ちょ待てよっ!」

「何を待つのですか。お元気で」

「もうベルフィ達に言っちまったんだっ!なっ?頼むぜっ。今更取り消しなんてカッコつかないぜ。だろ?」


 カリスはキメ顔でサラを見るが、サラは全く表情を変える事なく言った。


「そうですか。ではお元気で」

「そうじゃないだろ!二人で楽しく旅しようぜ!このままベルフィ達と一緒にいても奴は金色のガルザヘッサを追い回すだけだぜっ!」

「……そういえば、あなたは金色のガルザヘッサには興味がないのでしたね」

「ああ。あんな神出鬼没の魔物探し回るなんて馬鹿げてるぜ!」


 カリスは心底バカにしたように言った。


「……そうですか。しかし、私の任務には金色のガルザヘッサの調査が含まれていますのでそういうわけには行きません」


 カリスはその事をすっかり忘れており、しまったっ、という表情をする。


「あ、そ、そういえばそうだったな、はははっ。じゃ、じゃあよっ……」

「やはりあなたと行動するメリットは何もないですね。ではお元気で」


 サラはそう言うと目にも止まらぬ速さで部屋に入るとドアを閉め鍵をかけた。

 呆気に取られたカリスが我に返る。


『ちょ、ちょ待てよ!もうちょっと話そうぜ!サラ!さらぁ!』


 カリスがガチャガチャとノブを乱暴に回すが当然開かない。


「ドアが壊れるのでやめて下さい。なお、ドアを壊したらサンドバックにします」

「ぐふ。私も手伝おう」


 サラの言葉にヴィヴィが参戦の意思を示す。


「ではお元気で」

『さらぁ……』


 カリスはショタ真似?の情けない声を出して同情を買おうとするが、部屋の中から反応は全くなかった。



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