Digression-Zex フォラナーダの三兄弟【コミックス2巻発売記念】
大変遅くなりましたが、コミックス2巻の発売記念SSです。
(インフルエンザでダウンしてました。申しわけございません)
コミックスの方は好評発売中ですので、よろしくお願いいたします!
某日。オレとカロン、オルカの三人で、フォラナーダ領都の散策に出ていた。久々の休暇が偶然重なったためである。
もちろん、姿を【偽装】でカモフラージュしてね。さすがのフォラナーダでも、領主やその弟妹が街中に現れては大混乱必至だ。いや、むしろフォラナーダだからこそ、なのかな?
「おや、カロンちゃんじゃないか。久しぶりだなぁ。果物、買ってかないかい? おまけするよ」
「オルカちゃん、オルカちゃん。築島産の海魚を入荷したんだ。良かったらどうぞ」
「おいおい。ちゃんと見ろよ。三兄弟でお出かけ中なんだぞ。鮮度が大事な魚なんて、持て余すだけだろうが。ここはウチの肉を──」
「そっくりそのまま返すよ。肉だって変わらねぇじゃねぇか!」
「うわわ、ケンカしないで!」
とはいえ、姿を偽って出かけるのは日常茶飯事なので、こうして商店街のヒトたちには声をかけてもらえる。優しいヒトたちが多い。
名前バレしないのかって?
カロンは愛称呼びだし、オレとオルカの名前は唯一無二というほど珍しくない。だから、心配はいらなかった。
盛り上がりすぎる彼らをなだめた後、オレが口を開く。
「せっかくだし、おすすめされたものを買って行こうか」
「え、いいのかい?」
「もちろん。ナマモノも、魔法で対処すればいいし」
「「「「「おお~」」」」」
最終的にたくさんの商品を抱えることになった。ちなみに、半分以上はオマケである。
大荷物があっても、【身体強化】を使えるオレたちなら問題ないけど、少し邪魔なのは確か。
ゆえに、人気の少ないところに移動した辺りで、【位相隠し】に収納することにした。変装しているのに、堂々と魔法を使うわけにはいかないからな。
「それにしても、たくさんいただいてしまいましたね」
「遠慮すると、そのさらに倍はくれるからねぇ」
「ご厚意は嬉しいのですが、そのようなことをして、経営は大丈夫なのでしょうか?」
「いくら何でも、経営が傾くほどの無茶はしてないと思うよ……たぶん」
ヒトの多い通りの方に戻りつつ、そんな会話を交わすオルカとカロン。
そこへ、オレが苦笑交じりに加わった。
「彼らにとって、オレたちは親戚の子どもみたいな扱いなんだろうさ。小さい頃から見守って来たわけだし」
「ふむ?」
「何となく分かったような、分からないような?」
「ははは。そういうものだって理解で十分だと思うぞ」
カロンとオルカにはピンと来ない感覚らしい。
こればっかりは仕方ないかと、笑って締めくくるオレ。いずれ理解できる日が来るさ。
釈然としない雰囲気をまとうカロンたちだったけど、無理やり回答を得たいほどの熱意はなかった様子。数秒もすれば、二人の意識は、あっという間に新しいことへと向いていた。
「そういえば、この前空き地になった場所に、新しいお店が入ったらしいよ」
「へぇ、早いですね。何のお店なのですか?」
「雑貨屋だって。色んなところから取り寄せた商品が売りって聞いたよ」
「たぶん、流通が盛んになった影響だろうな」
相槌代わりに、二人の会話に参加するオレ。
すると、カロンが笑顔で返答した。
「つまり、そのお店は、お兄さまのお陰で開店できたということですね!」
「そっか。【位相連結】の魔道具の影響で、海外の特産品が流れてきやすくなったもんね」
「影響が皆無とは言わないけど、さすがに言いすぎじゃないか?」
オルカは得心したみたいだが、オレは苦笑がこぼれてしまう。店側の努力もきちんと評価してあげないと。
二人もわざと過剰な発言をしていたようで、すぐに「冗談ですよ」と返してきた。
それから、カロンが提案してくる。
「その雑貨屋、伺ってみませんか? どのような商品が並んでいるのか、興味があります」
「賛成ー。というか、そのつもりで話題に出したんだよね」
「オレも構わないよ」
目的のある外出でもない。気の向くままに行き先を決めるのも良いだろう。
そうして、件の雑貨屋へ進路を定めるオレたち三人。
その道中、ふと、カロンが足を止めた。
「懐かしいですね……」
彼女の視線の先には、子どもたちの集まる広場があった。そこは、かつてオレたちが遊んでいた場所だった。
さすがに、以前とまるっきり同じ光景ではない。この十年で整備が繰り返されおり、快適さが増している。子どもの数も、オレたちの幼少期より増えていた。
ただ、面影は残っている。こうして目の前にすれば、どの辺りでどんな遊びをしていたのか、すぐに振り返れた。
「そういえば、学園に入学してからは、まったく足を運んでなかったね」
カロンに感化されたのか、目を細めて懐かしそうに呟くオルカ。
オレはそんな二人を頬笑ましく眺めつつ、言葉を紡いだ。
「みんな、大人になったからな。広場で遊ぶような年齢じゃなくなったのはもちろん、集まれる場所も増えた」
「そうですね。学園に入った後は、部室かカフェで集まる機会が多かったです」
「それに、周りの目を気にする必要がなかったからねぇ」
「嗚呼。それもありますね。堂々と王都の別邸に呼べるようになったのは、楽で良かったです」
領都だと色々気を遣いますからね、とカロンは頷いた。
その後、わいわいと思い出話に花を咲かせる二人。
うーん。カロンたちは気にしていないみたいだけど、王都でダンたちと遊ぶのも、結構目立っていたからね? わざわざ指摘するような輩がいなかっただけで。
マリナやスキアは敏感に察していたと思う。この辺りの感覚は、微妙に二人ともズレているんだよなぁ。フォラナーダの環境に浸りすぎた結果かもしれない。
オレは苦笑いを浮かべつつ、二人の雑談に耳を傾ける。
彼女たちの思い出話は、思いのほか面白かった。懐かしいのもそうだけど、意外とオレの知らないエピソードも多いんだよね。オルカがフォラナーダ入りして以降、オレが同行しない場合が増えていたし。
途中、つまみ食いの話で、二人がハッと口を噤んだのは面白かった。バツが悪そうにこちらを窺う必要はないぞ。今さら、そんなことを怒らないって。
妻や恋人となり、大人になったなぁと実感して嬉しい。一方で、こうして変わらない部分も見られるのも嬉しかった。ほんわかとした気分になれるんだよね。
興が乗ったのか、その日はずっと思い出話で盛り上がった。雑貨屋で買い物する時も、その後の喫茶店でも。よく、そんなに話題があるなぁと感心するよ。
まぁ、その大半がオレ関係だったのはご愛敬かな。我ながら愛されている。
次回の投稿は12月8日12:00頃の予定です。




