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廃棄世界物語  作者: 猫弾正
ハンター日誌 すりんぐ編 B面
54/117

28 ほら吹き侯爵の冒険

「思ったよりも、時間が掛かりましたね」

 行商人ギルドのオフィスから出たアーネイが、借用書を折りたたんで腰のポーチへと仕舞んでいる。その傍らで、主君ギーネ・アルテミスが何処か力なく寄りかかってきていた。

「……お腹が空きました」

 胃を小さく鳴らしながら、亡命貴族が保護者兼家臣を見上げてくる。

「……さっきサンドイッチを食べたばかりではありませんか」

「ギーネさんの高貴なる胃袋にとって、あんなサンドイッチ。食べたうちに入りませんぞ!」

 何故か、偉そうな主君の物言いにアーネイはため息を洩らした。

「放っておけば三食納豆で済ませる胃袋の癖、何が高貴ですか。

 で……何を食べたいんです?」

「折角ですし、ラーメンが食べたいです。ラーメン!」

「ああ、ラーメンね」

 最近、行きつけのラーメン屋が出来たばかりであった。


「ですがその前に、戦利品だけでも換金しておきましょう」

 アーネイは、肩掛け鞄に入っているアメーバの細胞をとんとんと掌で叩いた。

「……ギルドまで行くのは面倒くさいのだ。明日にしちゃいましょうよ」

 主君の横着を視線で咎めつつ、アーネイは仕方なしに肯いた。

「では、お使いしてきますので、その辺で適当に暇を潰しておいて下さいな」

 ふうん。と肯いたギーネ・アルテミス。

 振り返ると『煙草屋』『服屋』の二人へと視線を向けた。

「ところで一緒に夕食に行きませんか?」

「お、デートの誘いが来たぞ。もてる男は辛いぜ!」

 鼻息も荒い『服屋』に呆れた視線が注がれる。

「こやつめ。何ゆえ根拠もない自信に満ちているのだ?」

 傍若無人なギーネに言わしめるのだから、『服屋』も相当なものだった。


「……そうだな。折角、知り合ったんだ。親交を深めるのも悪くない」

『煙草屋』が肯いた時、折悪しく戻ってきたジャネットが横合いから声を掛けてきた。

「二人とも。大旦那が話があるってさ」

「ああ、畜生。あの爺さん。自分がモテないからって他人の好機を邪魔する気か」

 天を仰いで罵る『服屋』。『煙草屋』は苦笑を浮かべつつ、別れの挨拶をした。

「ではな。そのうちご馳走させてくれ」

 ギーネとアーネイも、それが帝国流の挨拶なのか。

 軽く手を振ってから別れを告げてくる。

「それでは、御機嫌よう」

「では、また、いずれ」

 二人を見送ってから、『煙草屋』は何とはなしに天井を見上げた。


 ギーネ・アルテミスとアーネイ・フェリクスは、確かに腕利きのハンターであった。

 熟練した技能と卓越した判断力を兼ね備えているのを『煙草屋』は、直接、その目で見て確かめている。本人が言うようなA級への到達は流石に難しいとしても、一流であるC級、或いは英雄とされるB級に成れても不思議ではないと見ていた。


 そもそもA級は『遺産』と呼ばれる高性能の特殊装備を高度に使いこなすごく一握りの凄腕か、さもなければ複数の戦車、自走砲を抱えたチームだけが冠する称号であって、滅多に個人が成れるものではない。

