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111話 補充 その2

 武器屋へ向かう途中、ナックと出会った。


「あれ?ナック、分配はもう終わったのですか?」

「ああ、俺の分はな」

「ん?」


 リオが首を傾げたのでナックはもう少し詳しく説明する。


「俺は魔道具担当なんだ。宝石や他の装飾品はローズが担当だな」

「なるほど」

「それでナックはどこへ行くのです……いえ、いいです」

「あ〜れ〜?サラちゃん、俺が何処に行くと思ったのかなぁ〜」

「……」

「んん〜?」


 サラはしつこくからかってくるナックの頭を叩く。

 いや、叩こうとしたのだが、その手は空を切った。

 サラは手加減をしていたが、避けられるとは思わなかった。


「あっぶないなあ!」

「……よく避けましたね」

「いやあ、俺、実は護身術も学んでたんだ。来るとわかってれば俺だってなっ」


 ナックがどこか誇らしげに言った。


「意外です。てっきり努力しない人だと思ってました」

「いやあ、それほどでも」


 ナックが嬉しそうに頭をかく。


「誉めてませんが」

「お?俺のことが知りたいって顔だな?」

「いえ、全然」

「しょうがない。今回は特別だぞ。だが惚れるなよ?」


 そういうとナックは勝手に昔話を始めた。


「そう、あれはまだ俺が魔術学校に通っている頃だった。かわいい子がいてな。思わず口説いちゃって彼女にしちゃったんだよ。そしたら、その子、実は彼氏持ちでさあ。二股かけてたんだ。酷いと思わないか?」

「……」

「やっぱりそう思うだろ?そうだろう。で、彼氏が怒っちゃってさ。フルボッコされたんだ」

「それはいい経験をしましたね」

「まあ、こんなことが何度も続いてよ」

「何度も続いたんですか」

「いや、それほどでもっ」


 サラの呆れ顔にナックがどこか誇らしげな顔をする。


「だから誉めてません」


 ナックはサラのツッコミを無視して話を続ける。


「そんなわけでだ、魔術に勉強の合間を縫って護身術を学んだってわけだ。魔術より熱心なときもあったなぁ」


 ナックがどこか懐かしむ表情をする。


「何故、その性格を直そうと思わなかったのですか?」


 ナックが笑った。

 

「そんな事したら俺じゃなくなるだろ?」

「あなたと言う人は……」

「ぐふ。それでどこに行くつもりだったのだ?」


 ヴィヴィが話を元に戻す。

 

「そうだったな。サラちゃんが変な想像……って冗談だからその手を降ろせってっ」

「……たく」

「魔術士が出かけるところなんて一つしかないだろう?魔術士ギルドだ」

「もしかして新しい魔法を手に入れるのですか?」

「ああ。なんかいいものがあったらな。結構懐が暖かくなるから強力なものがあったら思い切って買おうと思ってな」

「そうですか」

「そうだ。ヴィヴィも来るか?」

「ぐふ。魔装士に何を期待してるのだ?」

「そうか?まあいいや。それでサラちゃん達は?やっぱ娼館……イテッ」


 サラがナックをどついた。


「くそ〜、今度は避けきれなかったかぁ」

「私達は武器の調達です」

「なんだ、つまらん」

「何を期待してるのですか何を」

「そりゃナニ、って冗談だからっ!ったく、サラちゃんはもう少し下ネタに慣れた方がいいぞ。そんなんじゃ立派な冒険者になれんぞ」

「そうなんだ」


 リオの頭が不意に下を向いた。

 サラにどつかれたのだ。

 

「僕……」

「ナックの言うことを信じてはいけません」

「ひでえ!サラちゃんひでえ!」

「うるさいです」

「へいへい……あれ?」

「どうしました?」

「そういや、カリスと一緒じゃないのか?あいつ、サラちゃんについて行ったと思ったが撒いたのか?」

「ぐふ。そんな面倒な事をする必要はない。サラをナンパした奴と乱闘騒ぎを起こして連行されて行った」

「またかよ〜。流石に二度目となると金払ってもすぐには釈放されないかもしれないなぁ。その事をベルフィは?」

「まだ話していません」

「そうか。こっちのパーティの不始末だしな。どちらか宿屋に早く帰ったほうが伝えると言うことでいいか?」

「はい、わかりました」


 そうして、サラ達はナックと別れた。



 武器屋に入るなり、リオが呟いた。


「魔装士だ」

「……」


 そう、武器屋には魔装士がいた。

 黒いコートに白い仮面。ここまでの装備はヴィヴィのものと大して変わらない。最大の違いはヴィヴィが両肩に大型の盾を装備しているのに対し、この魔装士は左肩にヴィヴィのよりもやや小型の盾を、右肩には盾ではなくショルダーガードを、背中には槍を装備していたことである。

 ヴィヴィの装備が防御や運搬に重点を置いているのに対し、この魔装士は攻撃に重点を置いているようであった。

 槍装備の魔裝士がヴィヴィに気づいた。

 槍装備の魔装士は仮面の下半分をスライドさせ口元が露わになる。


「おっ。そこの奴はカルハンの魔装具か」

「ぐふ。それはフェランの魔装具だな」


 ヴィヴィの質問に槍装備の魔裝士の口元が緩む。


「そうだぜ。この魔装具は鉄の街フェランで開発されたものだ」


 鉄の街フェラン。

 それは街のどこを歩いても鉄を鍛える音が聞こえるほど多くの鍛冶屋があり、優れた武器を手に入れたいならフェランに向かえ、と言われるほど有名である。


「俺も昔はそのカルハンタイプを使ってたんだが、カルハンが教団とケンカして手に入り難くなっただろ?それに前々から荷物持ち扱いされてムカついていたからよ、フェランでこの攻撃タイプを見たとき『これこそ俺が探し求めていた物だ!』と思って買ったんだ。いいぜ、こいつはよ!」


 槍装備の魔裝士は背にした槍でモンスターを葬った話など散々自慢し、仲間に呼ばれるまで話し続けた。

 彼らが武器屋を去ったあとリオがヴィヴィに尋ねる。


「ヴィヴィはどう?」

「ぐふ、必要ない。私はこの魔装具に不満はないからな」

「そうなんだ」



 サラ達が宿屋に帰り、ベルフィ達の部屋に向かった。

 中には宝の山が二つ出来ていた。


「パーティ毎で分ける事にした。同じくらいの価値にしたつもりだ。好きな方を選べ。それをお前達で相談して分けてくれ」

「わかりました」

「ぐふ」

「わかった」

「ところでベルフィ、カリスの事は聞いていますか?」


 ベルフィの表情が硬くなる。


「あいつ、また何かやったのか?」

「実は……」


 サラはカリスが乱闘を起こして連行された事を伝える。

 

「またなのかいっ!?」


 ローズが呆れ顔で言った。


「悪いが、どちらを選ぶか今決めてくれるか。カリスの奴に宝を見せるとまた分前を寄越せと言い出すかもしれないからな。お前達の分は確実に渡しておきたい。その後で俺がカリスを迎えに行く」

「わかりました。私はリオの好きなほうでいいです」

「ぐふ。私もだ」

「そうなんだ」


 リオは深く考えていなように片方を指差した。


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