旅人の手記・3
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◇ 3.旅籠屋『雄鶏』 昼
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招宴の月・9日。
うう。眠い。
二度寝したい。布団から離れたくない。
が、もうチェックアウト。
さっさと荷物をまとめて、部屋から出ねぇと。
ぐう。
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◇ 3-1.レギデア平原 昼
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この時期の土ってけっこう冷たいんですね。
おかげで目が覚めた。
しかし容赦無いなぁ。
荷物が辺り一面に散らばってら。
公衆の面前で荷物をちまちま拾い集める。とんだ羞恥プレイがあったもんだ。あんまりにもミジメで鼻の奥がツンとしやがるぜ。
二度と寝坊はすまい。
途中、猫族の女の子が手伝ってくれた。
優しさが身にしみるぜ。
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◇ 3-2.レギデア平原 昼
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え?
うそ?
こいつ王子様?
まじ?
ヤバ――
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◇ 3-3.レギデア平原 夕
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ああ。クソ。
もう夕方だ。
泥棒猫のせいで今日の進捗はゼロだ。
……ゼロ! 進捗ゼロ!! ふざけんな!! 『雄鶏』の看板が俺を見てやがる!! 丸一日かけて追いかけっこしただけかよ!!!
ちくしょう!
こいつ絶対に許さねぇ!
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◇ 3-4.レギデア平原 夜
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キャンプを張ったら少し落ち着いた。
おかしいな。計画じゃ、今頃星を眺めて優雅に晩酌をたしなんでいる所なのだが。
現実じゃ、引っくくった猫泥棒の前で黙々と肉を焼いている。
はあ。
こんな時でも肉はいい匂いがするなぁ。
空腹時に嗅ぐ料理の匂いは美しい。夜闇にパチパチと揺れる炎もあいまり、草原の夜を幻想的に彩っている。
……これでギャーギャーうるさい猫が居なけりゃな。
そんなに食いてぇのか、おらぁ。
ほーれほーれ。肉だぞぉ。
香辛料がたっぷり塗られた、とびっきりの肉だぞぉ。
てめーは匂いだけ味わって、その辺の草でも――
喰われた。