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月の行方と夜の花(3)
案内された部屋は、外からは、他の部屋と変わらない部屋のようだった。
入口も他の部屋と同様に、木戸の代わりに布が垂れ下がっているだけで、中から香の煙と若い娘のはしゃぐ声が洩れてくる。
「サンドラ、ニコラスの旦那が来たわよ。問題ないなら、部屋に入れるわ」
部屋まで案内してくれた女が、壁を叩き、サンドラに声をかけた。
女の言葉に、笑い声がピタリと止まった。部屋にいたのがサンドラ一人なら、声をかけずに部屋に入っても構わなかっただろうが、若い娘達の方が男の存在に戸惑う様子が伝わってくる。
「あー……わざわざ店にまで来るなんて、いったい何の用だ」
「仕事の話だ。お前には聞きたいことがある」
寝起きの間の抜けたような女の声が、布越しに鋭い視線を寄越す。
「……下の部屋が空いているな? 先に行ってろ。話はそこで聞く」
サンドラの返事に、〈男〉は隣に立つ女の方へと顔を向けた。女はにっこりと微笑むと、来た時と同じように〈男〉の腕を取り、下の部屋へと案内した。




