1 引き運は最悪
誤字などあれば教えていただければ必ず直します、どうぞよろしくお願いします。
ガランガラン~
「おめでとうございます、残念賞になります。はい、このティッシュをどうぞ~」
必死に笑うのを我慢している係員に100パック目のティッシュが渡された。
そうだ、100パック目だ。
くそ、100枚の福引券を使っても、全部ディッシュに変えた。何かおめでとう~だ。
「もう~だからあたしに任せろって、刀矢の引き運は今まで当たったことはないのに~」
幼馴染でもあり、親友でもあっての神無月 香奈が言ったとおりだ。
この俺――轟 刀矢の引き運は非常に悪い、悪すぎるのだ。この世に生まれきて17年、宝くじはもちろん、福引券は今までティッシュしかもらってことがない。今流行っているアプリゲ―ムの方も、どんなに課金しても、R以上のカ―ドを見たこともない。初めてプレイした時に、思わず携帯を地面に叩きついた。
「分かってはいるけどさ~もしもの時もあるじゃねぇ?」
「そうかな~もし本当にその時が来たら、きっと雨じゃなくて、槍が降る羽目になるとあたしが思うな~」
くそ、そこまで言う?普通ー。
確かにそうかもしれないっと俺もそう思うけどさ。でも、普通はさ、もっと優しく慰めてくれてもいいじゃねぇかな?
「慰めてあげても、それはそれで刀矢は拗ねるじゃない?」
心を読むな!まあ、確かに一理はある。
「一理じゃなくて、事実です。もう何年の幼馴染に務まったと思う?」
だから心を読むな!
「はいはい、仰った通りです」
「分かったなら早く退いて、あたしも一枚があるんだから」
そう言い、香奈は先まで俺たちの会話を聞いている係り員に福引券を渡した。
ていうか、あれだけ店の前で長話をしたのに、よく怒らないな。俺なら営業妨害を訴えたかもしれないぞ?
って、その係り員はさらに「お気の毒ですね」と言いたそうな目でこっちを見た。
やめろう!そんな目で俺を見るな!
っと、俺が一人芝居をしている間に、香奈はガラガラを回した。
どうせティッシュしないないだろう!
ポッ
金色のボ―ルが出てきた。
ガランガラン~
「おめでとうございます、特等賞が出ました。箱根温泉旅行チケット券になります。では、こちらに住所をお書きください。後ほど直接にそちらへお送りいたします」
「…………」
「…………」
そうだった、忘れました。そういえば、俺は自分の引き運が悪いだけではなく、なぜか周囲に仲いい人は途轍もなく運がいいのだ。その筆頭はこいつ、凪 香奈である。
「テヘベロ♪」
こいつッ!笑いやがった!
「くそ!覚えてろ!」
そして、俺も芝居掛かった様に走り出した。
「もう~、悪かったってば。機嫌直してよ~」
「いや、別に怒っていないよ?」
「本当?」
「本当本当、っていうか、冗談ってのか分かっているし」
「まあ、そうね。で、このディッシュはどうするの?」
「あそこにあげる」
「あそこって、いつものところ?」
「そう、いつもの」
あそこって言うのは商店街にとある中華料理屋のことだ。
以前俺と香奈は少しの間だけど、バイトをしたことがある。そこのマスタ―はとてもいい人で、短い間でも、俺らのお願いを聞き入れてくれた。その後もちょくちょく行ってるけれど、それは別の用件だけとね。
「「こんにちわ」」
「よう、二人とも。今日はずいぶん大荷物だね」
「ハハハ、実は……」
マスタ―にさっきガラガラのことは話した。俺の悪運についてのことは以前も何回もありますので、マスタ―は驚くもなく、笑いながら俺の背中をパンパンっと叩いて、「気にするな」っと言ってくれた。
「なので、このディッシュは店で使ってください。俺にはそんなにいらないから」
「おぉ、悪いな。で、今日も持っていくのか?」
「はい、売り残ったの残飯をください」
「お前も相変わらず物好きだな。わかった、少し待ってろ。お前らは裏口へ行け」
マスタ―はそう言って厨房に入った。前はそのまま厨房に一緒に入ろとしたが、「店の人じゃねぇ―人は厨房に入るな」って怒鳴られた。
なので、俺と香奈は言われたとおりに裏口に向かった。
「よ―し、みんないますね―」
香奈は嬉しそうに目の前の光景を眺めている。十数匹の野良猫や野良犬が居座っていた。
そう、俺が残飯を欲しいのはこいつらのためだ。
昔とある野良犬に餌付けしたら、家にまで着いてきようとしたが、当然うちはペット禁止だったので、どうしようっとしたところで、マスタ―に出会った。
マスタ―は「店の裏ならいいよ」って言ってくれて、とりあえずダンボ―ルで簡単の家を作った。
しかし、いつの間にか十数匹まで増えたのを誰でも思わなかったので、バイトもその時始めようとした。マスタ―の好意に甘えてこいつらにここを住ませているけれど。皿とか、ベットとかはやはり自分の金で買いたい。メシ代はさすがにこんなに多いと高いので、店の残飯で解決した。
「刀矢って本当に猫とか、犬とか好きよね?」
「だって可哀そうだろう?人間に都合で生まれてきて、人間の都合で捨てられて。俺は自分ができる範囲でこいつらを助けたい」
「本当、お人よし」
「香奈も相当人よし思うぞ?」
だって、バイトもそうだし、いつも俺のわがままに付き合ってくれた。俺のことを「偽善者」を言う人いるかもしれない、実際学校にはすでにいる。でも、俺はそれで構わない。まあ、最初は自分の運を良くなるかな―っと始めたことだけど。だんだんっと好きになってた。手が届く範囲で何かしたい。それは今の俺のポリシ―だ。
「まあ、こいつらは可愛いよね~。あ、見て、刀矢。新しい子だよ?」
っと、香奈はどうやら新しい猫を見つけて、抱っこしようとしたが、
「にゃ―――――」
その猫は人間を慣れていないようで、道路の方へ逃げた。俺は思わず捕まえようとして、周囲に気を配らなかった。
「刀矢!危ないッ!」
俺は即座に香奈の声に反応した。
が、すでに目の前にトラックが突っ込んできた。どうやら運転手さんが居眠りしたらしい。
(死ぬっ)
それしか思いつかない。視線の端っこに香奈が泣きそうに走ってきたが、多分間に合いそうもないだろう。
(あ~あ、なんて運の悪い人生だろう。
神様よ、来世はもう少しましの運をほしいな。
後は香奈は泣くだろうな、あいつ結構気が弱いな~)
そして、俺の意識はそこで飛んだ……