Interlude-Akatsuki レベル≠強さ
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「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
少年の雄叫びと劈く轟音が耳に届く。我が弟子ゼクスが俺の分身の放つ絨毯魔法攻撃より逃げる光景が、目前で繰り広げられていた。
長閑な平原が、ドゴンドゴンと魔法によって引っくり返っていく。それを必死になって回避するゼクスの様は、なかなかに見応えがあった。
地形が見る見るうちに変貌していくけど、心配はいらない。ここは俺――アカツキが【異相世界】で模倣した世界にすぎないんだ。外の世界には一切の影響はなかった。だから、遠慮なくゼクスを攻撃しまくれる。
俺は、もっと苛烈に攻撃するよう分身に指示を出し、経過を見守る。ゼクスの怨嗟の声が耳に届くけど、まるっと無視しておく。まぁ頑張りたまえよ。分身程度に手こずっているようじゃ、俺をぶん殴るのなんて夢のまた夢だぞ。
一時間後。荒れ果てた野原の上に、ゼェハァと荒い息を吐くゼクスが転がっていた。四肢を投げ出し、大の字に寝そべっている。
俺は彼の傍にそっと降り立った。
「いやー。まさか、こんなに早く分身がやられるとは思わなかった。前々から思ってたけど、お前は成長が早いな」
そう、ゼクスの相手をしていた分身は葬られていた。最初こそ逃げの一手だったが、次第に攻撃パターンを読み切って、反転攻勢を仕掛けてきたんだ。攻めに入ってからの手際は、見事だと感心するしかない。まだまだ分身を倒すのは先だと考えていたので、この結果は予想外だった。
ただ、意外とは言わない。こいつの修行を見始めてより一年近いが、成長速度が尋常じゃないんだよ。だから、俺の予想を超えることは想定の範囲内だった。
この様子だと、あと二、三年で俺に並び、そのうち圧倒してくるかもしれないな。
元が頭につくとは言え、神の使徒よりも強い者が現世に存在する。それは世界のバランス的に、かなり不味い事態だ。そも、人間が俺に師事すること自体が宜しくない。
じゃあ、どうして、ゼクスの師匠になろうと決めたのか。
ノリと勢いだったことは否めない。俺、現世を楽しみたいがために神の意志に逆らった阿呆だもの。
でも、それだけってわけでもなかった。直感に従ったところが大きいけど、ゼクスならば世界をどうこうしないだろうと考えたからだ。良くも悪くも、こいつは自分の決めた目標以外への興味が薄い。世界征服なんて、絶対に興味を抱かないと断言できた。
また、ゼクスは精神魔法の乱用を躊躇するほど、善性の強い人間だ。まかり間違っても、俺の与えた知識を悪用しないはず。
しばらくして、ようやく息を整えたゼクスは立ち上がる。
「今日の修行は終わりか?」
彼の質問を受け、俺は逡巡する。
想定よりも早く分身が倒されてしまったから、いつもよりも時間が余っている。少しもったいない気がした。
――よし。せっかくだし、直接揉んでやろう!
「いいや、俺本体と模擬戦だ!」
「絶対、今思い付きで決めただろ!?」
何やらギャーギャー喚いているけど、実戦なら敵は待ってくれないぞ? 大人しく、ボコボコにされるが良いッ!
「ホント、俺って強いなぁ」
十分後、模擬戦は終了した。結果は言わずもがな、ボロ雑巾になったゼクスが転がっている。
「ムカつく奴。少しくらい手加減しろよ……」
「おや、喋る体力が残ってたのか。いやはや、お前の成長には毎度ながら驚嘆するよ」
体は指一本動かせないようだが、かろうじて口は動かせたみたいだ。結構本気で叩きのめしたのに、これはビックリ仰天である。些か、ゼクスの成長具合を上方修正しなくては。
しかし、人間がここまで成長するなんて信じられない部分があるな。転生者って、みんな同じなのか?
