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【Web版】死ぬ運命にある悪役令嬢の兄に転生したので、妹を育てて未来を変えたいと思います~世界最強はオレだけど、世界最カワは妹に違いない~  作者: 泉里侑希
第三部 After story

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Chapter30-3 過多(3)

先日、コミックガルドおよびガルドプラスにて、コミカライズの最新話が更新されました。

無料公開では、いよいよビャクダイ領に突入。

先読みでは、ついにChapter1のボスが登場します。

ぜひご覧ください!

 アメーバ型の魔獣は倒した。しかし、それで依頼終了とはいかない。


 今回は、アメーバの発生原因の調査も含まれているためだ。それ込みの、依頼期間半年である。


 無論、必ずすべての謎を解き明かす! なんて必要はない。


 事態が事態だ。いくら調べても答えを得られない可能性はあるので、ある程度のヒントを見つけ出すか、期限を迎えれば依頼は完了だ。


 とはいえ、オレとしては、何としてでも解明したいところだが。


 溢れ返るほどの魔力と生命力が同居するなんて、普通なら起こり得ない。人為的事象の可能性は非常に高く、それを引き起こした人物を見つけ出さなくてはいけなかった。


 先程の魔獣の狂暴性を見る限り、この技術は危険すぎる。


「ゼクスさま、結果が出ました」


 ふと、テリアが声を掛けてきた。


 結果というのは、討伐した魔獣の調査結果を指している。ニナが斬り刻んだ死骸を、調査員たちに調べさせていたんだ。元々、そのために連れて来た人員だし。


「どうだった?」


「まず、モグラ状の部位の方は、スロウモールがベースで間違いないと思います。特徴がほぼ一致している上、生息域もかぶっています」


 オレの問いに、つらつらと研究員の一人が語り始める。


 彼は続けた。


「続いてアメーバ状の部位ですが、こちらは完全に未知でした。そもそも、アメーバではありません」


「アメーバではない?」


「細胞の構造が、単細胞生物のそれとは異なるのです。どちらかというと、多細胞生物……それも哺乳類に近いでしょう」


「見た目がアメーバに似ているだけ、ということか」


「はい」


「スロウモールの肉体が溶け、アメーバ状になったとは考えられないか?」


「現状の設備では検証が不十分なので断言できませんが、可能性は低いかと。調べた限り、まったくの別物だと判断できます」


「そうか……」


 オレは口を片手で覆って熟考する。


 アメーバ型の哺乳類なんて、未知の生物だ。オレたちの知る生物とは一線を画している。


 そんなものが何処(いずこ)から現れたのか、不思議でならない。


 一方、アメーバが寄生しているという推測は、当たっているみたいだった。あまり嬉しくはないけどね。


 研究員は、その後も調査結果の報告を続ける。


 といっても、内容はスロウモールの方に偏っていた。細胞組織の大半が傷つき崩壊寸前だとか、一部筋力などが異常に発達しているとか、そういったものばかり。


 ()もありなん。アメーバの方は未知ゆえに、解析のしようがないんだろう。


 しかし、何も分からなかったわけではない。スロウモールの状態から、アメーバの特性を予想することはできた。


 アメーバは、膨大な生命力を注ぐことで宿主の能力を強化するんだ。狂暴性がかなり増すし、肉体が崩壊していくデメリットがあるけども。


 寄生生物の生存戦略としては、破綻しているな。宿主を自滅させては、種の繁栄には繋がらない。


 自滅させることに利点があるのか? たとえば、死骸から何かが芽吹くとか。


 ……ないな。死骸を念入りに観察しているけど、何も変化は起きていない。アメーバは完全に終わっていた。


