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118話 愚行は続く その2

「……俺、いつの間に寝てたんだ?」

「覚えてないのか?」

「ああ。だがいい夢を見たぜ。サラが俺の頬に触れてだな……ってこれ以上言わせんなっ」

「……」


 カリスが覚えていないとわかり、誰もカリスが気を失った事に触れなかった。



 旅を再開してしばらく経って後方から魔物が近付いて来るのに気づいた。

 サラが前衛に知らせる。


「ベルフィ!後ろからウォルーが来ます。見えているだけでその数は五!」


 ベルフィが指示する前に“前衛に戻ったばかり”のカリスが動いた。


「おいっカリス!」

「俺に任せろ!」


 カリスはベルフィの制止を聞かず、後方へと駆け出す。

 リオがウォルーに向かって剣を構えていると後ろからカリスが突進してきた。


「邪魔だどけ!」


 カリスはいつもサラと一緒にいるリオに嫉妬していた。

 同じパーティなのだから一緒にいるのはおかしくないのだがカリスは気に入らない。

 だから後方からの襲撃があった場合、敵に向かう前にリオにタックルを食らわして気晴らしをしていた。

 今回も当然リオにタックルを食らわす気でいたが、リオは振り向きもせずあっさりとカリスのタックルを避けた。


「おあっ!?」


 タックルが空振りに終わりバランスを崩したカリスだが、なんとか持ち直した。

 と思ったところで石ころに躓き豪快に転ぶ。


「リオっ!てめえ!」


 カリスは起き上がると顔を真っ赤にして、ウォルーが目前に迫っているにも拘らずリオに斬りかかる。

 しかし、その攻撃はヴィヴィのリムーバルバインダーに阻まれただけでなく、そのまま盾で思いっきり顔面を叩かれ、「ぐへっ」と情けない声を出し、くるくる回転しながら宙を舞うと、ぼてっと落ちてまたもや気絶した。


 唖然とするウィンドの面々。

 そこへリオの緊張感のない声がする。


「ベルフィ、僕が戦っていい?」


 マイペースなリオにベルフィが、


「ああ、やれ」


 と許可を出した。



 戦闘が終わり、目覚めたカリスは今回気絶した理由を覚えていた。

 カリスはサラの前で情けない姿を晒した事が恥ずかしくて、屈辱と怒りで顔を真っ赤にしながらリオに大剣を向ける。


「コイツが俺の足を引っ掛けやがったんだ!なっ!?サラも見ただろ!!」

「ええ、見ました」

「そうだろう!」


 カリスが満面笑みを浮かべるが、


「あなたが意味もなくリオにタックルしようとして失敗し、無様に転んだところを」

「なっ……」

「それで我を忘れて敵味方の区別も出来ず、リオを攻撃しようとトチ狂ったあなたをヴィヴィが止めたのです」


 サラはカリスの行動を正確に伝える。

 サラの容赦ない指摘に焦るカリス。


「ちょ、ちょ待てよっ!トチ狂ったって……そりゃ言い過ぎだろ。なっ?なっ?」

「ショタ神官の肩を持ちたくないけどその通りだよっ。あんたは勝手に転んでそれをリオのせいにしてっ!みっともないねっ!」

「ローズてめっ!サラの前でそんな適当な事を……」

「つまり私も適当な事を言っていると?」


 サラの冷めた目を見て焦るカリス。


「そ、そうじゃねえ!そう言う意味じゃねんだ!わかるだろ?なっサラ?」


 カリスの期待を込めた目をサラは冷ややかに見返し首を横に振る。


「まったくわかりません」

「そ、そりゃねえ……」

「カリス、あなたはそれでも本当にBランク冒険者なのですか?」

「さらぁ……」


 まさに四面楚歌。

 カリスを擁護する者は誰もいない。

 それでもなんとか失態をなかった事にしたいカリスは辺りを見回し、ぼー、としてるリオに目が止まる。


「な、なあリオ、お前、俺の足を引っ掛けたよな?な?怒らないから正直にサラに言ってやってくれよ」


 カリスはまだ自分の過ちを認めないどころか、気持ち悪い猫なで声を出してリオに無実の罪を着せようとする。

 誰が見ても見苦しい事この上なかった。

 リオはといえば首を傾げるのみである。

 リオがダメだとわかると今度は自分を殴って気絶させたヴィヴィを頼ろうとする。

 もうなんでもありであった。


「なあ棺桶……ヴィヴィ……」

「ぐふ。寝言は寝て言え」


 しかし、ヴィヴィには何か言う前に拒否された。


「てめっ棺桶持ちが!」

「カリス!もうみっともない真似はよせ!」

「何だとっ!?」

「どこまで俺達を失望させる気だ!」

「お前が足掻く度にサラの信用を無くしている事に何故気づかないんだ?」


 ベルフィとナックに責められ、カリスはサラに助けを求める。


「そ、そんなことないよなサラ、お前だけは俺の味方だよな!なんせ俺はお前の勇者……」

「などと言った事は一度もありませんし、思った事すらありません」

「さらぁ……」


 サラは深く、それは深くため息をついて言った。

 

「……気持ち悪い」


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