再び異世界へ
翌日。
重症を負った海斗は病院に数日入院することになった。
斬られた傷は深く、少し動くとまだ痛む。
海斗がじっと本を眺めていると唐突にノックの音が響き渡った。
「どうぞ。」
海斗が短く応答すると扉が開き、霧葉と莉奈、それに昨日身を呈して助けた少女がいた。
「おにーちゃん林檎持ってきたよ。」
莉奈が手に下げてるバスケットには林檎が入っている。
「いや、俺林檎アレルギー。」
「はっ…!」
莉奈が「しまった!」という表情になる。
「大丈夫なの?」
霧葉が椅子に腰掛けながら言う。
「ああ、3日くらいで退院出来るらしい。」
医者には痛みが引けば退院できると言われている。
それには少なくとも3日かかると言う話だ。
少女がもじもじしながら顔を出す。
昨日は焦っていてよく見ていなかったが、この子可愛いな。
桃色の綺麗な髪に整った顔立ち、そして大きい胸。
「あの…先日は、ありがとうございました。」
「おう、無事みたいだな。」
「お陰さまで…」
少女がペコリと頭を下げる。
海斗が苦笑しながら「いいよいいよ」となだめると少女は顔をあげ真っ直ぐ海斗を見つめた。
「あ、あの…!私、九条亜里沙っていいます…!」
「俺は井川海斗、よろしく。」
「はい…!」
それから亜里沙のことを色々と聞かせてもらい、お金持ちのお嬢様と言うことがわかった。
そりゃ胸も大きくなるわけだ。
霧葉に視線を向けると霧葉は亜里沙の胸を見つめているようだった。
ああ、そうか。
「霧葉、胸の大きさじゃ女の価値は決まら…ぐふっ!」
言葉の途中で鳩尾に右ストレートが飛んできた。
痛い。
そのせいで入院が2日増えたのであった。
5日後。
海斗は無事に退院することができ、家に帰ると退院祝いと言うことで母親がご馳走を用意してくれていた。
見舞いに来なかったくせに。
それから霧葉と亜里沙も巻き込みホームパーティーを開いた。
病院では美味しいものを食べられなかっただろうと変な気を使い、母親が食え食えと急かしてくるので食べ過ぎてお腹を壊した。
亜里沙は用事があると言って名残惜しそうに帰ってしまい、霧葉は親がケンカをしてたから帰りたくないと言う理由で泊まっていくことになった。
海斗は魔方陣の書かれたボロボロの紙を見つめている。
異世界に行く時にこの紙からまばゆい光が発せられ気づけば異世界にいた、となったのでこの紙に何か秘密があるのではないかと思ったのだ。
だが何処を見ても不思議な点はない。
「何してるの?」
霧葉が除き混んでくる。
「いやこの紙が異世界と関係してるんじゃないかってな。」
海斗が言うと霧葉が「あー」と納得したような声を上げた。
霧葉も確認するが不思議な点は見つからない。
「あ!」
「あ?」
霧葉が何か思いついたような声をあげ、海斗が疑問の声をあげる。
『スキル[アナライズ]を使用しました』
霧葉が紙を見つめる。
しばらくして視線を紙から外す。
「対象が手をかざすと発動する召喚魔法、だってさ。」
「対象か…」
初めて異世界に行ったときは海斗が紙に触れていた。
そのせいで霧葉を巻き込んでしまったのではないかと考えがよぎる。
「霧葉、手をかざしてみてくれ。」
海斗が言うと霧葉は首肯し紙に手をかざした。
すると紙からまばゆい光が発せられた。
「うおっ!」
どうやら霧葉も対象らしい。
それに安堵した海斗の意識はすぐに途絶えた。