 状況からして、細菌兵器っぽさがある。敵に植えつけ、どんどん殺していく兵器。拡散しないのは良心的だが。


 調査によって、余計に謎が深まってしまった。このアメーバ、本当に意味が分からない。


「うーん」


「おい、フォラナーダ侯爵。チンタラしてないで、早く中へ行くぞ」


 オレが腕を組んで頭を捻っていると、そんなイラ立たしげな声が掛けられた。


 発言者は言をまたない、カナミラの騎士団長である。


 感情を読むまでもなく、彼が焦燥感に駆られているのが分かった。


 先程の戦闘で、良いところなしだったせいだろう。調査で名誉挽回を図りたいと考えているのかな? 彼らはその手の専門家ではないから、望み薄だけど。


 いや、だからこそ、より焦るのか。無駄だと分かりつつも足掻くなんて、絶望以外の何者でもない。


「分かった。行こう」


 オレは、騎士団長の言に同意した。


 彼に同情したから、ではない。ここで色々悩んでいても、埒が明かないと判断したからだ。


 情報が不足しているなら、それを収集するために動くしかない。


「総員、傾聴。これより坑道の調査に出る。隊列を組め」


 命令を受け、テキパキと準備を始めるフォラナーダの面々。


 同時に、カナミラ側も動き始めた。ただ、フォラナーダと比べて緩慢である。


 彼らの感情は、三分の一を油断が占めていた。おそらく、アメーバを討伐したことで、気が抜けてしまったんだろう。


 功を焦る気持ちと緊張感を維持するための気力。それらが別枠なのは分かるが、もう少し気合を入れてほしいところだ。


 オレの最悪の予想が当たった場合、この状態では被害が大きくなる。


「騎士団長。団員の引き締め直しをお願いしたい」


「問題ない。いざという時には、しっかり対応できる」


 騎士団長に改善を要求してみたものの、案の定、袖にされてしまった。


 仕方ない。一応忠告はしたし、彼らの安全は保障しないと約束もしている。これ以上は余計なお世話になるだろう。


 オレは小さく溜息を吐き、気持ちを切り替える。


 坑道に何が待ち受けているのか。鬼も蛇も出てほしくないが……たぶん、そうはいかないんだろうなぁ。








「ギュアアアアアアアアアア!!!!!」


 鉱山を進んで百メートル弱、やはり、例のアメーバ混在魔獣が現れた。


 鉱山内は、オレでも驚愕するほどのエネルギーに満ちていた。そのエネルギーを(もと)にしてアメーバが発生していた場合、一体で済むわけがない。


 アメーバ混在魔獣が複数体存在することは、予期できることだった。


「何ッ、二体目だと!?」


 翻って、驚き動揺するカナミラ騎士団長と団員たち。


 こちらも予想通りである。殿を任せておいて正解だった。お陰で、フォラナーダの動きに支障は出ない。


 ちなみに、先頭はニナに任せ、オレはフォラナーダと騎士団の境目にいる。


「ギュニヤアアアアアアアアアアアアアア」


 再び雄叫びを上げる魔獣。強烈な敵意が叩きつけられる。


 アメーバ以外の部位は一体目と同じスロウモールなので、攻撃パターンは読めていた。


 しかし、だからこそ、面倒な相手だった。狭い坑道で先程のような弾幕攻撃をされては、すべて受け止めるしかない。あの強烈な攻撃を、だ。


 逆に言えば、守る範囲も限定されるため、オレやニナだけで防ぐことも可能だ――が、今後の探索を考慮すると、余計な消耗は避けたいところ。


 とどのつまり、取るべき戦術は一つだった。早期決着である。


 ――【コンプレッスキューブ】。


 結界で囲い高速縮小することで、敵を圧死させる魔法。【銃撃(ショット)】に次いで、オレがよく使う術を発動した。


 一体目の際に通用しなかった魔法だが、大丈夫。その辺りは心得ている。


