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108話 ヴィヴィのアドバイス

「ヴィヴィ、開けて」


 リオがヴィヴィの名を呼ぶとドアがゆっくりと開き、仮面をつけたままのヴィヴィが姿を現した。

 部屋に入ってすぐサラは有言実行とばかりにリオに説教を始めるが内容は支離滅裂だった。


「サラ、僕戻りたいんだけど」

「ダメ、デス!私の説教の方が大事、デス!」


 そこへヴィヴィがすっとサラの背後に回るとその首筋に手刀を食らわせる。

 無防備なサラはあっさりと気絶した。

 リオはその行動に驚くことなく、おとなしくなったサラをベッドに寝かせた。


「じゃあ、僕は戻るけど……今日もそれなんだ?」


 テーブルの上には水の入った瓶といつもの携帯食が置かれていた。 

 リオ達の食事に比べとても質素であった。


「その携帯食がナックの言ってたものかな?」

「ぐふ?」

「魔術士は魔力を高める食事をしてるって」

「ぐふ」


 ヴィヴィは仮面を外し、魔装着も脱いだ。

 その下はサラにさんざん文句を言われたからか、以前と違いはっきり下着とわかるものではなかったが、人前に出るには勇気のいる露出度の高い服装であった。

 いや、このヨシラワンならその服装でも目立つことはないだろう。

 ヴィヴィはテーブルに置いていたスティック状の携帯食を手に取ると半分に割り、片方をリオに渡す。


「え?いいの?」

「うむ」


 ヴィヴィは小さく頷いた。


「ありがとう」


 リオは携帯食を口に入れ、しばらくモグモグする。


「こういう味なんだ……喉が乾くね。これ、おいしいの?」


 リオは味の違いはわかってもそれが美味いか不味いか判断できない。


「うむ。美味くはないな」

「魔力が上がるって聞いたけど本当?」

「うむ。だが食べ続ける必要がある」

「そうなんだ」


 ヴィヴィも残りを口にする。


「僕も食べ続ければ魔力が上がるかな?」

「どうかな。上がったところで魔法を使えなければあまり意味はない」

「そうなんだ」

「魔法を覚えたいのか?」

「うん、だって便利だよね。でも結構お金がかかる、ってナックが言ってた。勝手に弟子をとったら魔術士ギルドを除名されるとも言ってたかな?」

「うむ。そうだな。……魔法なら神官も使えるぞ。神官は考えた事はないのか?」

「僕は神官にはなれないよ」

「神を信じていないのか?」

「存在は信じてるよ。魔法が使えるようになるんだから。でも神に祈っても助けてくれないのを僕は知っているからね」

「……」

「僕の村が金色のガルザヘッサに襲われたときみんな六大神に助けを求めたんだ」


 そこで一旦話を切り、意図的なのか無意識なのか、声を一段低くして続ける。


「でも助けてくれなかった。ジュアス教徒もいっぱいいたのに」

「……」

「神は自分の気に入った者しか救わない。人間と同じなんだ。その力がけた違いなだけでその行動は人間となんら変わりないんだ」


(……ふむ。サラが今の話を聞いたらどう思うだろうか)


「魔法のことだがそれほど気に病む必要もない」

「え?」

「教わらなくとも魔法を使える者もいる」

「そうなんだ」

「うむ。お前ももしかしたら使えるようになるかも知れない。それに今回の報酬で魔術士ギルドへの入会も可能かもしれんぞ」

「そうなんだ……あ、でも、」

「どうした?」

「ナックが魔術士は早く修行を始めないといけないって。魔法に必要な魔力を生成する器官?は早く鍛えないとなくなってしまうって言ってた気がする」

「そういう事は覚えているのだな」

「ん?」

「なんでもない。それは魔力生成器官のことだな。それはあくまでも一般論だ。我々はそう考えていない。実際、私が魔法を学び始めたのは今のお前と大して変わらなかった」


 ヴィヴィのいう“我々”というのがどこの誰を指しているのかヴィヴィは説明しなかったし、リオも聞こうとはしなかった。

 それよりリオは気になることがあった。

 

「あれ?」

「うむ?」

「ヴィヴィは魔術士になれなかったから魔装士になったんじゃなかった?」

「うむ……」


 ヴィヴィは一旦、言葉を切り、サラが熟睡して(気を失って)いるのを確認する。


「……これは秘密なのだが」

「うん」

「私が魔装士をやっているのは……趣味だ」

「そうなんだ」

「うむ。機会があれば私の魔法を見せてやろう」

「うん……あれ?」

「どうした?」

「そういえば僕、ヴィヴィが魔法使うの見たことがあった気がする」

「……いつだ?」

「どっかの宿でサラが体洗ってる時に魔法で部屋のカギ開けなかった?サラがそれっぽいこと言ってた気がする」

「……そうだったか。ともかく私が魔法が使えることは秘密だ」

「わかった。じゃあ、僕戻るけど、ヴィヴィはどうする?」

「私の食事は済んだ。それにサラを放って置くわけにもいくまい」

「そうだね」

「お前はもっと強くならなくてはならない。だからもっと栄養を取って力をつけることを考えろ」

「わかった」

「うむ」



 リオが出て行ったあと、何度かカリスがやって来てドアを叩いてはサラの名を呼ぶ声がした。

 しかし、当のサラは熟睡?しており、ヴィヴィはシカトした。

 ストーカーランキング一位の座は伊達ではないカリスはそれで諦めることはなかった。

 祝いの席が終わり、リオが部屋に入るのを狙ってカリスが侵入を図るが、その行動を読んでいたヴィヴィのリムーバルバインダーに阻止された。

 その後もドアの前で騒ぎ立てるカリスだったがベルフィらによって引っ張られていったのだった。


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