盲目の僕に
「…っん……」
気が付いたら、僕は暗くて冷たい空間にいた。
ここはどこだろう、僕は…………そうだ。
たしか僕は放課後に貴博と2人で新聞部の作業をしていて、ふとした拍子で棚にあったテープカッターや鋏が落ちて目を強く打ったんだ。それで気絶して……。
「綾小路先輩、気が付いたんですね」
「……たか…ひろ………」
むくりと身体を起こすと、温かく小さな掌が額に触れる。
目の辺りには、包帯だと思わしき布の感触がした。
「このまま目を覚まさないのかと思って心配しましたよ。血も止まって、本当に良かったです」
「…そんなにひどい状態だったのか!?」
そういえば、目の辺りに少し生ぬるい感覚がある。
「すみません、守ってあげられなくて…」
「いいんだよ。さっきのは僕の不注意だから」
そう言った刹那、頬に柔らかい感触がして、チュッと音を立てた。
「……え?」
「自分を責めないでくださいね、綾小路先輩」
背中に腕を回され、胸と胸が密着する。
僕は思わず胸がキュウと締め付けられた。
ゆっくりと掌で尻を撫でられ、思い出したように身体がピクリと動く。
貴博、なんてずるい奴なんだ。
貴博に負けないくらい顔を熱くした僕は、彼の腕の感触に堪らなく愛おしさを感じていた。
そして、お返しに彼の頬にそっとキスをした。
「綾小路先輩、僕が家まで送ってあげましょう」
「…いいのか?」
「だって、目が見えないんでしょう。その状態で1人で帰るなんて無理だと思いますよ。同じ部活仲間ですから、無理せず甘えてください」
「…わかった」
「決まりですね」