怪物と魔法使いの話(8)
「のう……何故、そなたがそのような顔をするのじゃ?」
「顔……?」
「辛そうな……苦しいのか? 苦虫を食ったというのか。そんな顔をしておるぞ」
「……そうか」
横から見上げてきた〈少女〉は、戸惑ったような、不思議そうな顔をしていた。
〈男〉も、指で自分の顔に触れるが、自分の手では表情もわからない。
「貴様は我々に同情しているのか?」
「同情? 違うな、これは、俺は……」
『余計なことは考えるな』
頭の中で、誰かが告げる。『やめろ』と『考えな』と。
『彼らは、人間でも生き物でもなく、人食いのバケモノで、許されない存在。人間とは違う』
『彼らがどのように生まれようと、彼らがバケモノであることに変わりはない』
繰り返される文言に、〈男〉は唇をきつく結んだ。何故だか、吐き気が込み上げそうなほど、嫌な気分だった。これが、どこから来る感情なのか、〈男〉にはわからないが、彼ら、月の眷属を思ってのことではない。
忘れられない、忘れることのできない事実が、〈男〉の心に消えない証を刻みつけてくるからだ。
『このバケモノが!』
いつか投げかけられた言葉が、己の存在を突きつける。例え、人間であっても、自分もまた、バケモノと呼ばれた存在だ。
彼らと、何が違うというのだろうか。




