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102話 今後の方針

 ベルフィとナックはバーにいたローズと合流した。

 ローズはカリスの事を聞き、呆れた顔をしてグラスに注いだ酒をぐっ、とあおる。

 

「あんたらもどう?カルハンの酒、結構いけるよ」

「じゃあ、俺達も飲むか」

「ああ、だが飲みすぎるなよ」

「わかってるって」


 ベルフィとナックはカルハンで製造された酒を注文し、飲みながら今後の事について話し合う。


「ベルフィ、カリスの事だがどうするんだ?」

「……」

「正直言って今のカリスは酷すぎる。命令は平気で無視する、サラちゃんのストーカーになって迷惑をかける、真面目に戦わない、ナンバーズを無くし、ヴィヴィまで敵に回し、そして今回は騒ぎを起こして牢屋行き。完全なトラブルメーカーだ。このままじゃ遅かれ早かれ、またサラちゃん達と衝突するぞ」

「……ああ、わかってる。俺も色々考えているところだ」

「ちょっと待ちなよっ。そりゃカリスをパーティから追放する気かいっ?」

「その選択肢もある」

「ちょっとベルフィ!確かに今のカリスはどうしようもないよっ。それは認めるけどさっ……」


 ベルフィはローズに首を横に振る。


「俺はどうしても金色のガルザヘッサを倒したい。そのためにサラとヴィヴィは必要だ。カリスも必要だと思っていたがあの調子ではな……」

「ヴィヴィはわかるとしてさっ、あのショタ神官必要かいっ?治療ならナックもできるだろっ?あいつが出ていけばカリスもまともになるんじゃないかいっ?」

「いや、ローズ、サラちゃんは必要だ」

「ナック、ちょっとショタ神官の顔がいいからってねっ」

「そんなんじゃない。サラちゃんは“鉄拳制裁のサラ”だ。六英雄のナナルの弟子のな」

「本人否定してるじゃないかっ。確かにしょっちゅうリオを叩いてるから“鉄拳”て言葉はあのショタ神官に似合ってるけどさっ」


「いや、お前も結構リオを叩いてるから“鉄拳”似合うぞ」とベルフィとナックは思ったが口には出さない。


「俺もナックと同意見だ。サラが“鉄拳制裁のサラ”でなくともサラの力は必要だ」

「ベルフィ、あんたもまさか……」

「勘違いするな」


 ベルフィは少し悩んだが、魔族を倒した時の事を話す事にした。


「これは内緒なんだが、」

「なんだいいきなりっ?」

「ナックは気を悪くするかもしれないが、」

「どうしたんだ?らしくないぞ」

「……そうだな。ナック、ラビリンスの魔族に止めを刺したのはお前じゃない。サラだ」

「……」

「ベルフィ、何言ってるんだいっ!?」

「俺は見たんだ。サラが魔族に魔法を放って止めを刺すところを」

「そんなバカな……」

「やっぱりかーっ」


 ナックが大袈裟に天を仰ぐ。


「ナック!?あんた知ってたのかいっ!?」

「いや、知ってたというか、正直手応えがなかったんだ。だからベルフィの話を聞いて納得だ」

「そんなっ……」


 ローズはサラに馬鹿にした事を思いだし、恥ずかしくなる。


「な、なんであのショタ神官はその事黙ってんだいっ!?」

「それはわからん」

「ベルフィは聞いてないのかいっ?」

「ああ。手柄を譲ってまで本人が知られたくないと思ってるようだったからな」

「……そういや、あの時ベルフィ、サラに確認してたもんな。ちょっと違和感があって覚えてたぜ」

「ともかくだ。あの二人は冒険者ランクは低いが実際はBランク、いや、下手したらそれ以上の力があると俺は見ている」

「そうだな。俺もそう思う」


 ローズは反論しなかったものの、ふんっ、と鼻を鳴らす。



「俺としても正直なところカリスを追放したくはない」

「俺もだぜ。だがどうやって更正させる?」


 ローズが「あっ」と叫んだ。


「そういやさっ、ショタ神官の奴がカリスは“勇者願望症”かもしれないって言ってたねっ」

「勇者願望症?」

「なんでも妄想癖の一種?だったかな、ともかくっ自分が勇者だと思い込んで現実と妄想の区別がつかなくなるんだとさっ」

「……確かにそんな感じだな」

「でもよっ、カリスの場合、勇者ってのはサラちゃんと一緒にいたい理由として言ってる気がするんだよな」

「違ったら知らないけどさっ、もし勇者願望症だった場合、自然に治る時もあるけど、治らない場合は冒険者を引退して静かに暮らしたりする必要があるんだとさっ」