不意に湧いた疑問。ちょうど良い回答者がいるので、俺は素直に尋ねることにした。
「一つ質問がある」
「なんだよ、珍しい」
「聖女だっけ? ゲームとやらでは俺と対峙したらしいけど、そんなに強いもんなの?」
物語である以上は俺を倒すんだろうが、にわかに信じ難かった。俺を倒せる人間なんて存在するのかと。いやまぁ、目の前に筆頭候補はいるんだけどさ。
すると、ゼクスは何とも言えない複雑な表情を浮かべた。
「まぁ……人類の中では最強といっても過言じゃないよ、聖女と勇者は」
「なんか、奥歯に物が挟まったような言い方だな。ハッキリ言いたまえ」
その表現だと、まるで人類外――たとえば、俺みたいな神の使徒――よりは弱いって言っている風に聞こえるぞ。
はたして、俺の考えは正しかったらしい。
「聖女も勇者も、現時点の俺より弱いよ。だから、アカツキが期待してる強さは持ってない」
「はぁ? でも、ゲームとやらではオレを倒すんだろう?」
あまりに矛盾した話だ。思わず、素っ頓狂な声を上げてしまう。
対して、ゼクスは俺の反応を予想していたようで、落ち着いた調子で続けた。
「ファンブックに記載された開発陣のコメントによると、ゲームで対峙するアカツキは手加減してたんだとさ。したがって、オレより弱くても矛盾はしてない」
「なんで手加減?」
「お前……自分のことだろうに」
「いや、俺のことだとしても、そりゃゲームの俺だろう? その時の状況に対面してみなくちゃ、考え方なんて分からないさ」
まぁ、何となく察しはついているけど、明確な答えを知ってる奴がいるんだし、聞いておきたい。
ところが、ゼクスは首をひねった。
「さぁ?」
「おい」
「本当に知らないんだよ。手加減した理由は明言されてなかったからな。アカツキの性格上、ノリじゃないの?」
「むっ、否定できないな」
「否定できないんかーい」
そりゃそうよ。俺もノリかな? と予想していたわけだし。敵対者に手加減するなんて、それ以外の理由は考えつかん。
どことなくゼクスの視線が痛くなってきたので、話題を転換しよう。
「さっきの発言からすると、ゼクスは聖女たちよりも強いってことか?」
「露骨すぎる……いいけどさ。その通りだよ。今のオレは、最盛期の聖女や勇者よりも強い」
「ほぅ、断言するのか」
「当然だろう。今のオレのレベル、121だもん」
レベルって、確かゼクスの魔法で覗ける強さの指標だったっけか。
俺は首を傾ぐ。
「あれ。前に99が最大とか言ってなかったか?」
「言った。なんか知らないけど、カンスト超えたんだよ」
それから、ゼクスは語る。
彼の【鑑定】で表記されるレベルとは、『精神魔法で対象の経験を読み取り、ゼクスの記憶にあるゲームの知識と照合して導き出すもの』。純粋な強さを表しているわけではないという。ゲーム知識に含まれる技術等はしっかり強さに換算されているけど、それ以外のモノは上手く算出されないらしい。
「オレの魔法――無属性や精神魔法は、見事に対象外だな。魔法の技術を向上させた時は、あまりレベルの上昇が見られなかったし」
多少は加味されるが、正確に判断されているとは言い難いんだよ。そうゼクスは語った。
俺は唸る。
「ううむ。つまり、ゼクスの言うレベルは、お前の頭の中にある”ゲーム知識”を基準にした評価にすぎないってわけか」
「そういうこと。といっても、例外なんてオレやアカツキくらいで、ほとんどの場合はレベル通りの強さなんだけどな」
「へ~え」
似たような魔法は扱えるけど、レベルという概念設定の話はなかなか面白かった。今のを参考に、俺も魔法を開発してみるか?
ふふふ、良い感じにアイディアが降りてきた。さっさと引きこもって開発作業に移ろう!
「じゃあ、修行はお終い。俺はやることができたから帰るぞ」
「え、いきなりすぎないか?」
「じゃあな!」
俺は転移の魔法を使って、最果てに帰る。何やらゼクスが騒いでいたけど、気にせずスルーした。新しい魔法が俺を待っているッ!
明日よりChapter3開始です。よろしくお願いします。
次回の投稿は明日の12:00頃の予定です。




