願いと呪い(2)
〈男〉が〈少女〉のねぐらに帰りついたのは、日が暮れた後だった。
〈少女〉と〈鳥〉も途中までは後ろからついてきてくれていたようだが、ねぐらとしている小屋の近くまで来ると、森の中で気配が消えてしまった。
仕方なく〈男〉は一人、手探りで〈少女〉の寝室に戻った。
窓は全て板や布で覆われているから、小屋の中も外と変わらず真っ暗だが、明かりはいつも〈少女〉が付けてくれていたので、〈男〉には火付けの道具がどこにあるのかもわからなかった。
〈男〉は、どうにか寝室までたどり着くと、居間へと続く扉に、背を預けて腰を下ろした。
日が沈んでから夜明けまで部屋から出るなと、最初の晩に〈少女〉に言いつけられて以来、〈男〉はいつもここで夜が明けるのを待つことにした。
部屋を出てはならない理由は聞いていない。何か訳がありのようではあったが、聞かないことにした。
〈男〉からすれば、食われることなく、屋根のある安全な寝床を与えられただけでもありがたく、〈彼女〉が夜中に何をしていようと興味もなかった。朝まで部屋から出ないだけでいいのなら、寝ているうちに時間も過ぎる。
いつものように横に畳んでいた毛布をとって仮眠の準備に入る。寝台を使っていいと言われているが、乗るだけで音がするのでは、壊してしまいそうで使う気にはなれなかった。
昔から,狭い所で体を縮めながら寝ていたから、床に座って寝ることも苦ではない。目を閉じて、呼吸を整えれば、自然と意識は闇の中へと落ちていった。