8 異世界の宿
言われたとおり、胡桃を握り締めながら走った俺は、まさかサッカ―場より二つほど大きい訓練場を、胡桃が潰すまで10週も走り続けた。
クタクタに疲れた体で宿に向かう。
教えられた宿はギルド前の通りの100メ―トルの前の先だったが、10週も走ったあとの俺にとって、今更な感じがする。
宿らしき建物の前に、一応『マップ』を確認してみる。間違いなく、ランディさんが言っていた《花園の亭》だ。
早く休みたいので、ドアを開けて、中に入る。外の静かさと違い、中はかなり賑やかだ。店に入った俺に、他の客は一瞬だけ視線を向いてきたが、すぐに自分のことに戻った。
(どうやらエリクサ―のことはまだここに広めていないみたい、ギルドマスタ―に感謝しないと)
「いらっしゃいませ~、お兄さんはお一人様ですか―」
気づいたら、目の前に10歳くらいな女の子がいた。多分店の人だと思う。
「ええ、ご飯付きで、まずは1ヶ月ほど泊まりたい」
「はい~一日は250ゼルニなのだから~四日は1000ゼルニで~一週間は、えっと、えっと……お、お母さん~」
指で数を数えている女の子は、指が足りなくなると、焦って奥の部屋に走ってお母さんを呼んでいった。
(可愛いな。それにしても、この世界ではこんな小さい時はもう家を手伝っていたのか。俺は17歳になって、バイト一回しかやったことないぞ、しかもほんの何日だけの)
1分も経たないうちに、お母さんらしき美しい女性は女の子と手を繋いで来た。
(この世界本当に美人は多いな、エリ―さんといい、この人といい)
「お待たせしてすみません、お客様はご飯付きのお泊りですよね?」
「はい、とりあえず1ヶ月を泊まりたい」
「畏まりました、1ヶ月ご飯つきだとちょうど10500ゼルニになります」
250ゼルニが一日だと、1ヶ月7500だから。ご飯一日100ゼルニくらいだ。安い、だって55万も渡されたのだよ?何もしないで、何年も暮らせるんだよ。
とりあえず2枚の小さいな金貨を渡す。
「はい、2万を頂戴致します」
「あ、ここ、お風呂、ありますか?」
お風呂はできればあってほしい、日本人たるもの、毎日お風呂は入りたいものだ。
「はい、ございますよ?別料金ですが、一回につき100ゼルニになりますか」
「分かりました、問題ないです」
「畏まりました、風呂の方が後払いもできますので、とりあえず、こちらの9500はお釣りになります」
渡されたのは大きい銀貨9枚と、小さい銀貨5枚だ。となると、大きいのが1000ゼルニで、小さいのが100ゼルニ。そして、多分だと思うが、銅貨も大きいと小さいのを二つがあって、それぞれ10と1ゼルニになる。
「これでは、あとでご飯をお部屋にお持ちしますので、ご利用をありがとうございます。ルビ。お客様をちゃんと空き部屋を連れててくださいね?」
「はいなの~お客様―、こっちなのです~」
「こちらがお客様のお部屋になります。鍵はあげるなのです、食事はあとで持ってくるからねー」
ルビちゃんの案内されたのは二階にある一番奥の部屋、静かでいい場所だ。部屋は六畳くらいの大きさで、ベットと机以外殆どないので、結構広いと感じた。
ベットに倒れこんで、このまま眠りたいが、
「ぐぅぅぅぅぅ」
腹がすごく減った。あと、お風呂も入りたい。
暇なので、ステータスを確認してみる。
【名前】 轟 刀矢
【年齢】 17歳
【Lv】 2
【HP】 50
【MP】 17
【攻撃】 14
【防御】 10
【魔力】 6
【精神】 20
【速度】 16
スキルポイント 25
【スキル】 マップ
【装備】 モイラの短剣 レア度 9
ランダムに1~99までダメ―ジを与えられる神の短剣。
学生服 レア度 10
異世界の服、防御力はまったくないが、鑑賞用なら少々。
ロ―ファ― レア度 10
革靴の一種。異世界の物なので、あんまり役に立たない。
【アイテム】マジックバッグ レア度 3 盗み防止機能付与
サイズを無視することができるマジックアイテムです。300キロ以内のアイテムなら何でも入れます。
エリクサー レア度 9
伝説な薬。生きている限り、どんな病気でも、欠損でも、完全な状態までに治せる薬。
「あれ?いつの間にレベル2になってる」
多分、ランディさんの扱きの原因で経験値が溜まって、レベルアップした思う。レベルアップすることで、スキルポイントは25もある。エリーさんの話では、普通の人がレベルアップする時、スキルポイントは5から10くらいだけど、まさかのここでチート発見?まあ、あり難くそれぞれに5ポイントを振った。
もう一つ注目と必要なので、やはりエリクサーだ。復活するはできないけど、どんな病気や体の欠損も治れるみたいので、十分にすごい効果だ。
「お待たせしましたなの、お客様、ご飯持って来ましたです~」
「ありがとう、ルビちゃん。そうだ、お風呂はあとで行きたいですけど、どこへいけばいいの?」
「はい、お風呂なら、一階の裏口から出て、庭にあるなの。客様はすぐに利用するなら、今から沸いてあげるよ?」
人工でお湯を湧くのか?まあ、異世界だし、給湯器はさすがにないか。
「分かった。じゃ、これあげる。何か好きなものを買っていいよ?」
一生懸命に働くルビちゃんの可愛さにあてられたので、ついに一枚小さい銀貨のチップをあげた。
「いいの?ありがとう、お兄ちゃん。へへへ~じゃごゆっくりお召しください」
ルビちゃんが部屋から出て、俺は持ってきたメシをあっという間に食べ終わった。腹がすきすぎで、味の方はあんまり気にしていなかった、多分美味しいと思う。作ってくれた人に悪いと思いつつ、お風呂へいく準備をしようと思ったら、着替えがないのを気づき、仕方なく、今日はそのまま、明日に買いに行くと決意し、一階の庭のお風呂のところに向かう。
風呂から上がり、部屋に戻った俺は再びベットに倒れこんだ。
思い返すと、長い一日だった。いろいろなことがあって、様々な人にも出会った。自分は異世界にいるんだなっとやっと実感した。そして、いつの間にか眠りに着いた。