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【Web版】死ぬ運命にある悪役令嬢の兄に転生したので、妹を育てて未来を変えたいと思います~世界最強はオレだけど、世界最カワは妹に違いない~  作者: 泉里侑希
第一部 Main stage

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Chapter3-1 婚約者(1)

本日よりChapter3開始です。よろしくお願いします。

「「「「「「「「「「誕生日おめでとう(ございます)!!!」」」」」」」」」」


 フォラナーダ城にある社交用のホールにて、明るい声が響き渡る。


 ホール内にはオレ、ゼクスを含む三兄妹と多くの部下が揃っていた。皆、飲み物を片手に、テーブルに広げられた料理を摘まんでいる。


 三月某日。今日は我が最愛の妹であるカロラインの誕生日だった。こうやって身内間で立食パーティーを開くのは毎年の恒例行事で、全員が無礼講で楽しんでいる。若干、年度末のお疲れさま会の要素も含まれている気がする。


 参加者が身内だけとはいえ、パーティーである以上は多少着飾る。特に、主役のカロンは気合が入っていた。赤を基調としたミニ丈のバルーンドレスは一見派手だが、彼女の明るい気性を良く表しており、実にしっくりくるデザインだ。いつもは流している癖のある金髪も、今日はポニーテールにまとめていて、白いうなじがまぶしい(・・・・)。普段から可愛い妹だけど、本日は十倍増しで愛らしかった。


「ドレス、よく似合ってるよ。いつもより一段と可愛い」


 オレが賛辞の言葉を贈ると、カロンは嬉しそうに紅い瞳を薄めて頬笑んだ。この笑顔だけで、向こう一年は生きていける。


「お兄さまも、とてもお似合いです。カッコイイです!」


「そうか?」


 オレの着用している服は、カジュアル寄りのパーティースーツだった。濃いネイビーを主体としている。白髪も軽く固めているけど、申しわけ程度だから割愛する。


 確かに、素晴らしいデザインの服だけど、まだまだ子どものオレでは着こなせていない。カロンが言うほどカッコ良くはないと思う。


 そう返したんだが、カロンは「カッコイイです!」と繰り返すだけだった。まぁ、彼女はブラコンだから、何でも良い風に映るのかもしれない。


 自分のことを棚上げして苦笑していると、カロンに賛同する者が現れた。


「カロラインさまの仰る通り、カッコイイと思います。思わず溜息が漏れてしまうほどに」


「さすがに言いすぎだ、シオン」


 彼女はオレの秘書みたいな立ち位置にいるメイドで、元王宮のスパイ。頻繁にドジを踏む欠点はあるものの、高水準の能力と努力を惜しまない精神を(あわ)せ持った優秀な人材だ。


 いつもはメイド服なんだが、今日ばかりはオシャレをしている。ライトグリーンのエンパイアドレスに身を包み、淡い青紫の髪もハーフアップに仕上げている。普段は大人しめの恰好をしている彼女も、こうして着飾れば、目を惹かれるほどに美しさが際立っていた。


 色々あって、つい二ヵ月前に愛の告白を受けているため、彼女はカロンに匹敵する色眼鏡の持ち主である。オレの姿への評価は当てにならなかった。


 というか、『溜息が漏れてしまうほど』は、いくら何でも過剰評価がすぎる。表情を窺う限り、本気の感想なのが性質悪い。


「シオンも似合ってるよ。大人っぽくてステキだ」


「そ、そうですか? ありがとうございます。ゼクスさまに褒めていただけて、天にも昇る気分です」


「大袈裟な……」


 なんか、恋してからポンコツ化していないか? 仕事にまで私情を持ち込んだことがないから無視していたけど、見ているコッチの方が恥ずかしくなるな。


 照れまくるシオンに呆れていると、さらに別の人物から声がかかる。


「ゼクス(にぃ)、ボクも褒めて!」


 直截な申し出をしてきたのは、カロンに並ぶ我が愛しの義弟のオルカだ。狐の獣人で、茶の獣耳と尻尾がとても可愛らしい。


 可愛らしいのは獣人要素だけではなく、容姿も同様。彼は少女と見紛うほどの見た目をしていて、オレもたまに混乱することがある。だって、仕草まで“女の子女の子”しているんだもの。やばい、言語が乱れた。


 さぞ可愛い感じになっているんだろうな。そんな期待をしながら、彼の方へ振り返る。そして、オレは瞠目(どうもく)した。


「は? なんでドレス?」


 そう。オルカはドレスを着ていた。どこからどう見ても、彼が着用しているのはクリームイエローのAラインドレス。見事な女装だった。


「に、似合ってないかな?」


 オレの反応に、オルカは不安そうに尋ねてくる。涙目の上目遣いは反則すぎる。


「そ、そんなことない。とっても似合ってるし、可愛いぞ。というか、似合いすぎてるのが問題なんだけども」


 普段から女の子と見間違えるレベルの彼がドレスを着飾ったら、一体どうなってしまうのか。答えは超絶美少女が爆誕するのである。


 これはヤバイ。男と分かっていても、引き寄せられる魔性が存在する。新たな扉を開きそうな気分だ。


「むむっ。オルカに敗北するとは、一生の不覚です」


「思わぬ強敵が現れましたッ!?」


「誰がドレスを用意したんだ?」


 外野が何やら騒がしいが、オレは丸っとスルーしてオルカへ問うた。


 彼はキョトンとしながら答える。


「セワスチャンさんだよ」


「セワスチャーン!」


 慟哭した。まさか、部下の中でも良心の部類に入る彼が犯人だったとは。オレに救いはないと申すか。


 その後、セワスチャンに問い質したところ、オルカが男であることを失念していただけらしい。補足すると、オレとカロン以外は全員失念していた事実。


 オルカ、恐ろしい子!








