旅人の手記・4
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◇ 4.
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どーもー
ミーニャでーす
今日からこの本は「大盗賊ミーニャの王子サマゆーかい日誌っ!」になりまーす
国王さまから身代金をいくらふんだくれるか、みんな、予想してねー
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◇ 4-1.
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いたい……
ぶたれた……
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◇ 4-2.レギデア平原 昼
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招宴の月・10日。
こんなのに2度も日記を盗まれるなんて。
我ながら情けない。
注意はしていたはずなのだが、あっけなく盗られてしまった。
俺もまた「世間知らずのお貴族サマ」の一員だったってことなのかね。
自信なくすわー。
旅のほうはすこぶる順調。
平原は中ほどまで過ぎ、そろそろ山脈の裾野に入る頃。
わが絢爛たる檻は地平線に隠れてもう見えない。
あと2、3日も歩けば平原を渡り切るだろう。
……。
懸念点がひとつ。
守衛が見あたらない。
猫を引き渡すつもりで朝からずっと探しているのだが、1人も出会さない。
昨日まではそこらじゅうに居たのに。
嫌な予感がする。
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◇ 4-3.レギデア平原・ムスク川 夕
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今夜は川辺でキャンプ。
焚き火を作り、フリムの日課を眺めながら「雄鶏」で貰った鶏肉を焼く。
ああ。最高。
ここにはしがらみなんて何もない。
おこぼれを狙う髭面の側近も、義務だ責務だと口やかましい侍女も、ここには誰も居ない。
俺は自由だ。
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◇ 4-4.レギデア平原・ムスク川 夜
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ミーニャが魚を釣ってきた。
今は串を通して焚き火で炙っている。
魚の種類は分からない。
黒の斑点模様で腹が太い。
ヤマメ、だろうか。
というかおまえいつのまに縄を。
木の幹に縛られていたはずじゃ。
まあ。いっか。
明日は釣りをしよう。