 B級やC級も、基本的には小隊や中隊単位。時に大隊、連隊規模のクランの為に用意された称号と見做されている。

 しかし、それでも時折、極稀にだがワンマンアーミーでC級やB級への狭き門を突破する凄腕が現れることもある。

「いけるんじゃないかな……見てみたいもんだぜ」

 低く呟いている『煙草屋』に、『服屋』が胡散臭そうな目を向ける。

「なにをニヒルに笑ってるんだよ?むっつりスケベなのか?」

「なんでもないさ」


「連れて来ました」

 ジャネットに連れられてギルド長の会合に使われる部屋に案内されると、其処には白い髭を垂らした前ギルド長の老人が佇んでいた。

 机の前の地図を前にして、苛立たしさを含んだ眼差しで窓の外を眺めていた。

「……ご苦労」

 ジャネットに肯いてからも、暫くの間は窓の外を険しい眼差しで睨みつけている。

「なんだい。爺さん」

「俺っちは、忙しいんだぜ」

『煙草屋』と『服屋』が交互に喋っている。

「ハンターへの礼金を稼がないとならないのさ」

「その件、わしが立て替えてもいい」

 老人が咳払いして意外な一言を告げた。


 即答する『煙草屋』

「結構だ。幸い、向こうは無利子で待ってくれると話がついてる。

 利子つきに立て替えたり、首輪をつけられても詰まらんしな」

「……可愛くない小僧共だ。折角、人が心配してやったものを。

 碌でもない相手に債務を転売されたら、どうするんじゃ?」

 顔を顰めている老人に『服屋』は、へらへらとした締まりのない笑顔を向けている。

「大丈夫だって」

「なぜ、会ったばかりでそこまで信用できる。

 自分だけは大丈夫だと、どいつもこいつも、美人と見ると脇が甘くなる」


 老人を睨みながら『服屋』が唸り声を上げた

「……そうか。それが理由か。さっきの二人。

 美人だから会いたくて債務の肩代わりとか言い出したんだな」

 邪推された怒りか、図星を指された恥ずかしさかは分からないが、老人が顔を真っ赤にして怒鳴った。

「かっー!下種の勘繰りも甚だしいわ!」

「図星だったみたいだぜ」

 にやにやしている『服屋』

『煙草屋』は、付き合い切れないと肩を竦めた。

「年寄りをあまりからかうな。で、爺さん。俺たちも忙しい。用件がそれだけなら……」

 踵を返して今にも立ち去りそうな『煙草屋』の背中に、老人が慌てて本題を切り出した。

「待て待て待て。それはついでの話じゃな。

 廃墟を突っ切ってきたお前たちから、詳しい話を聞きたい。

 特に人喰いアメーバと遭遇した際の状況についてな」

 顔を合わせた『煙草屋』と『服屋』は、いずれも渋面を浮かべていた。

 他人に話す必要性は理解しているが、二人にとっても愉快な思い出ではなかったからだ。


「……高速のドライブインが使えなくなったか」

 地図に×印と日付をつけながら、老人はため息を洩らした。

「ああ、ケン爺さんの亡骸もこの目で確認した」

『煙草屋』の言葉に肯いた『服屋』は、机上の地図に視線を注いだ。

 地図に書き込まれた×印はかなりの数に昇っており、いずれも町の東から南にかけて分布している。

 地図を眺めた爺さんは、愉快そうには見えない面持ちで吐き捨てた。

「参った。このままだと交易が断絶しちまうわ」

 町で生産できない物品。特に南東の地区から、行商人頼りで細々と持ち込まれている一部の嗜好品は、すでに値上がりの兆候を見せつつある。

 街道の断絶は、商人たちにとって他人事ではない。高騰した在庫を売りさばいて一時的に儲かろうとも、扱う品種の仕入れが途絶えれば命取りともなりかねない。


 勿論『町』は、かなり大きな居留地である。

 四方に抱えるルートのうち一つを遮断されたとて、即座に干上がったりはしない。

 東や、南からの経路ルートに限っても複数存在しているが、しかし、それでも此れまでは使えた安全な道が一つ潰れると影響は意外と大きい。

 迂回すれば、当然に経費も上がるし、なにより訪れる行商人や供給自体が減少する。


