表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【Web版】死ぬ運命にある悪役令嬢の兄に転生したので、妹を育てて未来を変えたいと思います~世界最強はオレだけど、世界最カワは妹に違いない~  作者: 泉里侑希
第一部 Main stage

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/1204

Chapter3-1 婚約者(3)

 翌日。ノマの協力を加味した領地運営計画を打ち出したら、案の定、部下たちに正気を疑われた。


 仕方ないので、ノマを紹介することにした。膨大な魔力が必要なのでオレくらいしか実現できないけど、精霊も実体化することが可能なんだ。


 農業担当と流通担当、財務担当辺りが悪い笑顔で相談し合っていたから、おそらく上手く運営してくれるはず。当分、ノマは多忙を極めるだろう。ご愁傷様だが、契約だから諦めてほしい。


 ついでに、カロンやオルカにも紹介した。こっちは「かわいい」を連呼してノマを揉みくちゃにしていた。少しうらやましかった。


 閑話休題。


 一通り仕事が片づく。午後からは、保護している少女ニナの特訓に付き合おうとしたところ、外務担当の重役であるダニエルが執務室へ入ってきた。何やら難しい表情をしているため、厄介な案件が舞い込んだのだと察する。


 諸々の挨拶より始めようとした彼を止め、手早く用件を話させる。


「王宮より手紙が届きました」


 ダニエルの一言で、執務室内の空気が一変する。ピリッとした緊張感を孕んだものだった。


 無理もない。カーティスの一件は、部下一同とも情報共有している。彼らの王宮への不信感は尋常ではないんだ。手紙一つで、これほどまで警戒心をあらわにするほどに。


 それだけ、カロンは皆より愛されている証左なんだけど、今は置いておこう。話を進めるのが先決だ。


 オレはダニエルを促し、送られてきた手紙を受け取る。そして、シオンより手渡されたレターナイフを使って封を切った。


 ぎっしり文字が敷き詰められていたが、貴族向けの手紙は飾りが多いため、サラッと目を通して要点のみを確認する。


 五分後。部下たちが固唾を吞む中、オレは小さく息を吐いた。それから、端的に王宮よりの要求を語る。


「第二王子の婚約者に、カロンを推したいそうだ」


「「「「「「「ッ!?」」」」」」」


 全員が息を呑むのが気配で分かった。おおよその内心は『厚顔無恥にも程がある』といった感じか。まったく予想できていなかった者がいないのは良かった。


 そう。王族の婚約者にカロンが推挙されるだろうことは、前々から推測できていた。彼女は『陽光の聖女』として名声の高い光魔法師。カーティスの件もあるように、国としては喉から手が出るくらい欲しい人材なんだ。人材確保における一番確実な手段を、王宮側が講じてこないはずはない。【人形】で操っているカーティスに「問題なし」と報告させているのも、今回の流れを助長したんだろう。


 九令式より一年も前に通達されるところにも、不自然さはあまりない。王族の伴侶になるんだ、事前の準備期間程度は用意されなくては困る。まぁ、一年は少ない方だけどさ。嫌がらせのつもりか?


 しかし、ついに来てしまったか……。


 オレは前述した要素とは別に、今回の婚約の件を予想していた。


 言うまでもなく、ゲーム知識。ゲームでも、カロンは第二王子と婚約していたんだ。第二王子が攻略対象であることは無論、どのルートでもカロンは死んでしまうため、二人が結ばれる可能性は皆無だけどな。


 第二王子のことを思い出したら、イラ立ってきた。第二王子は、初対面時よりカロンを毛嫌いするんだよ。色々と尽くそうとするカロンを無視し、まるで婚約者として扱わない。『金髪だから』なんて意味不明な理由で。


 いや、金髪が嫌いなのは良いんだ。彼の身内を考慮すれば、嫌いになる気持ちは理解できる。それなのに意味不明と言い表すのは、主人公(聖女)も金髪だからだ。


 本ッ当に意味が分からない。金髪が嫌いだとほざいて(・・・・)おいて、どうして聖女とは結ばれるんだ? しかも、専用ルートに入ってからならまだしも、共通ルートの時点で聖女へ懸想しているし。


 第一印象の悪さを改善し、仲良くなっていく。それが恋愛ゲームの一つのスパイスなのは理解している。だが、あまりにもゲームのカロンが不憫でならなかった。正直、攻略対象の中で一番嫌いな奴だ。


 嫌いな理由は、カロン関連だけではない。


 第二王子は、好きなものにはトコトン愛情を注ぐが、嫌いなものは徹底して冷遇するという性格をしている。


 『身内への好意は際限なく、外敵へは容赦しない』と聞けば、多少は聞こえが良いかもしれない。昨今の創作の主人公は、そういう性格のキャラをよく見るから。


 だが、王族としては不適格としか言いようがなかった。嫌いな相手に対しても、笑顔で対応できなければ、国なんて治められるはずがない。清濁併せ吞めない彼に、王の器はないんだ。


