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09 変化とチャンス
何度目かの化け物との邂逅。
おそいかかったゴンタの爪が、ぬいぐるみの傷を引き裂いた。
はらわたがこぼれていく。
化け物は激高して、闇を写すばかりだった窓の外には、大嵐の景色があった。
それはチャンスだった。
何人も犠牲にしてきた洋館の、目に見えた変化は、機会がやってきた事を告げる。
「ぐるるるる!」
「こっちだ、化け物!」
少年は誘導する。
化け物をとある部屋へと。
そこは化け物の苦手な部屋。
化け物が人間だった頃に、叱られていたお仕置の部屋。
たくさんの飼い犬に囲まれて、大人達にお説教された部屋。
しかし、ある日事故が起きてとある少女が死亡し、地元の新聞にその出来事がのったのだ。
それ以来、洋館は呪いの洋館として機能する事になった。
少年は、その部屋に逃げ込んで、化け物を待った。
「さぁ、ここに入ってこれるかな」
猛然と追いかけていた化け物は、部屋の前で躊躇するばかり。
そこから先へは進まない。
そこに少年は挑発する。
「ぬいぐるみを壊した犯人がここにいるぞ」
化け物には意思がある。
だからそれも効くはずだと考えて。