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魔法の石フーラス  作者: 春野 悠
第2章 行方不明
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行方不明 3

「ところで大臣、先ほど化石がどうこう言っていたようだが?」

 それまで王妃様と話をしていた王様が、ふいにこちらを向いて口を開いた。

「そう、そうなのですよ! 化石! グラーブキープの谷で見つかったと連絡が入りまして。調査に向かった大学の話では、その正体はまだ公には明らかにされていませんが、どうも噂では――」

「ドラゴンなのでしょう! 私も聞いて驚いたわ!」

 きらきらと輝くような笑顔をした王妃様が、王室特別大臣の言葉に興奮気味に反応する。

 セレナ王妃様はやわらかく波打つ金髪を持ち、目は透き通るようなブルー。国中のだれもが美しいと口をそろえるくらいの顔立ちをしていた。皆を元気づけてくれるようなパワーも持った彼女は、どんな人からも評判が良い。

「セレナ様もご存じでしたか。そう、ドラゴンの骨らしいのです! まだ調査は始まったばかりではっきりしたことはわかりませんが、もしドラゴンだとしたらこれは大ニュースですぞ。大学の話によると、ブライアートの国際魔法学校も調査に乗り気とのこと。どうも見つけたのは地元の若者だという話でして」

 王様がアレックを見る。

「西南のガルデ河の下流に大きな谷があるのだが、古くから墓守の谷と言われていてな。近くの村では、その墓というのはドラゴンのものだという伝説がずっと残されているらしい。アレックは知っていたか?」

「はい、うろ覚えではありますが」

 王妃様が続けて言う。

「確か、ブライアートにそのような文献があったのよ。ディリィが見せてくれた気がしたわ」

 アレックは思わず王妃様を見た。ディリィ? 今のは聞き間違いだろうか。

「ところで、シルマはどうした? なぜ席にいない」

 その言葉に席を見れば、シルマ王女の席だけぽっかり空いていた。食事はすでにそろっているのに、王女の姿が見当たらない。

「オルコット?」

 王妃様に呼ばれて、そばで動いていた使用人頭のオルコットもまた首を傾げた。

「おかしいですわ。すでに侍女が迎えに出ているはずですのに。アン、エルメスはどこ?」

 テーブルでは相変わらず王特大臣のドラゴンの話で盛り上がる中、広間の隅では使用人たちが右往左往していた。まもなくエルメスが息を切らせて広間に戻ってくる。

「オルコット、夫人。シルマ様は確かにこの私が、起こしにうかがいました。すでに起床なされていて、ご朝食までお部屋で、お待ちになっていたはず、だったのですが」

 それから呼吸を整えて続ける。

「先ほどお部屋にうかがいましたが、もうすでにおられなかったご様子でしたので、てっきりすでにお食事に向かわれたのだとばかり……」

 エルメスもオルコットも顔が真っ青だ。

「セレナ様、私の監督不行き届きで申し訳ございません。すぐに捜してまいります」

「まあ、そんな顔をしないでちょうだい。またシルマがふらふら出歩いているのよ」

 呆れたように王妃様は言う。

 アレックは水を飲もうとして、そういえばと思い出した。廊下で王女に出くわしたじゃないか。

「私がお会いした時は、たしか図書室へ行かれるようなことをおっしゃっておりましたが」

 

 まったく今日は本当についていない。どうやらアレックの後にシルマ王女を見たという者はなく、必然的に最後に会ったのがアレックだということになってしまったのだ。

 すっかり気が動転してしまったエルメスが、アレックの言葉を頼りに図書室へと捜しにいったものの、結局王女は見つからなかった。

「アレック、人捜しができる魔法はないのかね?」

 騎士隊長の言葉に、皆の視線が集まる。こうくるとは思っていたものの、やっぱりいたたまれない気持ちなった。

「申し訳ありません。私には……」

 これと似た言葉を今まで何度言ったことだろう。ここの人たちは、自分ができないことばかりを注文してくるのではないかとすらアレックは思えてしまう。言い換えれば、魔法なんてものは役に立たないものばかりなのだと気づかされるわけだが。

 ここでシルマ王女がひょっこり姿を現してくれれば、それで事なきを得たで終わる話が、一時間が経ち、食事が冷めても王女は現れなかった。

 朝食どころではなくなり、手の空いているものは皆、王女捜しに駆り出されることとなった。使用人たちは各部屋をくまなく覗き、衛兵たちは広い庭を捜しに出る。食事会に出席していた役人たちも、自分たちの部下を使って捜しに行かせた。アレックは騎士隊長と共に動くこととなった。

 さらに二時間は経過しただろう。それでもシルマ王女は見つからない。ひとりならず、王女のいたずら癖が再熱したのだろうと言う者がいたものの、あまりにも彼女の気配がなさすぎた。いくらいたずら好きとはいえ、ここまで大勢に迷惑をかけるようなそんな人ではなかったはずだ。

 どの門番たちも、口々に門の外へは王女を出していないと言い張った。そこへ難癖をつけた騎士隊とひと悶着を起こし、結果、騎士たちは城の外へと馬を走らせてしまった。

 さらに念には念を入れて、朝の時間帯に城の外へと出て行った者たちまで呼び寄せることとなった。

「これで王女が誘拐されたなどと噂に出てみろ、一に疑われるのは朝の時間帯、外に出た人間だろうが」

 と騎士隊長に脅されるようにして、出入りしている人たちは皆大急ぎで城に集まってきたのだった。

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