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110話 補充 その1

 サラ達は少なくともあと二日はヨシラワンに滞在することになった。

 理由は娼館通い、ではなく、ラビリンスで手に入れた財宝の価値を調べる時間が必要だったからだ。

 流石にヴェインまでヴィヴィに財宝を運ばせるわけにもいかないし、長く持っていればそれだけ盗難の危険もある。

 そのため、ヨシラワンで財宝を各自に分配し、その後は持とうが売ろうが各自の判断に任せることにしたのだ。

 幸い、ヨシラワンには国営カジノがあり、大金を持っていてもそれほど目立つ事はない。



 朝食後。

 早速、ベルフィ、ローズ、ナックの三人は宝の分配作業をすることにした。

 宝は金貨の他に宝石や指輪などの装飾品と僅かだが魔道具もあり、均等に分けるのが難しいのでサラ達も参加するかと聞かれたが、リサヴィの三人はベルフィに分配を一任すると言った。

 ただし、カリスへの分配は約束通りなしにする事をヴィヴィが念を押し、サラも念を押した。

 その際、カリスはヴィヴィの言葉に、

 

「ざけんなっ!棺桶持ち野郎!」


 と報酬をいらないと言った事を有耶無耶にしようと怒鳴って威嚇したが、もちろんヴィヴィに効果があるわけがなく、

 サラが言った際には、


「さらぁ、そんなこというなよぉ。おまえのためにやったんだぞぉ」


 とショタまね?をして同情を誘おうとしたがもちろん効果はなかった。

 ベルフィもカリスの愚行でナンバーズの剣を失った事を許しておらず、「約束は必ず守る」と言った。



 ヴィヴィは昨日、リオとサラが貞操をかけた戦いをしている間に穴だらけになったリムーバルバインダーを魔道具屋へ修理に出しており、それを取りに行くというので、リオとサラもそれに付き合うことにした。

 残るカリスだが、「ストーカーランク一位の座は誰にも渡さん!」とばかりに当然のようにサラの後をついて来た。

 サラ達は途中、昨日のサラとリオの試合を見ていた冒険者の一人と遭遇した。


「おいっあんたっ」

「え?」


 最初、サラは話しかけてきた相手が誰かわからなかった。


「俺だよ!俺!」


 相手は自信満々にそう言うが、サラが言い寄ってきた相手の顔をいちいち覚えているわけがなかった。


「すみませんが人違いでは?」

「何ってんだ!昨日会っただろ!昨日は邪魔されたがやっぱ諦めきれねえ!」


 その言葉でサラは昨日のサラとの試合を見ていた者達の一人だと察する。

 サラは不機嫌な事を隠しもせずに言った。


「意味がわかりません。急いでいるのでどいてください」

「なっ頼むよ!一発でいいから……」


 サラがかっ、となり、怒鳴ろうとしたが、それよりカリスの方が早かった。


「ざけんなぁ!」

「あん、なんだ……ぐへっ!」


 その男はカリスに殴られてぶっ飛んで行く。

 それで終わりではなく、カリスは更に男に迫り、殴りつける。


「俺の女に手を出そうとはいい度胸じゃねえか!」

「ぐへっ、や、やめ、助けてくれー!!」


 カリスが男を一方的に殴り続ける。


「ぐふ。お前の彼氏、止めなくていいのか?」

「誰がよ」

 

 しかし、サラ達が止めるまでもなかった。

 ちょうど見回りの衛兵がその喧嘩に気づき、カリスを取り押さえる。


「おいっ!やめろ!死んじまうぞ……って、またお前か!」


 どうやら、昨日、カリスを連行した衛兵だったようだ。


「そりゃこっちのセリフだ!また俺の邪魔するのか!?」


 カリスが無謀にも今度は衛兵に殴りかかるが、衛兵は三人だ。

 カリスがBランクといえど相手は三人、そして彼らの腕もそれなりにあるようで、カリスは押さえつけられ後ろ手に縛られる。


「放しやがれ!俺は正当防衛だ!」

「何が正当防衛だ!俺達にまで殴りかかって来やがって!」

「このイカれ冒険者が!」


 衛兵達が口々に怒鳴りつける。


「証人がいる!サラが俺の無実を……って、いねえ!?」


 そう、サラ達はカリスが衛兵に殴りかかるのを見て「あのバカに巻き込まれるのはゴメンだ」とさっさとその場を離れたのだった。


「ほらっ、さっさと歩け!」

「サラ!どこだサラ!?お前の勇者はここだぞ!……さらぁ!」

「気持ち悪い声出すな!何が勇者だ!ホラ吹き野郎が!」


 こうしてまたもやカリスは牢屋に放り込まれたのだった。



「……ぐふ。あの男、すっかり牢屋が似合うようになったな」

「ええ」

「そうなんだ」


 ヴィヴィ達は魔道具屋に到着し、修理が終わったリムーバルバインダーを受け取った。

 外見は穴を埋めて応急処置しただけのように見え、元通りとは言い難いものものだった。

 それだけでなく、


「色が変わってるんじゃない?」


 色盲のリオにハッキリわかるほどの違いだった。

 もとは青であったが修理後のリムーバルバインダーは灰色になっていた。


「おう、魔法コーティングがほとんど剥げてたからな。コーティングをし直したんだ。生憎、カルハンの技術をそっくりそのまま再現するのは無理なんで色が変わったが効果は保証するぜ!」

「そうなんだ」

「……」


 ヴィヴィが無言で修理されたリムーバルバインダーを装備し、動きを確かめる。


「……ぐふ、まあまあだ。色は気に入らないが」


 ヴィヴィがぼそりと呟いた。


「おいおいっ、こっちはお前さんの無理を聞いて徹夜で修理したんだぜ。もうちょっと言い方があるだろうっ?」

「ぐふ。もう少し出来る奴だと思ったが期待はずれだった」


 意地が悪いことには定評のあるヴィヴィである。

 店主が怒るとわかって言いたいことを言った。


「ふざけんなっ!とっとと出て行きやがれっ!!」


 ヴィヴィ達は追い出されるように店を後にした。



「ヴィヴィ、もう少し言い方があるでしょう。私はまだ魔道具を見たかったのですが」


 先ほどの店にはサラが見たこともない形の魔道具がたくさん陳列されていたのだ。

 あとで店主に聞こうと思っていたのにヴィヴィが店主を怒らせたため聞くタイミングを失ったのだ。


「ぐふ。では戻ればいいだろう」

「戻れるわけないでしょ!」

「ぐふ。お前の図々しさはカリスと同等に渡り合えるほどだ。自信を持って行ってこい」

「……なんですって?」

「次はどこ行く?」


 険悪な雰囲気の中、空気を読まない事には定評のあるリオが言った。

 サラは気が削がれてため息をつく。

 

「……あなたは本当にマイペースですね」

「ん?」


 ヴィヴィが次の目的地を告げる。


「ぐふ。武器屋だ。剣と槍を補充する」

「ああ、そうだね。今度はもうちょっと強力なものにしない?」


 ヴィヴィも流石にひと振りで壊れるのは脆すぎると思ったのであろう、


「ぐふ。そうだな。大金が入るから奮発してみるか」


 と言った。



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