 まぁ、第二王子ルートでは聖王の座に就くんですけどね。彼のルート、聖女が支えながら成長していく話だし。


 ハァ。散々愚痴を溢してしまったが、今は王宮からの要求への対応を考えなくてはいけない。


 現状のフォラナーダでは、王宮からの要求を突っ返すのは難度が高い。ましてや、王族との婚約を断るともなれば、周辺貴族よりのバッシングも必至。普通なら受け入れるしか道はないが、どう対処するべきか。


 ――一旦、状況を整理しよう。


 オレの今までの行動より、聖王国において王宮の権力が結構強いことは、察しがついていると思う。この国は宗教国家の側面もあるため、教会とは組織を別にしているとはいえ、『信心深い者は王の発言に従うもの』という固着観念が染みついていた。


 無論、何でも融通が利くほどの強権ではない。平民はまだしも、支配者階層たる貴族たちは確かな自立心を持っている。


 だが、その権力を目当てに聖王の派閥に属する貴族は多く、あからさまに反抗してしまうと、その派閥の貴族らまで敵に回してしまうんだ。


 多くの貴族から刺客を送られたり、政略的な嫌がらせを受けたりするのは、いくらオレが強かろうと手が足りなくなる。ゆえにオレは、王宮へ明確な敵対行動を取らないよう気をつけていた。今の段階では(・・・・・・)勝ち切れないから。


 では、聖王家を滅ぼしてしまえば良いって?


 正直、それも考えた。オレが圧倒的武力を示し、恐怖によって周囲を牽制するのは、一つの手段だろう。


 しかし、それは実行したくなかった。


 オレの目的はカロンに迫る死の運命を覆すことである――が、単純に死ななければ良いとは考えていなかった。たとえ生き延びても、彼女が笑えない未来しか残っていないのは、あまりにも悲しすぎると思うんだ。


 恐怖政治を敷いた場合、その先に待っているのは潜在的な敵との探り合い。きっと、カロンは楽しい生活を送れない。そんな結末は、オレの望むところではなかった。


 だからこそ、今は耐える。本末転倒にならないように注意しながらも、目先ではなく将来を見据えて行動するんだ。


 オレは、この場に居合わせている各部門の者へ視線を向けながら問う。


例の進捗(・・・・)はどうだ?」


「私の方は問題ありません」


「こちらも大丈夫です」


「私どもは、もう少し時間がかかりそうです。ノマ殿の助力により、大幅に計画は進みますが……」


「同じく」


「私の担当も同じですね」


「……こちらは問題ありません」


「ふむ」


 外務と内務、諜報は準備を終えていて、農業や財務、流通がノマ次第か。騎士団や魔法師団はそろそろ最低ラインに達するから、真面目にノマには頑張ってもらわないといけないな。


「どれくらい時間を要する?」


 オレの更なる質問に、準備が整っていないと答えた三人は熟考する。それぞれで話し合った末、財務担当が口を開いた。


「今年度末までは、時間をいただきたいです」


「ギリギリだな」


 王宮側は、カロンの九令式に婚約を公表したいと意見している。カロンの誕生日は三月、つまり今年度末だった。


 ギリギリ――否、事前に情報を掴む貴族もいるだろうから、些か遅いくらいだ。


 とはいえ、文句は言えない。彼らも最大限努力して、この見積もりなんだろう。であれば、年度末まで時間がかかっても問題ないように立ち回れば良い。


「できる限り急いで事を進めろ。一段落済んだら、いくらでも休暇は取っていい」


「「「承知いたしました!」」」


 気合十分といった様子で返事をする三人。彼らなら大丈夫だと信じよう。


 さて、方針は決まった。


「第二王子との婚約は受け入れる。しかし、唯々諾々と従うつもりはない。皆、年度末に向けて、各々の準備を進めろ。来年の三月に、フォラナーダは動き出す」


「「「「「「「「「「はい!!!!!!」」」」」」」」」」


 部下たちは気勢を上げる。そして、これまで以上のハイペースで仕事を(さば)いていく。


「今年も忙しくなりそうだ」


 テキパキと働く彼らを眺めながら、オレは一人呟いた。






 その後、第二王子との婚約の件をカロンに話したところ、彼女は渋々ながら受け入れてくれた。「お兄さまに、何かお考えがあるのでしょう?」と言われたので、こちらの思惑は筒抜けだった模様。


 さすが、オレと比肩するブラコンの妹。兄のことは何でもお見通しらしい。

 

次回の投稿は明日の12:00頃の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
暗殺したり人形にしたりしようとした奴らと婚約て正気か?
別に恐怖政治でなくても、第二王子を暗殺すればこの話はなかったことになるし、それ以外にも王宮の重役を何人かちょちょっと暗殺すれば混乱でそれどころじゃなくなるでしょ。今の主人公なら一切証拠を残さずに暗殺出…
分離独立を視野にいれて動くのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