もしも子供が白血病になったら
もしも子供が白血病になったら、あなたはどうしますか?
実は私は今、そういう状況下にいます。
病院に暮らし始めて早五ヶ月。もう六ヶ月目に突入しようというところです。
病名は、急性リンパ性白血病。
しかもフィラデルフィア陽性。
ハイリスクと呼ばれるものだそうです。
長男は四歳で、完治の確率は成人よりも高いです。
六〇パーセント程だと言われました。
それでも私は愕然とし、告知された時は先生たちの前で大泣きしてしまいました。
ドラマでよく使われる、「何でうちの息子が」というやつです。
今は昔と違って、完治できる可能性が高いと言われても、その時は耳に入っても来ませんでした。
ふた昔前なら完治率ゼロパーセント。
一昔前で完治率二〇パーセント。
今は六〇パーセント。
たった六〇パーセントしかないと思うと、最初の頃は悪い考えばかりが過ってずっと泣き続けでした。
子供が寝入った後は毎晩泣き続けて、多分最初の一週間で二リットルは泣いたんじゃないでしょうか。分かりませんけど。
でも今は考えを変えて、十年後にはきっと完治率百パーセントの薬が出ているはずだから、それまでは絶対に死なせるもんかと頑張っています。
六〇パーセントって、そんな心配する数値じゃないって思うかもしれませんね。
実際移植に関して、大人専門の移植コーディネーターの方に「移植関連の致死率は二〇パーセントと先生に聞いた」と言うとそんなに低いのかと驚かれました。
成人の方の致死率は、五〇パーセントを超える人が多いんだとか。
それでも二割の確率で……と思うと、移植の説明を受けた日は怖くて怖くて泣いては吐きました。
今は移植を目前に控え、怯える自分が顔を出したりしますが、どうにか跳ね除けて頑張っています。
なんだかんだと普通に起きて遊んで笑っている長男を見ると、「大丈夫なんじゃないの?」っていう根拠のない自信が出てきたりします。
気にし過ぎは体に毒ですね。母は信じて支えるのみ!
今では長男が寝ている時間帯に、小説を書く余裕すら生まれました。慣れって凄いですね。
たまーに外泊した時も、長男は自分から「病院帰る」とか言ってましたしね。
もう生活の基盤が病院になっちゃってます。
さて、このエッセイにて何を言いたいのかと申しますと。
あなたは子供に医療保険を掛けていますか?
そう、私はアホな事に掛けていませんでした。
長男を妊娠した時、医療保険は掛ける気満々で、色々話を伺ったりしてました。
でも契約は生まれてからじゃないと出来ないと言われたのです。
そして生まれた後は毎日が忙しすぎて、保険の事を考える余裕がなかった。
そして二年後には次男を出産し、ますますドタバタ。
保険の事を考えなかった訳ではなかったのですが、私のものぐさな性格が災いして、「っま、小学校入るまでは医療費はタダやし。小学校入ってから考えればええか」と放置していました。
多いんじゃないですか? そう思われている方!
今となっては後悔しきりです。どうしてあの時保険に入っておかなかったのか。
ん? 子供は医療費掛からないでしょ? 必要なくない?
