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101話 特別個室

 船長が去ると小型サンドシップで迎えに来た船員が船の説明をはじめる。


「船内は立ち入り禁止と書かれている場所以外は自由にして頂いて構いません。お食事ですがお酒以外は運賃に含まれています」

「食べ放題って事か」

「はい」

「あたい達の部屋はどこなんだいっ?」

「皆様は三等客室の空いておりますベッドがございましたらご自由にお使いください。場所はそちらの階段を二階降りて頂ければすぐにわかると思います」

「三等客室?」

「はい、この船には特等客室、一等客室、二等客室、そして三等客室とございまして、特等、一等までが個室、二等客室が二人部屋、そして三等客室が三十人部屋となっております」

「ちょっと待ちなよっ。あたいらは小金貨一枚も払ってんだよ!?それでなんでそんな雑魚部屋なんだいっ!?」

「申し訳ございません。お陰様で他の客室は満席でして」


 船員がぺこりと頭を下げる。


「あんたっ……」


 ベルフィがローズを手で制する。

 

「俺からもいいか」

「はい、なんでしょうか?」

「俺達が払った金額は三等客室の通常料金なのか?」

「いえ、通常はもう少しお安いですが、皆様は救難者扱いとさせて頂いておりますのでその分上乗せてさせていただいております」

「わかった」

「ベルフィ!」

「我慢しろ。砂漠を歩くよりはマシだ」


 ローズが舌打ちしたもののそれ以上船員に食ってかかることはなかった。

 サラが控えめに手を上げる。

 

「あの、私からもいいですか?」

「はい、なんでしょうか?」

「先ほど、ベッドが空いていたらといいましたが、空いていない場合があるのですか?」


 船員が営業スマイルを崩さず頷く。


「はい、お陰様でこのヘイダイン三世号のクルージングは人気がございまして三等客室も満席になるのです」

「ちょっと待った。じゃあ、空いてないんじゃないのか?」

「そうですね。ただ、旅で意気投合して個室のお客様と一緒に過ごされる方もたまにいらっしゃいますので」

「……そうですか。ありがとうございます」

「いえ、他に何かございますか?」

「私は大丈夫です」


 他に質問はなく、船員は挨拶をして去っていった。



 ベルフィが皆にこれからの事を話す。

 

「各自自由にしていい。だが、カリス、お前はリサヴィと別行動を取れ。船内にいる間、接触は禁止だ」

「ちょっと待てベルフィ!俺はともかくサラが納得しな……」

「待たん。これは命令だ」 

「ベルフィ、私達に異論ありません。ありがとうございます」

「ぐふ」

「さらぁ……」

「気持ち悪いねっ。あたいは先行くよっ」


 ローズが去り、サラがリオとヴィヴィに声をかける。


「では私達も行きましょう」

「わかった」

「ぐふ」

「おうっ」


 カリスがリオを突き飛ばしてサラの前に来る。


「「「……」」」


 サラがカリスを睨むとカリスがキメ顔で応えた。

 

「……カリス、あなたは鳥頭ですか?いえ、鳥頭以下ですね」

「おいおい、ひでえこと言うな」


 カリスが伸ばしてきた手をサラが乱暴に弾く。

 

「な……」

「ベルフィ、ナック。カリスをしっかり見張っていてください」

「ああ」

「しゃーないなぁ」

「お、おいっ待てよっサラ!自分に正直になれよっ!なっ?」

「私は自分の気持ちに正直です。では」

「さらぁ!」


 ベルフィとナックに抑えられて暴れるカリスを後にサラ達はその場を早足に去る。

 

 

 サラ達は三等船室をちょっと覗いたが、空きベッドはなさそうだったし、サンドシップに次いつ乗れるかわからないので船内の散策をすることにした。

 とはいえ、一番の理由はカリスに出会う可能性が高いことは言うまでもない。

 しばらくすると、


「サラァ!どこだー!?俺はここにいるぞっー!」


 という叫び声が遠くから聞こえてきた。

 もちろん、サラが返事をすることはなく、サラ達はその声と反対の方向へ移動する。

 その声はしばらく断続的に続いたが、ある時を境にふっと途絶えた。


「もしかして声から遠ざかるように移動してるのがバレたのかしら?」

「ぐふ。奴にそれほどの知能があるとは思えん」

「それもそうね」


 二人とも散々な言いようである。 

 その後にリオが「そうなんだ」と呟いた。



 サラはいつカリスが現れるかと不安を感じながらも興味津々に船内を回っていると前方からベルフィとナックが歩いて来るのが見えた。

 彼らもサラ達に気づいたようでナックがどこか疲れたような顔で手を上げて合図した。


「カリスはどうしたんですか?」

「あ、ああ……カリスね」


 ナックはどこかぎこちない笑顔をする。


「ぐふ。見失ったか?」

「いや、もう大丈夫だ」


 ベルフィがナックと同じく疲れた表情で答える。

 

「大丈夫って、それはどう言う意味ですか?」

「カリスの奴は個室にいる」

「え?個室ですか?でも満席だと……」

「いや、空いてたんだよ。鉄格子付きの個室が」


 サラとヴィヴィはナックの補足で全て理解した。

 だが、リオは理解できなかったようで「ん?」と首を傾げる。


「あいつが騒ぎまくってたのは知ってるか?」

「うん、サラの名を呼んでたね」

「ああ。それで『うるさい』って客からクレームが来てな。でだ、カリスの奴、注意した船員を殴りやがったんだ。で、魔装士がやって来て独房へ直行さ。いやあ、あの重装魔装士?だったか、言うだけあってすごい力だな。カリスを簡単に押さえ込みやがった」

「ぐふ」

「思ったより厳しい処分の気もしますが、船員はそれほど酷い怪我を?」

「怪我はまあそこそこな。それ以上に騒いだ場所が悪かった。あのバカ、俺達が侵入禁止の特等客室の通路無断で入って騒ぎやがったんだ」

「なるほど。処置なし、ですね」

「ぐふぐふ。私は処刑されてもかまわんのだがな」

「おいおい……」

「まあ、そういうことで目的地に着くまで牢から出さないそうだ。だから安心して船を見学してくれ」

「わかりました。ありがとうございます」


 リサヴィはローズを探しに行くというベルフィ達と別れた。


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