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【Web版】死ぬ運命にある悪役令嬢の兄に転生したので、妹を育てて未来を変えたいと思います~世界最強はオレだけど、世界最カワは妹に違いない~  作者: 泉里侑希
第三部 After story

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Chapter29-5 淡朽葉色の愛(2)

2025/12/20:

【修正】

セイラが光魔法を使えるようになっていた描写が抜けていたので追記。

該当部分:『加えて、今のセイラは満足に~』

 キサラのことをカロンに任せたオレは、サクッと三名のグリューエンを排除した。素体となったヒトは、きちんと元の居場所に帰している。


 一方のニナとオルカも、無事にグリューエンたちを片づけていた。


 ニナは魂のみ斬るという、お馴染みの意味不明技で。


 器用なオルカは、魔力で魂の外科手術的なことを行っていた。こう……針と糸状に形成した魔力でチョイチョイといった感じだ。こっちも大概意味不明だな。


 二人なら大丈夫だと信じていたから任せたんだけど、想像以上の結果である。どちらも相当神経を使う作業だったようで、できるなら二度とやりたくないと、【念話】越しに愚痴をこぼしていたけども。


 特にオルカには、『こんなのを日常的に使ってるゼクス(にぃ)って、やっぱりおかしいよ』なんて言われてしまった。


 無属性魔法に求められる魔力操作技量と消費する魔力量は、他の属性魔法の比ではないからなぁ。物によっては色魔法に匹敵するし、そんな感想を抱くのも仕方がない。


 とはいえ、ここまで素早く排除できたのは、グリューエンが本来の力を取り戻していなかった点が大きい。一番強かった奴でも、以前に相対した時の三分の二程度。レベルにして90に届かないくらい。


 あと、魔法司にも至っていない様子だった。魂がグリューエンでも、肉体は素体のままだから、という理由なんだろう。


 これなら部下たちに任せても、と思ったが、ニナたちのように魂を引きはがせるわけではない。今回は、この采配で正しかったと思う。


 あの二人を基準にするのは、さすがに部下たちが可哀想だ。


 これで、残るグリューエンは一人。結果論だけど、キサラの暴走のお陰で、分霊を探す手間がかなり省けた。


 もしかすると、千年前のキサラも、同じような結果を残していたのかもしれない。好き勝手に動いて周りに迷惑をかけたものの、何だかんだ最良の結果に落ち着く、みたいな?


 ミネルヴァ、シオン、オルカ辺りは絶対に嫌うだろうなぁ。彼女らは計画通りに物事を進めたいタイプだから。かくいうオレも苦手だ。アドリブは得意ではない。


 話を戻そう。


 残り一人のグリューエンを排除するため、【位相連結(ゲート)】を開こうとするオレ。


 だが、居場所を探知する際、とあることに気が付いた。


「やっぱり、接敵したか」


 マリナたち一行が最後のグリューエンと遭遇したのである。まだ出会って間もないようだけど、戦闘開始は時間の問題だろう。


 というか、場所が人気(ひとけ)のない平原の辺り、狙って移動したな? おそらく、マリナの思惑なんだろうが。


 マリナも割とスパルタだなぁ。


 そんな益体(やくたい)もない感想を抱きつつ、発動しかけだった【位相連結(ゲート)】を開く。そして、彼女たちの下へ移動した。


 転移した直後、マリナとマイムが結界を展開したようだった。半径五キロメートルほどを水の天幕が覆い、外界と遮断される。


「ゼクスさま」


「ゼクス!」


「お兄ちゃん」


「ゼクスさん」


 オレの登場にマリナ、マイム、友里恵(ゆりえ)実湖都(みこつ)の四人が同時に反応する。


 どうして友里恵(ゆりえ)は、感知能力の高いメンバーと同時に反応できるのか。不思議だなぁ。


 若干の現実逃避をしつつ、現状を確認する。


 オレの傍に近寄って来る先の四人とは別に、二つほど人影があった。


 正面五十メートルほど先に立つ二人。片や、この集団の主目的を担うセイラ。片や、二十代半ばくらいの金髪金眼の女性。


 後者は見覚えのない顔……ではないな。


 たしか、ホスティア伯爵分家の次女だったか? 『事あるごとに問題が発生し、なかなか結婚ができない』という話で有名な令嬢だ。一応、婚約者はいるはずなんだけどね。


 ただ、中身は本人ではないだろう。髪色が金に変わっているし、魔質もグリューエンのそれである。


 強さは、だいたい生前の八割ほどか。復活した八人の中で一番強力な個体だった。


 相対する二人を眺めながら、オレは隣に寄り添うマリナへ問う。


「セイラに戦わせるのか?」


「はいー。その方がいいかなって~」


「スパルタだなぁ」


「ゼクスさまほどではないですよー」


 ニコニコと笑うマリナ。なんか少し怖い。


 あと、他の面々。そこで「うんうん」と首を縦に振らないでくれ。気まずくて仕方ない。


 オレは溜息を溢し、改めてセイラたちを見据える。


 彼我の戦力は、グリューエンの方が上。レベル的には十の差がある。正直、正面突破は難しい実力だ。


 加えて、今のセイラは満足に光魔法を使えない。一連の旅を経て多少は発動できるようになったが、その出力は全盛期より大きく劣っている。今回の戦いにおいては、ほぼ役に立たないだろう。