そう、医療費は掛かりません。でも、入院中の病院食はお金が掛かるんです。
息子は難病指定のため、通常よりかなりお安い値段になっていますが、それでも月に一万円掛かります。
さらに白血病患者を受け入れてくれる病院が県内で二ヶ所しかなく、高速使って三時間の道のりを行く必要がありました。
ガソリン代往復四千円、高速代往復三千八百円。
毎週主人が長男に会いに来てくれていますから、一ヶ月およそ三万円。
子供が父親に会うのを楽しみにしているので、お金が勿体ないから来るなとも言えません。
それと子供は食事が出るけど私はもちろん出ないので、その分の食費が一万円。
最低でも五万円は出費が増えました。
金持ちには大した事ないけれど、我が家のような貧乏人には痛い出費です。
長男が入院しているこの病院は、付き添いも一緒に泊まれるようになっていますが、そうじゃない病院もあります。
病院が家から近くにある人はいいですが、そうでなければ毎日通いかレンタルハウスに住むしかないでしょう。
交通費などで嵩む場合もあります。
子供が病気になったら、ほぼ確実に母親は働けなくなります。
保険には是非加入しておきましょう。
今後、長男は退院して五年間再発せず完治すれば、割高ですが保険には入れるようです。
今回の事があって、慌てて次男を医療費保険に加入させました。
一番やっすいやつでいいんです。医療費が無料じゃなくなった時に追加で入ったり、見直したりすれば良いんですから。
もし何かあった時、「あなたのお子さんは一生保険に入れません」とか言われたらゾッとしませんか?
ほんの少しの備えで、一生の安心が得られるかもしれません。
あなたのお子さんの保険を考えるきっかけになればと思います。
そして私がもうひとつ言いたいのは、お見舞いの事。
長期入院中だから、いつ行ってもいるだろうと突然現れるのは絶対にやめておきましょう。
来て頂けるのは有難いけれど、白血球の数値が下がっている時には会えないし、検査が入ってたりして都合が合わない事もあるので、お見舞いに行く際には必ず連絡を入れましょう。
ま、当然の事なんですけどね。
さて、皆さんはお見舞いというと、何かを持っていかなきゃいけないと思っていますよね?
手ぶらじゃマズイな、と。
では何を持って行きましょうか?
お花? それはNGです。
知っての通り鉢植えは根付くという意味合いから敬遠されていますが、切り花もダメなんです。
バイ菌対策なのですよ。生花はバイ菌がいるらしいです。
じゃ、ドライフラワーやブリザーブドフラワーならいいんじゃないかって?
そっちもNG。さらに言うなら、長男が入院している病院は造花もNG。
何ででしょうかね、紛らわしいからかな?
お花系は、入り口にいる警備員さんにぜーんぶ跳ねられるそうです。
お花はやめておきましょう。
じゃあ何にしましょうか。
定番のお菓子? いいですね、お菓子めっちゃ好きです。
入院中のお子さんや付き添いの人の好みを理解しているなら、無難だと思います。
でも結構みんなお菓子を持ってきてくれるので、食べきれません。
置き場所もないので、そのまま実家にスルーという事になったりします。
お菓子をあげるなら、賞味期限の長めの物で、常温保存出来る物がいいでしょう。
間違ってもケーキとか持って来てはいけません。
白血球の低い時は生クリームは禁止ですし、食べきれなかった時に小さい 冷蔵庫に入れるのが大変過ぎます。気を付けましょう。
では子供にオモチャは如何でしょうか。
もしオモチャを買ってあげたいと思うなら、買う前にその子の母親と相談する事を推奨します。
買っても使わなければゴミです。ゴミと言っては失礼ですが、病室は狭いため、使わない物に置き場所を取られるのは困ります。嫌がられる物をプレゼントしたくないなら、何が良いかをちゃんと聞いてから買いましょう。
それじゃあ今度は絵本はどう!?
ええ、うちの子は絵本大好きっ子だったので、大抵の絵本は大喜びでした。
でも図鑑系はもらっても興味無しでしたので、これもどんな感じの絵本が欲しいかを聞いた方が良い気がします。
絵本が好きじゃない子もいるでしょうし。
ちなみに長男はパワーショベルが好きだったのですが、同じ本を既に持ってたりしたので、申し訳ない気分になりました。
買う前に「この本持ってる?」って聞いても構わないと思います。
サプライズは子供にするだけで十分です。
さーて、じゃあ何にしましょうかね。
やっぱ現金ですかね? 見舞金というやつです。
いや、本当に有難い事です。大人は一番喜ぶのではないでしょうか。
「お返しはいらないから!」と言ってくださる方は神様に見えます。崇めます。
え? 現金じゃ手土産にはならないって?
