帰宅できました
『スキル[主人公補正]を使用しました』
「ん…?」
海斗は目を開けた。
天井だ。
見慣れた天井が見える。
どうやら本当に異世界から戻ってきたらしい。
「よいしょ…ん?」
海斗が身体を起こそうと力を入れるが、身体はびくともしない。
すると不意に扉が開き一人の少女が顔を除かせた。
「おにーちゃん、霧葉さん、ご飯出来た…よ…」
海斗の妹、莉奈だ。
莉奈は急に顔を真っ赤に染めあたふたしている。
「あの、その、お、お邪魔しましたー!」
ものすごい勢いで部屋から出ていく。
海斗が何が起こったのだろうと疑問に思っていると、海斗の上で何かがもぞもぞと動き出した。
「ん?」
海斗はそこでようやく自分の上に何かが乗っかっているのがわかった。
「…っ!?」
海斗は自分の上に乗っていたものを見て驚愕した。
海斗の上に乗った何かはゆっくりと起き上がる。
それは他でもない霧葉だった。
眠そうに目をこすったのちに顔を真っ赤に染めた。
「うぇ!?」
霧葉が奇妙な声を上げる。
「お、おい!落ち着け!」
海斗がなだめようとするがもう遅い。
霧葉の振りかぶった拳が海斗のみぞおちにクリティカルヒット。
「げふっ!」
霧葉はその場から飛び退き早々に部屋を出ていった。
部屋のなかにはみぞおちを押さえ悶え苦しむ少年だけが残った。
その後。
霧葉は予定どうり夕食を海斗の家で食べたのだが、先程の出来事のせいで会話が一切ない静かな食事となった。
夕食を食べ終わると霧葉はすぐに帰ってしまった。
「あー…」
海斗は自分の部屋のベッドで枕に顔を埋め、疲労の声を上げた。
幼なじみとは言え、そういうことはしたことがなくかなり気まずいことになってしまった。
そんなことを考えていると携帯電話が鳴った。
海斗が携帯電話を手に取り画面を見ると霧葉からメールが来たことがわかった。
「殺害予告じゃないよな…」
メールを開けた途端に『殺す』などと書いてあった日には土下座もやむを得ないことになってしまうだろう。
むしろ土下座で許してくれるのだろうか。
海斗が恐る恐るメールを開く。
『私たちは異世界から帰ってきたのよね?』
海斗は殺害予告でなかったことに安堵したがメールの意図がまるでわからなかった。
『そうだと思うけど』
海斗がメールを送ると数秒で返信があった。
『異世界にいたときのメニュー画面を想像してみて』
「は?」
海斗は眉を潜めた。
霧葉が言うのだ。
何かあるのだろう。
そう思い言われたとうりに想像する。
すると突然視界にメニュー画面が現れる。
「うおっ!?」
海斗は突然のことに驚いたがそれをすぐさま霧葉に伝えた。
『メニュー画面がでてきた』
『やっぱり、私もそうなのよ』
そこで海斗が携帯電話の充電がわずかなことにきづいた。
海斗は慌てて指を走らせた。
『悪い、充電が切れそう、詳しいことは明日学校で』
『ちゃんと充電しときなさいよね、おやすみ』
霧葉のメールを確認してから充電器にさした。
それから調べた結果、異世界から帰ったものの後遺症的なものとして想像するだけで異世界にアクセスできるらしい。
あくまでも推測だが多分間違ってないだろう。
スキルなども問題なく使える。
つまり、海斗たちは完全にこの世界の人間とは違うものということだ。
海斗は布団に入り、眠りに着いた。