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円環魔儀師の冒険譚  作者: MGR
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1章 7.その意味2…

トレットの放った力が顕現する刹那に、闘儀場内にいた皆の身体全体がふわりと逆立った。


そして光の針が枝葉を広げながら半球を包み、中央に向かって収束していき、迅雷となりカラード師が立っていた場所へと叩きつけられた。



トレットは世界の力(トーラス・オリジン)を”いかづち”に変えた!


その圧倒的な力と速さに本闘儀の見届役である上位の魔儀師達ですらも度肝を抜かれた。



これが、伝説の始祖魔技師なのかと…。



そして、雷光が灼いた眩惑に耐えながら注視すると、先程闘儀場に向かって落下した筈のトレットが錐揉み水平飛行で、辛くも岩の礫を回避していた。



「ふふ、思ったよりやりますね。落ちてくるところを狙い撃ちにした筈だったのですが、思ったより自信過剰ではなさそうで安心致しました。」





そこには初手で絶命クラスの魔技を浴びた筈のカラード師が悠然と立っていた。

トレットの魔技を無効化しただけでは無く、反撃まで行うという完全に後の先をとった形で…。


そして、話をしている間にも還元術を行い、身に付けている玉へと力を戻していた。




「……完璧に読まれてたのか、いや…誘導されたって所だな。良かったよ、左手で風の印契を結んでおいて…実は、起きたばっかりで体術は少々不安だったんだ。」


四肢を弛緩させ、軽くその場で跳ねながら自身の身体が何処まで使えるのかを計りつつ、トレットはそう返した。



「復活後の初戦で両手同時に印を結べるとは…誠に恐れ入りました、それでこそ戦い甲斐があるというものです。」


トレットの力を侮っていた訳では決して無いが、初手から予想外の技で返されカラードの瞳には焔が灯った。



「よく言うぜ、あんたは防御からの攻撃を1度の印でこなしちまってたじゃねーか!」


「いえいえ、大した事はございません。同系統の儀式ならば防御と攻撃は表裏一体ですので。」


そう言うとカラード師は左右の手で同じ印を切りながら、トレットに向けて風の力を解き放った。




「ありゃー、厄介だな。中心から広範囲に風を放たれると近づけやしねぇ……。が、いけるかな?」


トレットは何かを思いついた様に、右手で刀印を作り、印契を結んだ。



そして、そのまま風の力の中へと突っ込んだ。



「「「………はぁ?!」」」


カラード師だけではなく、周りで見ていたものすら驚きの声をあげた。


トレットが風に突っ込んだ事に対してでは無い。


突っ込んだ筈なのに、吹き飛ばされない事に対してだった。



「っしゃ!イケる!」


闘儀場の床を踏み砕きながら、そのまま走っていくトレット。


カラード師が驚きで動きが止まっている隙に、間合いを詰めてそのまま殴り掛かった。



彼の左拳は爆炎を纏っていた。


カラード師は立て直せないまま、2択を迫られた。


そのまま攻撃を喰らえば、大打撃。

拳を防御すれば爆炎に焼かれ、黒焦げ。




「…くっ!そんな手が…!」


一瞬の逡巡の後、右手を振り払った。




次の瞬間、トレットは弾け飛び元いた所よりも奥に吹き飛ばされていた。



「…ってぇ!……って、そこまでじゃねぇな?…あぁ、重の力が軽減してくれたのか。」



トレットは自分が受けた力の大きさの割に、受けた痛みが少ない事について分析し、自分が”何を”されたのか思い至った。


「あーあー、絶対に通ったと思ったんだが、流石にやるねぇ、カラードさんは。」


そう屈託無く笑い、カラード師の種を明かした。



「今の攻撃を右手で払う時に、刀印を解いて風の防護印に変えていなしたんでしょ?そして、すかさず体を入れ替えて左手で準備していた水の印を放った。」



どうだと言わんばかりのトレットに対して、カラード師は肩で息をしながら、苦笑した。

すかさず、還元術を使い玉に力を戻す事を怠らない。



「ふぅ、いやはや何とも天晴れですね。正直タイミングが一瞬遅れたら、戦闘不能で私の負けでした。


しかし…最後の水の印は破級を放ったというのに、ほぼ無傷とは…。


風の印に突っ込んできた時の力は、やはり重でしたか。本当に受けずに良かったです。


左手の水の印で相殺していたとしても、重の力で潰されていましたね…。

よくよく細い糸を手繰り寄せて、という所でしょうか。」


カラード師の表情から余裕が消え、嫌な汗で濡れていた。



「さてと、少し間合いもある事だし、こっちから……って!マジか!」


トレットは一拍休み、印契を結ぼうとした刹那、強大な豪炎がトレット目掛けて飛んできた。


避ける際に結びかけた印契を力として開放し、防御印の代わりとした。


一瞬前までいた場所が豪炎に焼かれた。間一髪で横転し回避を行ったが、トレットの右半身は炎に晒され低度の火傷を負った。


力を属性に変化させず、そのまま開放した為通常の威力より半減してしまい、炎を相殺しきれなかったのだ。






「おやおや、その低度の怪我ですか…?今のは滅級の豪炎だったのですが…?」


カラード師は納得のいかない表情でトレットを眺めた。




周りは師の本気に度肝を抜かれていた、今の術が滅級の力であったからだ。


本来であれば通常使う許可の下りない禁級を除き、滅級は最高位の術に位置する。



それをおしゃべりしている時間があったとは言え、あんな短時間で発動など出来ない。


「ちょっと待て、今のは何だ?印契を結べる俺よりも早く、あの威力とか…どうなってんだ!?」



トレットは苛立ちながら、カラード師へ質問を浴びせた。


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