そうでしたそうでした。
それに現金を渡すのに抵抗を感じる人もいると思います。
そういう時はどうするか?
ズバリ、テレビカードです!
今の時代、総合病院であればテレビカードでテレビを見るようになっているでしょう?
このテレビカードは冷蔵庫に使ったり、洗濯機や乾燥機にも使ったりします。
入院中の必須アイテムなのです!
もし、テレビも見ないし冷蔵庫も使わないし洗濯機も利用しないよーって人でも大丈夫。
テレビカードは現金にも戻せますので無問題。
剥き出しで渡すのはあれなので、封筒に入れると良いかもですね。
まぁ実用性重視の人間が言う戯言ですが、もしもあなたの身の回りに長期入院している人がいれば、こんな手土産はどうでしょう、という提案でした。
最後にお薬についても書き留めておきましょう。
お薬で苦戦されている親御さん、多いのではないしょうか。
しかしうちの長男は割とお薬平気な子でした。
粉のままザザーっと口に入れて、水で流し込む。それが出来る子だったのです。
ですがっ!!
白血病になってから出された薬はダメでした。
理由は簡単。味が檄マズだからです。
私もチョンと指先に付けて舐めた事があります。
その瞬間、ホゲーーッと叫び、急いで口をゆすぎました。
ちょっと苦い、とかそんな程度じゃないです。真剣に不味いです。大人でもこれは苦痛です。
四歳の子供が我慢出来る訳がありません。
アイスに入れるくらいじゃ誤魔化せない。シロップやチョコや練乳でも誤魔化せない。
不味い、不味すぎるんです。
最初の三日間はずっと、向き合って薬の大事さを説明していました。怒ったり宥めたりして、薬を飲ませるのに三時間かかった事もあります。
もう私も長男もげっそりです。こんなのが毎日続くのかと思うと、辛くて本当に泣きました。
でも四日目くらいからあんまり時間を掛けずに飲んでくれるようになったんです。
嫌がっても飲まなきゃいけないって理解した……というか諦めたんでしょうね。
色々試行錯誤した結果、結局粉をザザー方式で落ち着きました。
しかしそれも三ヶ月後、薬の量が増えると嫌がるようになってしまったんです。
一回で終わらせようと、一気に口の中に入れてしまったのが駄目でした。
むせてしまって、それから飲もうとしなくなったんです。
困りました。
激しく困りました。
色々考えた挙句、少量の練乳で練って、丸くして、お薬を飲みやすくするゼリーの中に入れると飲んでくれました。
ってわけで粉の薬を錠剤に変えてもらえないかと頼んだところ、フルコナゾールというお薬以外、全部錠剤にしていただける事になりました。
フルコナさんだけは面倒だけども練乳でコネコネ。
でも、これって白血球の値が低い時はダメなんだそうです。
そもそも練乳がNGだし、開封後二時間以上経った物は原則ダメなので。
そういうわけで今度はカプセルを買って、粉を自分で入れて飲みやすくしました。
カプセルは錠剤より飲みにくくて嫌がりましたが、「嫌なら粉で飲もうか?」というと、頑張ってカプセルで飲んでくれました。
最近はゼリーがなくても、そのまま飲んでくれます。
朝なんか八錠分を飲まなくてはいけないのですが、それを全部目の前に置くと未だに嫌がります。
一錠ずつ出して、五分ごとに飲ませるとそこまで嫌がらずに飲んでくれます。
子供にお薬を飲ませるのって、本当に大変です。
お薬で苦労されている方がいましたら、一生懸命その子に寄り添って考えてあげて下さい。
母親の熱意が伝われば、必ず子供は薬を飲んでくれるようになります。
取り留めのない話になってしまいましたが、どれかひとつでもお役に立つ事が出来たなら、幸いです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。