「煙草は、かなり値が上がってきておる。

 もう少し待てばカートンで60。状態や物によっては80まで上がるじゃろ」

 老人の口にした価格は、『煙草屋』にとっては眉唾物だった。

「そこまで値が上がるかね?」

 有力な販路を持たない行商人からすると、常であれば30から40クレジットで売れれば恩の字であった。

 どこか懐疑的な『煙草屋』に、老人は力ない笑みを返した。

「30年前に大規模なバンデットの集団が貿易路を荒らしまわった時な。

 煙草一本が12クレジットで売れたぞ」

 ティアマット世界における『紙幣』というものは、基本的に平時の『通貨』であった。

 金本位制や石油本位制の紙幣は別としても、変動相場制における『紙幣』の信用とは、つまるところ、発行している国家への信頼が担保されているものだ。

 ティアマットにおいては、『通貨』を発行している共同体や民間組織への信頼の低さと、日常への回帰すら覚束ない民心の荒廃が、各種紙幣の信頼をどん底まで低いものに位置づけていた。


 誰が悪い訳ではない。強いて言えば、ティアマットの大崩壊とその後、政府が全く機能しない最中に、業火と略奪の日々の中、個々人が生き残る為に産み落とされた崩壊世界の文化が、狼の如き人々を作り出した。崩壊した世界で生きる為の私人レベルでの用心深さと貪欲さは、社会を構築すべき要素としての個人とは、全く相反する資質だったからだ。


 結果、日常においては使用することが出来ても、危機的状況においては通貨の購買力は激減してしまう。

 危急の際には、幾らクレジットを積もうとも、食料品が手に入らないという事態さえ起こりえる。


 もっとも、今回は、そこまで危険な状況には陥らないと行商人たちは踏んでいた。

 仮に街道が封鎖されたとしても、相手はたかが人喰いアメーバ。

 町の討伐隊が幾らか忙しくなるだけで、街道の断絶はまず有り得ない。

 治安部隊やハンターが総出で掛かれば、掃討にも時間は掛からないだろう。


 仮にギーネの推測どおり、より巨大な群れが近隣に存在しており、新手が際限なく湧いて出るとしても、『町』にとっては脅威足りえない。

 精々、警備隊やハンターの仕事と弾の消耗が増えるだけだ。

 勿論、往来する旅人の数は減るだろう。

 警備隊のコストも上がり、行商人が減れば『町』は物資不足と不景気に陥り、税金とて上がる。

 或いは、『町』が護衛つきキャラバンを送り出すのも手だが、盗賊に狙われるかも知れず、人数を増やせば経費も掛かる。

 物産の余剰に限りのある東海岸では、望みどおりの品を仕入れられるとは限らない。


『煙草屋』はどうにも気が乗らなかった。

 旅商人からすれば、品薄の状態が続くのは稼げる好機に違いないが、しかし同時に平均的なティアマット人であれば、薬や食料が届かなかったり、足らないで身内をなくした経験は誰しも持っているのだ。

「喜んでおけ。喜んでおけ」

 無責任に相棒をはやし立てる『服屋』。

「もし、他人の不幸が気になるなら……」

「おう、薬や粉ミルクも仕入れておくさ」

 肯いている相棒を見た『服屋』は、翻って自分の心配をすることにした。

「それにしても……ヌイグルミは売れるかなあ」

「買う余裕のある奴なんかおるかのう?」

 老人のからかうような言葉に、壁に寄りかかっているジャネットが楽しげに相槌を打った。

「三ヵ月後には、あんた、債務奴隷落ちね。ぷっく……かわいそうに」

 吹き出すのを噛み殺しきれない女用心棒を睨みつけて『服屋』はその狙いを喝破した。

「笑ってるんじゃねえよ。さては、奴隷堕ちした俺を買い取って性の玩具にする気だな?

 どんなHな誘惑をされても、俺は屈しないぞ!」

「死ね」




「哀れな旅人たちが救いを求めて叫びを上げます。殺到してくる巨大蟻の軍団。

 しかし、そこで英雄であるところのギーネさんが颯爽と登場!

 我が鉄拳が唸りをあげますぞ。蟻どもを千切っては投げ、千切っては投げ!