 パーティーはつつがなく終了し、オレは自室へ戻った。それから、就寝しようとベッドに寝転がる。


 だが、程なくして身を起こす。一件の念話が入ったんだ。連絡先の相手は、はたして――


「もう大丈夫なのか?」


「ご迷惑おかけしたですが、もう問題ないです」


 【位相隠し(カバーテクスチャ)】を開くと、そこより一人の人物が現れた。


 妙な喋り方をするのは、土精霊のノマだった。茶色の髪と瞳、凛々しい顔立ち、貴公子を彷彿とさせる服装。以前と何ら変わらない。


 かれこれ半年。発狂して以来、ずっとオレの【位相隠し(カバーテクスチャ)】に引きこもっていた彼女だったが、ついさっき外に出たいという申し出があったんだ。


 若干の心配を胸に対面したんだけど、今のところは冷静に振舞えている。些か口調が怪しいのは気になるが、意思疎通は滞りなく行えていた。引きこもり中は、まったく会話にならなかったからな……。


 ノマは土下座する勢いで頭を下げる。


「先日は“魔神”さまに対して、とんだ無礼を働いてしまい、申しわけないです! この通り心より反省しているので、命だけは勘弁してほしいですッ! どうかご容赦をばッ」


「待て待て待て」


 オレは焦った。いきなり何を言い出すんだ、この精霊は。突然の謝罪にも驚いたけど、聞き捨てならない敬称でオレを呼んでいるし、物騒なことを言い始めているし。どこからツッコミを入れたものやら。


 思いもよらぬ事態に、軽い頭痛を覚える。


 だが、戸惑っていたままでは問題は解決しない。心を努めて落ち着かせ、オレは順序良くノマに語りかけた。


「まず指摘しておきたいのは、オレにノマを害するつもりは全然ないってことだ」


「ご助命してくれるのですか!?」


「当然だろう。最初っから、キミを殺す気なんてない。だから、そんな目を輝かせないでくれ」


 まったく、どういう思考に陥ったら、オレがノマを処すなんて結論に至るんだか。十中八九、“魔神”とやらが関わっているとは思うけど。


 どこかテンションのおかしい精霊に溜息を吐きつつ、話を続ける。


「もう一つ言っておきたいのは、オレが魔神じゃないってこと」


 ノマは目を丸くして首を傾げた。


「魔神さまではないのか、です? 精霊王さまたちよりも、圧倒的に膨大な魔力量と想像を絶する魔力密度を持っているのに、です?」


「オレは人間だよ」


 ただの、という形容詞をつけるには特殊すぎる境遇だが、少なくとも種族は人間で間違いない。


「そもそも、魔神って何さ?」


 魔王なら知っているけど、上位互換らしきそれ(・・)は耳にしたことがなかった。もしかして、公には語られなかった裏設定とか? そんなものはないと思いたいんだけど、原作ゲームの拡張性の高さを考慮すると、断言はできかねるんだよなぁ。


「精霊の間で伝承されている存在だ、です。この世の魔のすべてを掌握し、手足のように扱う存在だと恐れられているです」


「魔のすべてを、か。ってことは、全魔法を使えるわけだよな。オレは見ての通り白髪だから、無属性魔法しか使えんよ。つまり、魔神じゃない」


 全魔法を扱えるなんて化け物も良いところではないか。まるで師匠(アカツキ)みたい――ん?


 ……まさか。いや、それ以外の可能性も考えられるし、今は頭の隅にでも置いておこう。ただ、アカツキとノマは今後も絶対に会わせないべきだな、うん。


「この魔力量で魔神ではない? しかも、人間? そんなバカな。でも、魔色に色がなかったのは確かだし……」


 オレの発言に衝撃を受けたのか、ノマはブツブツと自問自答を繰り返していた。若干、怖い。


 初対面時の態度から、ある程度の気持ちは理解できる。精霊の中での人間の認識は、『魔力の量や扱いが下手で、取るに足らない存在』といったところなんだろう。そんな下等生物とも言うべきモノ(オレ)に魔力関連で大敗しているんだから、彼女のプライドはズタズタに違いなかった。

 

次回の投稿は明日の12:00頃の予定です。

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― 新着の感想 ―
お、男の娘ェ!!是非ともコミカライズで見たすぎるぅ!!
オルカはもう妹で良いよ アカツキあんた魔神だったのかよ
狐耳で男の娘でドレス姿?えぇぇ…何そのご褒美
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