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106話 求める者達

 カラン、と音を立てリオの剣が地面に落ちた。


「負けちゃった。悔しいな」


 言葉とは裏腹にリオは全く悔しそうに見えなかった。

 勝負は紙一重であった。

 実力は拮抗しており、どちらが勝ってもおかしくなかった。

 サラは勝負がついたと同時に冷静さを取り戻し妖しい表情が消える。

 サラは内心ほっ、としながらもそれを表に出さないように気をつけながらリオを見た。


「リオ、約束は守ってもらいますよ」

「わかった」

「ナック、あなたもです。二度とリオを誘わないように!」

「え?二度と?そんな約束はしてないだろ?」

「わかりましたね?」

「わかったわかった。俺からは誘わない」

「……」


 こうしてサラの貞操は守られたのだ。

 だが、話はまだ終わらない。



 三人の元へ勝負を見ていた一人の女冒険者が顔を赤らめながらやってきた。

 そしてサラに熱い視線を送る。

 サラは首を傾げながら女冒険者に尋ねる。


「あの、なにか御用ですか?」

「…………」

「もしもし?」

「す、好きです!抱いてください!」


 サラはなんで私の顔を見ながら言うのかしら、と不思議に思いながらナックを見る。


「ですって、ナック。さ、リオ、帰りますよ」

「わかった」


 と、その女剣士がサラの腕を掴んだ。


「なっ?ちょっと……」

「あなたに抱いて欲しいんです!」

「は、はあ?」

「あなたの戦ってる姿、すごかったです!思わずイキそうになりました!」


 公衆の面前で恥ずかしがることなく言い切る女冒険者の行動力にサラの方が赤面してしまう。


「あの妖しい笑みが忘れられません!」

「あ、あの妖しい笑みって……それはともかく私は女ですが」

「望むところです!」

「ええっ?!ちょ、何が望むところなんですかっ!?」


 そこへ他の冒険者が次々とやってくる。


「おい、待てよ!何抜け駆けしてんだよっ!俺と頼む!一晩だけでいいから!」

「な、なにを……」

「ちょっと待てよ、俺と!な?金ならいくらでも出すからよっ!」


 この言葉には流石にサラはカチンときた。


「私はそういう仕事はしてません!」

「「「「嘘つけ!」」」」


 サラの言葉はその場の全員に揃って否定される。


「ええっ!?」

「あの表情、あれは素人の顔じゃねえ!絶対プロだろ!」

「そうやって金額釣り上げる気だ!」

「遊郭で働いてんだろ!どこの店だよ!?教えてくれよ!」


 サラは頭が混乱した。

 冒険者達が何を言っているのか全く理解できない。

 いや、したくない。

 サラは助けをリオに、は無駄なのでナックに求める。

 ナックは仕方ないな、という表情で詰め寄る冒険者達とサラの間に割って入る。


(ここにカリスがいなくてよかったぜ。あのサラちゃん見たら試合中に乱入して襲いかかってかもしれない……返り討ちにあっただろうけど)


「はいはい、ちょっと離れてね」

「な、なんだよお前はっ!?」

「邪魔すんな!俺が一番だ!」

「あー、悪いが彼女は俺のパーティ、ウィンドのメンバーになるんだ」

「ウィンドだと!?」


 ウィンドはこれまで数々の実績を上げており、名の知れたパーディである。

 今のカリスを見るととてもそうは思えないが。

 詰め寄ってきた冒険者達はBランクに満たない者ばかりだったのだろう、効果的面であった。

 サラに詰め寄っていた冒険者達が離れる。

 ナックは満足げな表情を浮かべながら言った。


「そういうことだから、俺達のメンバーに手出すんじゃないぜ。さ、帰ろうぜ」

「は、はい」

「わかった」

「サラちゃん、フード」

「は、はい、すみません」


 サラはナックに指摘されて慌ててフードを深く被るが、深く被りすぎて前がよく見えないので前を歩くリオの服を掴んだ。

 その様子を見ながらナックが楽しそうに言った。


「いやー、色々面白いもん見せてもらったなぁ」

「……こっちは全然面白くありません」

「まあまあ、いい経験だと思って。な」

「……」

「で、次の勝負はいつにする?」

「もう二度としません!」

「またまたぁ、本当は負けたかったんじゃないのか……って、冗談から睨むなって」

「……ったく」


 サラはホッとしながら言った。

 

「しかし、今初めてナックがいてよかったと思いました」

「サラちゃん、ひでえ!」


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