 次に死にたい奴、前に出ろ。わたくしの武威に怯んだアリたちが怯えも露に後退り……」

「うそくせー。マジで嘘くせー」

 空き地の土管の上に乗って、身振り手振りを交えながら、近所の子供たち相手に武勇伝を語っていたギーネ・アルテミスだが、聴衆から無粋な野次が飛んできた。

「こら、口を挟むものではありません」

 亡命貴族が嗜めるも、子供たちは顔を見合わせつつ、野次は治まらない。

「だって、嘘くせーよ。なあ」

「うん」

 近隣の商人や労働者たち、所謂、庶民層の子供たちであった。

 裕福な市民階級の子弟のように学校教育を受ける訳ではないが、自由民や放浪民の子供のように虫や小動物を取って家計の足しにしたり、家業の手伝いをしなければならないほど切羽詰っている訳でもない。

 町の壁の外には(時には内側にも)人喰いの危険な怪物が出没する為、迂闊に出歩くことも出来ず、適度に暇を持て余している子供たちにとっては、ギーネの冒険譚は格好の余興になっていた。


「ぬぬぬ。高貴なるギーネさんの話の腰を折るとは……帝國でしたら不敬罪でけつバットの刑に処すところなのだ」

 恐怖政治の片鱗を見せるギーネ・アルテミスだが、子供たちの疑問は納まらなかった。

「人間が巨大蟻に素手で勝てる訳ねーじゃん。そこはせめてバットを使えよー」

「そうだよ。

 アント・ウォーリアなんて、ごっついおっさんでも腕とか食い千切られんだぞー」

「ねーちゃんが、もっとでっかいなら兎も角さー。細いじゃん」

「ねーちゃん、法螺も吹きすぎだぞー」

 口々に突っ込みを入れてくる聴衆たち。

 片手を腰に当てながら、ギーネは顔の前で指を振った。

「失敬な。北欧神拳を極めたものは、肉体が鋼鉄と化すのですぞ」

「北欧神拳なんて聞いたことねえぞー」

「どこかで聞いた名前に似てるな」

「パチもんだ。パチもん」


「仕方がありませんね。田舎者共にも分かりやすく説明してやりましょう」

 そこはかとなく無礼な言葉を吐きつつ、ギーネが己の武術について説明を開始した。

「そもそも、北欧神拳の由来は、日本は戦国時代から伝わる忍者たちの体術!」

「おおー」

「……から、それを分析した特殊部隊の軍用格闘技」

「おお?」

「……の流れを汲む由緒正しい武術なのだ!」

「おう。嘘はついてないな」


 子供たちの疑わしげな眼差しに嘆息したギーネ・アルテミス。

「仕方がない。疑い深い民衆よ。我が偉大なる勝利の証を見せてやろう!」

 ごそごそとポシェットを探って、亡命貴族は何かを取り出そうとする。

「見るがよい!そして謹聴せよ!これがダーク兵隊蟻デスキング将軍からもぎ取った戦利品の触覚ですぞ!」

「兵隊蟻なのに、キングなのか、将軍なのか。どっちなんだよ」

「ふつうの蟻の触覚と区別がつかないぞー!」

「ちょっと大きいかな?」

「そこらに落ちてるの拾ってきたんだろー」

「よく見せろよー」

 そう口々に言いつつ、ギーネが手にした巨大な触角に触ろうとする子供たちだが、亡命貴族はさっと戦利品を引っ込めた。

「ふふん、駄目駄目。触れさせません。ティアマットにおける危険な冒険と偉大なる勝利の記念品ですのだ。将来は、帝國博物館に飾られる予定ですぞ」


 ちなみに件の帝國国立博物館であるが、頭のおかしい大貴族……もとい、勇敢な冒険家や旅行者たちが探検の度にどうでもいい記念品を持ち帰っては寄付するので、年々、増殖する意味不明のガラクタが文字通りの山をなしている。


