19、八兵衛、丸腰で出張る。
城門をくぐってと中川様とご先祖様の屋敷に向かう。
中川様が一緒だったせいか、すぐにご先祖様に会うことができた。
さっきまでの事件の流れを話すとお二人はすぐに飲み込んでくれた。
態度から推察するにこの件は既に承知のことらしい。
「遂に尻尾を顕したか」
「そのようでございます」
「小隼人、今までの目配りご苦労であった」
「では一味の隠れ家が見つかり次第ということで……」
「うむ」
中川様に連れられてあたしは早道御役の隠れ家に戻った。
戻ってみると、家の中では早道御役の人達が忍び装束を取り出して戦支度をしている最中だった。
そこかしこから金物同士の当たる、カチャカチャという音鳴りがしていた。
そんなところへ晶さんに「蘭」と呼ばれていたくノ一が帰ってきて中川様に耳打ちをする。
「八兵衛、晶がお主も来るように。と言っている」
思わず、武器などを物色しようと目を走らすあたしに中川様が付け加えた。
「ああ、まて。晶によればお主は平服でかまわぬ。刀なども不要とのことだ」
晶さんが考えていることの意味がわからなくてあたしは気が抜けた。
しばらくの間、戦支度は続いた。
支度を終えた者達が軽く身体を動かして装備の具合を確認している。
ストレッチのようなことをしている人もいた。
みんな金髪碧眼に白い肌のダークエルフだった。発達した額の下では落ち窪んだ青い目がぎらぎらと光っている。
交代で軽い食事を摂っては黙想して禅にふける。
全員が支度を終えるとそこには静寂だけが在った。
あたしも心裡に浮かんでくる、緊張や恐怖、死を身近に感じての、震えるような、痺れるような奇妙な高揚感を鎮めるために目を瞑る。
静寂が破られた。
半蔵さんが飛び込んでくる。
「お嬢よりのお指図を申し上げます――
一味の隠れ家を確かめた。
亥の刻前に踏み込むとのことです。
それから雨が降りそうなので菅笠と蓑を頼むと」
準備運動を終えて全員がすぐに菅笠と蓑を身に着ける。
「指図は晶に任せてある。行ってこい」
中川様の号令の下、あたし達は半蔵さんを先頭に飛び出した。




