主人公補正
「…もぐら?」
海斗は首をかしげた。
そこには愛嬌のある可愛らしいもぐらがいるのだ。
『スキル[アナライズ]を使用しました』
不意に霧葉の画面にはテキストが表示される。
つちもぐら
レベル 10
EXP10000 G2000
「え?ちょっと、このもぐら経験値が10000もあるの!?」
「は!?」
見た目はかなり弱そうだが霧葉のスキルによると経験値がかなりあるようだ。
「これは倒すしかないだろ!」
海斗は足元のもぐらに向かって剣を振った。
するともぐらは土に潜った。
的を見失った剣は地面を切る。
「…これあれだ。メ○ルスライムみたいなやつだな。」
もぐらが海斗の後方で顔を出す。
すると霧葉がもぐらに向かって剣を振った。
だが再び土に潜る。
「速いわね…」
海斗と霧葉が汗をにじませる。
だがこのもぐらを倒せばかなりレベルが上がるだろう。
そう思い、二人はもぐらに剣を振り続けた。
一時間後。
「はぁ、はぁ、もう無理…」
「無理ゲーすぎるだろ…」
二人は息を切らし地面にへたりこんでいた。
その正面ではもぐらが無表情で二人を見つめている。
ごく稀に剣が当たることはあったがダメージは与えられていない。
きっと防御と素早さに特化してあるのだろう。
「くそ!こうなりゃやけくそだ!」
海斗は自分の剣をもぐらに向かって思い切り投げた。
『スキル[主人公補正]を使用しました』
どうせあたらない、なんて考えながら投げた剣は凄まじいスピードでもぐらに直撃した。
「え!?」
隣で霧葉が声をあげる。
『EXP10000 G2000獲得』
『レベル21に上がった』
「たおせた…」
海斗がポカンとした顔で言う。
「主人公補正ってもしかしてチートスキルなんじゃ…」
海斗が心当たりがあったのは投げた寸前にテキストで出てきた[主人公補正]だ。
よくよく考えてみると字面だけでも意味はなんとなくわかる。
要は主人公のようなことが起きる、ということなのだろう。
これはチート以外の何者でもないだろう。
「一旦帰るか。」
「そうね。」
そう言うと二人は町に向かって歩きだした。
町に着いた海斗と霧葉は色々と揃えるために武器屋へ訪れていた。
「うーん…」
海斗が剣を手に持ち眉を寄せる。
「なんかしっくり来ねぇな。」
そして武器屋をしばらく歩き回ったあと一つの剣を手に取った。
「これかな。」
その剣は刀身が少し短いくらいの一般的な剣だった。
どうやらレベル20からしか扱えないらしい。
海斗はつちもぐらを倒したお陰でレベルが21まで上がっていたのでその剣を購入した。
そして店の外で霧葉を待っていると武器屋の扉が開き霧葉が出てきた。
霧葉はどうやら細めの剣を購入したようだ。
レイピアのようなものだ。
「そろそろ帰らない…?」
霧葉がおずおずと聞いてくる。
「…そうだな帰るか。」
きっと帰れるかどうか心配なのだろう。
そうであるなら仕方ない。
海斗は未だにわからない蟻のマークに触れ、メニュー画面を呼び出した。
そして下にある亀のマークに触れた。
神の声がこれに触れると帰れると言っていたのできっと大丈夫だろう。
亀のマークに触れた瞬間、意識が画面に吸いとられるような感覚を覚えた。
そして海斗の意識が途絶える瞬間、その世界から海斗が消えた。
それを見ていた霧葉が慌てた様子でメニューを開き亀のマークに触れる。