朽ちた桜の大樹にそっとキスを
君は言う。過去になんか捉われるから暗い気持ちになるんだよ。
僕は言う。過去に意識を向けるから明るい気持ちになるんだよ。
君は言う。過去は呪縛なんだよ。
僕は言う。過去は魔法なんだよ。
君は言う。だから私の事なんか忘れてね。
僕は言う。だから君のことは絶対忘れないよ。
今でも、あなたの言葉は私にとっての魔法だよ。
暗く沈んだ気持ちも、あの手紙に書かれていることを思い出せば、何度だって前に進める気がするんだ。
君が忘れるのと、僕が覚えているのと、どっちが先に終わっちゃうかな。
どっちが先に諦めちゃうかな。
僕があなたを忘れないことを諦めた時、あなたのことを恨むのかな。
お前なんか嫌いなんだって、また言い出しちゃうんだろうか。
でもね、って僕は再び口を開く。君がこの温かい気持ちを忘れないように。
どれだけ時間が経って、朽ち果てても、色褪せたとしても。
素敵なものは素敵なんだよ。
美しいものは、大切なものは。
信じたものは、そのまま僕の中で生きて行くんだ。
あなたがそうやって、昔の私に教えてくれたんだよ。
あなたが出来ないなら、僕はあなたがやろうとしたやり方で、世界にハグをするんだ。
僕は、朽ち果てた君を抱きしめてこれからも生きて行こう。
君を追い抜くんだ。