 圧縮が始まる前。一瞬を越え、刹那よりも速く、新たな【コンプレッスキューブ】を、既存のそれを覆うように展開した。二重ではなく十重(とえ)に。


 【コンプレッスキューブ】は、アカツキでも回避が難しい術だ。いくら魔力と生命力の溢れる敵と言えど、神の使徒を越える力はない。


 次の瞬間、十重(とえ)の【コンプレッスキューブ】がアメーバ混在魔獣を圧し潰した。


 生々しい音を鳴らす暇はあらず、短い風切り音のみが微かに流れた。


「落ち着け、お前ら。構えろ、土球の攻撃が来る……ぞ?」


 騎士団長のリアクションは遅れていた。アメーバ混在魔獣が消滅しているにもかかわらず、戦闘準備の命令を下そうとしていた。


 他の騎士団員も同様だ。戦闘態勢を整えている者はまだ良い方で、未だ接敵による動揺が抜けていない者もいる始末。


 まぁ、無理もないのかな。敵との邂逅から倒すまで、五秒と経っていない。二度目の雄叫びから数えると一秒未満だ。


 ここまでの高速戦闘、カナミラ騎士団にとっては未知の領域だろう。


「ニナ、どうだ?」


「……新手はなさそう」


 先頭で警戒を続けていたニナに問うたところ、若干の間を置いて返事がある。


 ここでは探知系の術が上手く働かないため、五感の鋭いニナに尋ねるのが得策なんだ。もちろん、オレも警戒はしているけどね。


 彼女の答えに、ひとまず安堵する。騎士団が混乱中の連戦は、できるだけ避けたかったのでありがたかった。


「それにしても、さすがはゼクス。あの魔獣を速攻で倒すなんて」


 ふと、ニナがそんな称賛を溢す。


 オレは肩を竦めた。


「一度目の戦いで、だいたいのスペックは把握できたからね」


 解析と対策こそ、オレの武器だと自負している。まったく同じ敵なら、これくらいは容易かった。


 むしろ、いつもより対策が甘いくらいである。次は、【コンプレッスキューブ】を十重(とえ)にするなんて非効率なマネはしない。魔力の無駄遣いだ。


 アメーバ混在魔獣は……長いな。複数存在すると確定した以上、名前を付けておこう。


「各員に告ぐ。アメーバ混在魔獣は、これより逸魔(いつま)と呼称する。この場にいない者にも通達しておくように」


 常識より()脱した()獣。ゆえに逸魔(いつま)だ。分かりやすさは当然、新種が現れたことを見据えて、定義を広く取っておくべきだろう。


 フォラナーダ側からは了承の返事があった。カナミラ側は微妙だけど、あとでバルヴァロ公爵に伝えておけば良い。


「基本、戦闘はオレとニナが行う。他メンバーは回避をメインに、遅滞戦術を心掛けろ。お前たちの火力で、逸魔(いつま)を倒すのは難しい」


「「「「「「「「「了解」」」」」」」」」


 短くも確かな返事がある。


 戦力外宣告を受けてテリアや騎士は悔しげな感情を湛えているが、こればかりは仕方ない。


 逸魔(いつま)の防御力を突破するには、限界突破(レベルオーバー)に加えて高火力技が必要になる。それを満たしている今回のメンバーは、オレとニナだけだった。


 とはいえ、鉱山内に逸魔(いつま)がどれほどいるかは分からない。場合によっては、彼らに防衛を任せることもあるだろう。


「ゼクス」


「噂をすれば何とやら、だな」


 色々と分析をしている最中、ニナから鋭い声が飛んでくる。


 遅れて、オレも感知できた。新手の登場である。


「「「「「「「「「「「キィィィィィィィィィィ」」」」」」」」」」」


 坑道の奥から現れたのは、コウモリ型の逸魔(いつま)だった。サイズは三十センチ目トールほどと小さいが、数が多い。二十近くいる。


「奥から、さらに来る!」


 続くニナの報告。


 どうやら、もっと増えるらしい。『場合によっては』なんて悠長なことを言っている暇はなさそうだ。

 

次回の投稿は3月17日12:00頃の予定です。

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