 土魔法のみで立ち向かうしかない事実は、相手が相手だけにかなり厳しかった。


 それでも、この場にいる全員がセイラに一任した。


 であれば、オレもその判断を尊重しよう。肝心の当人もやる気十分のようだし。


「チッ。私は早く隠れなきゃいけないってのに。あの化け物に追いつかれる前に倒すッ」


 忌々しげに舌打ちするグリューエン。魔力隠蔽をしているためか、未だオレの到着には気づいていないようだった。


 対して、セイラは堂々と言い放つ。


「逃がさない。それが私の役目だから!」


 グリューエンと向き合う彼女の瞳には、輝きがあった。何かをあと一歩で掴めそうな、期待と希望の混ざった色が。


 どうせ、最後の一人。これが終わったら事後処理しか残っていない。なら、思う存分戦わせてやろう。


 オレはマリナたちの結界の上に追加の結界を張り、ついでに【位相隠し(カバーテクスチャ)】からテーブルとティーセットを取り出す。


「立ったままなのも疲れるし、お茶を飲みながら、ゆっくり観戦しよう」


 そう声を掛けると、みんなから呆れの視線を投げかけられた。








 セイラ対グリューエンの戦いは、事前の予想通り、グリューエン優位に進んでいた。お互いに高度な魔法を繰り出しているんだけど、グリューエンが放つ金魔法に、セイラは対応できていないんだ。


 やはり、色魔法の有無は大きい。基本、色魔法に属性魔法は勝てないからな。


 不幸中の幸いなのは、劣化しているグリューエンは常に金魔法を使えないことか。間隔からして、五分に一回撃てれば良い方。


 このハンデのお陰で、セイラは強力な金魔法をやり過ごせていた。普段から、マリナたち格上と模擬戦をしていたのも大きい。


 しかし、ジリ貧には変わりない。ただでさえセイラの方が格下の戦いなんだ。いずれ、グリューエンの牙が届くだろう。


 二人の戦いが始まって三十分後。ついに、その時が訪れる。


「あっ」


 二人の攻防を先読みしていたらしい実湖都(みこつ)が、真っ先に声を漏らした。


 直後、セイラの身に、グリューエンの金魔法が突き刺さる。高速回転させた槍状の光が、彼女の左太ももを貫通したんだ。


 太ももは、大きな血管が通る大事な部位。そこを損なえば当然多くの血を流し、パフォーマンス低下をもたらす。


 光魔法師であるセイラは即座に治療を施すものの、その間隙(かんげき)は敵の追撃を許してしまう。グリューエンの放つ光魔法の群れが、次々とセイラに着弾した。


 目映い光と土煙が周囲に広がり、セイラの身を隠す。


 だが、グリューエンは攻撃の手を緩めなかった。セイラがいた場所に向かって、連続で魔法を放ち続ける。


 そのまま連続攻撃を五分間続けた奴は、再び金魔法を発動した。結界の天井を覆い隠すほどの金色の紋様が描かれ、そこから金色の雨が降り注ぐ。


 カロンの使う金魔法【天輪流雨(てんりんるう)】に酷似した魔法だな。その威力は言わずもがな、だろう。


 降りしきる金色の雨によって、地表がめくれ上がっていく。大地が裂け、宙を舞い、大気が乱れ、嵐を起こす。もはや天変地異だ。


 オレたちは問題ない。内部にも結界を張っているので、あちらの攻撃が届くことはない。だから、オレやマリナは悠然と茶を啜ることができた。


「セイラ!」


「セイラさん!」


 ただ、友里恵(ゆりえ)実湖都(みこつ)は違ったらしい。席を立って結界の傍まで駆け寄り、そこに手を突きながら向こう側をジッと見つめていた。


 大規模な攻撃を目撃して、セイラの身が心配になった模様。


 無理からぬことか。転移組の二人は、色魔法を交えた死闘というものを知らない。ここまでの大規模戦闘の経験が少ないのだから。


 大地が舞い、空を黄金が駆け抜ける中、友里恵(ゆりえ)たちは不安げに外を見守り続ける。


 そんな彼女たちに、マリナが告げた。


「心配しなくても、セイラちゃんなら大丈夫だよ~」


「何を根拠に言ってるんですかッ」


 状況にそぐわない明るい声音だったせいか、実湖都(みこつ)がイラ立たしげに反論を口にする。


 隣の友里恵(ゆりえ)も、不満げな感情を湛えていた。


 一方で、オレをジッと見つめている。


 おそらく、観察しているんだろう。現状がどこまで危ういのか、オレを通して推し測っているんだ。


 そして、助ける必要はないと判断した。オレがまったく動じていないから。


 その信頼は嬉しいと同時に、重くも感じる。オレだって判断を誤ることはあるんだぞ?


 まぁ、不満を抱いているところを見るに、完全に納得はしていないみたいだな。信頼と感情は別物だし。


 オレが心のうちで苦笑を溢している間、マリナが言葉を返す。


「わたしはセイラちゃんを知ってる。それが根拠だよー」


「そんなの根拠とは――」


「根拠だよー」


「根拠じゃ――」


「根拠だよー」


「ちが――」


「根拠だよー」


「……」


 反発する実湖都(みこつ)を、マリナは同じセリフのゴリ押しで封殺した。しかも、笑顔のままで。


 強いな。あの友里恵(ゆりえ)でさえ、二人のやり取りにドン引きしている。


 実湖都(みこつ)が黙り込んだのを認めた後、マリナは改めて口を開く。

 

次回の投稿は12月23日12:00頃の予定です。

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