 毎年の維持管理費だけでも莫大な予算が計上され、博物館としてはいっそ始末してしまいたいのだが、何処から入手したものか。ホビットの洞窟如く、ゴミの山に時々、本物の古代文明の遺産や未知の技術の産物が眠っていたり、新たな鉱物や植物のサンプルが発見されることも侭あるので、博物館としても一々解析しては鑑定書を発行するまで、保管せざるを得ない。


 一度など焼却寸前で惑星破壊爆弾が見つかったこともあった。世に言う帝國危機一髪事件である。

 他にも古い電子頭脳をオークションで払い下げたら、実は古代文明の銀河系シミュレーターだと分かって慌てて追跡する羽目に陥ったり、小型の異界転移装置とは知らずに中庭に発生したブラックホールもどきをゴミ捨て場にしていたら、怒り狂った異世界の軍隊が攻め込んできて建国以来最大の危機を迎えたりもした。


 騒動の七割がアテナ、もしくはアルテミスの名を冠する一族が原因だったりしたが、現在は厳正な手続きと鑑定の元、収納品は等級付けられ、正体不明の物体は特に厳重に保管されているので多分、もう、騒動が起きることはないと思われる。


「よく見せろー。偽物かも知れないだろー」

 疑い深い子供の野次に応えつつ、土管の上からさっと飛び降りたギーネだが、彼方の街路をアーネイが近寄ってくるのに気づくと、話を打ち切ることにした。

「見せてやってもよいが、時間が来たのだ。

 家来が呼んでいます。では、さらばですのだ」

「ケチー」立ち去るギーネの背中に不当な非難が浴びせられた。

「ケチではない!」

 厳しく一喝し、しかしふっと優しい瞳になって、ギーネ・アルテミスはこう告げた。

「だが、物を知らぬ子供たちよ。無知ゆえにその罪を許そう。

 お前たちも将来、ハンターを目指すのであれば、慎重さと果断さを兼ね備えた私のような探検家を見習うのも一つの道であるぞ」



 亡命貴族の冒険譚も終わりを告げ、解散した子供たち。帰り道では、口々に今日の話について語り合っていた。

「今日も面白かったなー」

「だけど、落ちがマンネリじゃね?」

「ピンチのところで毎回、アーネイが助けに来るのな。どんだけ万能なんだろ」

「そこがリアリティを損なってる。四十点」

「辛口だな」

「本当に兵隊蟻を素手で倒したのかな?」

「嘘に決まってんだろ」

「人喰いアメーバを十匹以上狩ったとかいった時も、証拠だって言いながら、そこら辺の土産物屋で売ってる細胞の干物を自慢げに取り出すんだぜ」

「いや、アメーバは本当らしいよ。知ってるハンターが凄腕だって褒めてたし」

「話も面白い」

「浚われた女の子を助けに異民族の城に乗り込んで、王様と一騎打ちした話も良かった」

「アスガルドの話だと、先史文明の遺産である超兵器を求めて、砂漠地帯にあるピラミッド遺跡を探検する話が面白かった」

「遺産を巡って『機関』の能力者デスシャウトや『財団』のエージェント、ニードルジェットと戦う話?」

「そう、手に入れた一万年前の石版を解読したら、最近の若者はけしからんって老人の愚痴が書いてあった奴」

「あれ、落ちを聞いてないんだよ。最後に遺跡が大爆発した後、どうなったの?

 爆発して、なんで生きてるんだよ」

「神々が守護したもう帝國貴族がその程度の爆発で傷を負う筈もない。瓦礫に埋まってるところをアーネイが回収しに着てくれて、半年入院しただけで治りましたって本人が言ってた」

「大怪我してるじゃねえか」

「姉ちゃん。次は何時来るのかなー」

 ほら吹きと思われつつも、結構、慕われているらしい。

 辛口に批評している子供たちも、ギーネの語る次の冒険譚を待ち侘びているようで、口々に笑いながら、家への帰り道を駆け抜けていった。



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