「「「……」」」



 ナックがベルフィの考えを確認する。


「ベルフィとしてはサラちゃんとヴィヴィを少なくとも金色のガルザヘッサを討つまでは引き留めておきたいんだよな?」

「ああ」

「カリスを追放せずに、なんだよねっ?」


 ローズの念押しにベルフィは頷く。


「そうだ。だが、今のままだと正直厳しいと思っている」

「そうでもないぜ」

「なに?」

「理由はともかく、二人ともリオをリーダーとして認めてるようだからさ、リオさえ味方につけておけば大丈夫って事だ」

「……確かにな」

「……」


 ベルフィとローズはヴィヴィの怒りがリオの一言で収まったのを思い出す。

 更にローズはラビリンスの外でベルフィ達を待っていた時に、サラが出て行く時はリオも一緒だと言っていた事を思い出す。


「もちろん、カリスがこれ以上馬鹿をしないってのが絶対条件だぜ。サラちゃん達だって限界はある、ってかもう爆発寸前だからな」


 何故それがカリスはわからないのか、と三人はため息をつく。


「ま、牢屋に入ってくれてよかったかもな。お互い離れて心も落ち着くだろう」

「だな」


 ナックの言葉にベルフィが相槌を打つ。


「おいおい、他人事のように言ってるがベルフィ、お前もだぞ」

「……」

「ナンバーズをあんな形で無くしてムカついてるのはわかる。だけどよ、それはみんな一緒だからな」

「わかっている」


 空気が重くなってきたのでローズが話題を戻す。


「でもさっ、あのリオ任せかいっ?あのリオだよっ?何も考えてない、次に何するか全く予想できないリオだよっ?あれ任せって危険じゃないかいっ?」

「大丈夫だって」


 ナックが自身ありげに答える。


「それはお前に任せていいと言うことか?」

「おうっ。俺はリオと仲がいいからな。これはカリスの妄想とは違うぞ」

「まあ、確かにあんたはリオにくだらない事教えてはショタ神官によく殴られてるからね」

「いや、サラちゃんに殴られるのは関係ないだろ」

「わかった。お前に任せる。実際、今までもお前に助けられてるからな」

「ナック、あんたさっ、もう副リーダーやっちゃいなよっ」

「嫌だぜっ、面倒くさい。それにカリスと揉めるぞ。あいつ副リーダーにすごい執着してるし」

「なんにもやってないけどねっ」

「でだ、ベルフィ、その代わりといっちゃなんだがお願いがあるんだ」

「お前がお願いだと?気持ち悪いな」

「いやいや全然大した事じゃない。お願いというか必然だから」

「……」


 ナックの必然だという話を聞いてベルフィはなんともいえない表情をし、ローズが心底軽蔑した、という表情をナックに向けた。

 ただ、ナックだけが幸せそうな顔をしていた。



 目的の街道には思ったより早く着いた。

 船を降りる際に船長が別れの挨拶にやってきた。


「ベルフィ様、ナック様、ローズ様、リオ様、サラ様、ヴィヴィ様。ご利用ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」

「ああ、助かった。また縁があればよろしく頼む」


 ウィンドとリサヴィがヘイダイン三世号を見送ったあとでカリスが笑いながら言った。


「おいおい、あの船長も大した事ねーな。俺の名前を忘れてるぜっ」

「「「「「「……」」」」」」


 カリス、とリオを除くみんなが船長はカリスを早く降ろしたくて船の速度を速めたな、と思った。

 ナックが呆れた顔をしながら皆を代表して言う。


「いやいや、ワザとに決まってるだろ」

「なにっ!?」

「『なにっ!?』じゃないよっ!あんだけ騒ぎを起こして牢屋入れられるようなあんたにまた来て欲しいわけないだろっ!」

「な……」

「パーティでブラックリスト入りにならなかったようだからよかったぜ」


 ナックの言葉にベルフィとローズが頷くが、カリスは納得いかなかった。


「サラっ、お前は俺の無実を信じてくれるよなっ?」

「意味がわかりません。さあ、ベルフィ、先を急ぎましょう」

「ああ」

「さらぁ!」

「気持ち悪いって言ってんだろっ!」


 ローズがカリスを怒鳴った。


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