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異世界に行ったのは自分たちだけじゃない

海斗は学校に登校するなり、霧葉に呼ばれ廊下の端へ連れていかれた。

それから昨日の考察を霧葉に話すと、納得した様子でうなずいた。

「わかったわ、なるべくこれは他の人にはわからないようにね。」

「この世界では一切触れなければ良いのか?」

「どうも私たち以外は見えてないっぽいのよね。」

「口外しなければいいと」

霧葉は無言で頷くと安堵したようにため息をついた。

「どうした?」

「あんたが昨日のこと気にしてないようで良かったわ。」

「昨日って言うと…あ、」

海斗は昨日の出来事を思い出して顔を赤くした。

その反応を見た霧葉もあたふたとし始めた。

「と、とにかくばれちゃだめだからね!」

霧葉はそう言い捨てると教室へ戻っていってしまった。


現在時刻は8時40分。

普段であれば8時30分には教師が来るはずなのだが遅刻でもしたのだろうか、教室には教師が来ていなかった。

こんなことは今までなかったため生徒たちは何をしたらいいかわからないままになっている。

と、そこで不意に放送が流れた。

『学校に不審者が侵入しました。生徒の皆さんはその場を動かずに警察が来るまで待機していてください。』

教室が騒がしくなる。

「不審者…か…」

「妙に冷静ね。」

隣にいる霧葉が視線を向けてくる。

海斗はいつものだるそうな表情のままだった。

「信憑性が薄くてな。」

ガシャーン

下の階からガラスが割れるような音が聞こえてきた。

続いて生徒たちの悲鳴すらも。

「信憑性がどうだって?」

霧葉が半目を作って言ってくる。

「…」

海斗は返す言葉が見つからずに黙り混んだ。

どうやら不審者がいるのは本当みたいだ。

だがこちらに来ていない以上自分にはあまり関係無いことだ。

「今完全に真下から聞こえたわよね…」

「ああ…そうだな…」

霧葉が顔を青く染める。

「この下って莉奈ちゃんの教室じゃ…」

「っ…!?」

「あ!ちょっと!」

海斗が立ち上がり走り出す。

たしかにさっきは関係ないと思っていた。

だが妹のこととなると話はべつだ。

海斗が教室の扉に触れようとした瞬間、海斗の力ではなく扉が開いた。

扉からは筋肉質の男が出てくる。

「先生っ!?」

「どうした、黙っていろと言われたはずだが。」

男が険しい表情で言う。

この男は海斗のクラスの担任だ。

この学校の教師の中ではかなり怖い方だと評判の教師だ。

この人にたてついたら最悪肉体言語もありえるだろう。

だが今の海斗にはそれに構っている余裕はなかった。

「くそっ!どけっ!」

「うお!」

海斗は教師を押し退け教室を飛び出した。

「おい井川!何処に行く!戻れ!」

後ろから教師の叫び声が聞こえてくるがガン無視。

海斗は全力で走った。

階段を飛び降り出来る限りの時間短縮をした。

そして教室に差し掛かった時、変な悪寒が走った。

まるで何かに睨まれているかのような。

海斗は頭を振り教室の扉を開いた。

そこには意識を失い倒れた男子生徒と拘束された女子生徒、そして中年くらいの男がいた。

扉の開く音に気付き男が視線を向けてくる。

するとそのとたん悪寒が全身を駆け巡った。

「不審者はお前か。」

海斗は声を上げた。

すると男はにぃと笑みを浮かべた。

「おう、勇気あるじゃねえかぁ。」

「今すぐにその子たちを放せ。」

「お前はそれで放すと思ってるのかぁ?」

「ちっ」

海斗は舌打ちをすると鋭い目付きで男を睨み付けた。

すると男は「へっ」と笑い海斗と真っ直ぐ向き合った。

「おにーちゃん!」

「莉奈!」

莉奈は拘束されているなかにいた。

海斗は莉奈が無事なことに安堵した。

「ほぅ、こいつはお前の妹かぁ…」

「やっ!い、痛い!」

男が莉奈の髪の毛を掴み、引っ張る。

莉奈は涙を浮かべている。

「莉奈!」

「格好つけても無駄だぜぇ?」

すると男はナイフを取り出し莉奈に向けた。

「ひっ…!」

「お前が大人しくしてれば殺すことはないさぁ。」

男が怪しげに微笑む。

「そのかわりぃ、俺の欲求を満たしてもらおうかぁ。」

「い、いやっ!」

「ふざけんな!」

莉奈が人質に取られている以上安直に動くことは出来ない。

と、そこで扉から霧葉が入ってきた。

「海斗!」

「霧葉!?なんでお前…」

男は一瞬驚いたような表情をしたのちに再びにぃと笑みを浮かべた。

「いいねぇ、可愛いのが増えたぜぇ。」

そう言い霧葉に視線を向ける。

「何か変ね…」

『スキル[アナライズ]を使用しました』

霧葉が男を睨み付ける。

「やっぱり…」

「どうした…?」

霧葉が海斗に視線を向け、真剣な表情で言った。

「あいつ、異世界経験者よ。」

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