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廃棄世界物語  作者: 猫弾正
☆ティアマット1年目 その1 ギーネ ティアマットの地に降り立つですぞ
1/117

ACT 01 むしむし大行進 

「突然ですが、お嬢さま。我々は無一文になってしまいました」

 どこか虚脱したような表情で、家臣である赤毛のアーネイがそう言った。

 帝國からの亡命貴族であるギーネ・アルテミスは、虚ろな眼差しをして従者の傍らでただ呆然と佇んでいる。

 ギーネが強張った表情を向けている視線の彼方では、地響きを立てて山が動いていた。

 いや、太陽を遮って漆黒の影を大地に投げかけているそれ。惑星ティアマットの大地を揺るがして移動している鉄錆色のそれは山ではなかった。

 山脈に匹敵する質量を持つまでに成長した、驚くほどに巨大な蟲だった。全身が装甲に覆われたその蟲が、コンクリートと鉄鋼で造られたやはり途方もなく巨大な複合防壁へと突っ込んでいく。

「あの壁との比率から計算するに、全長は最低でも800メートルと言ったところか。ははっ、嘘みたい」

 虚ろな口調でギーネが呟いた瞬間、鉄錆色の蟲は轟音を響かせて都市防壁へと激突した。

 

 冗談のような速度と質量の巨大蟲の突進を受け止めた強固な複合防壁は、一瞬だけは持ち堪えたように見えたが、次の瞬間には嫌な感じで全体が蠕動していた。

 巨大ダムを連想させる都市防壁は、衝撃を受けた中心点から複数の亀裂をコンクリートに走らせながら、冗談みたいに大きくたわんでいく。

 と、粘土のようにぐにゃりと歪んだ次の瞬間、猛烈な砂煙と共に其の侭あっさりと食い破られた。

 大気を焼いて眩く輝くプラズマキャノンやレーザー砲、雨霰と降りそそぐレールキャノンや多段式の炸裂弾頭を物ともせずに怪獣蟲は都市中核に位置する統合センタービルへと突っ込んでいく。

 

「ペジテが……センタードームが食い破られるなんて……」

「軍の執政府ですよ、この状況で冗談を口に出来る度胸に感心しますね」

 八百階。高さにして二キロを優に越える北方統合府の執政府ビルと中央を守るようにして配置されている周囲の八棟の尖塔は、まるで途中から融合したかのような特異な形をしていた。

 蟲の衝突する寸前、ビルの周囲の尖塔が青白い輝きを発した。

 発動した強力な防御磁場が蟲の質量と衝突して、天を焼くような閃光が彼方を白光で満たした。

 オゾンの焼ける強烈な臭気が都市防壁から遠く離れた二人の位置まで匂って来たようにも思えた。

 大気を震動させる凄まじい轟音に鼓膜の痛みを覚えて、耳を塞ぎながら二人は身を伏せた。

 見た目とは裏腹に豪胆な性格をしているはずのアーネイさえも、片目を閉じたまま恐怖に小さく喘ぎを洩らしていた。

 

「おお、大昔の東宝の怪獣映画みたいです。ハデス将軍も死んでしまったでしょうか?」

 アーネイと同じく耳を塞いでいたギーネが叫んだ名前は、今朝に見たテレビで演説していた軍人だった。

「さあ!?昨日のテレビ番組では、蟲を駆逐して人の世界を取り戻す云々とか元気に弁舌を振るっていましたが!それで蟲が怒ったんですかね!」

 都市の支配者である軍人はギリシア神話の冥界の神の名を冠していたが、ギーネ・アルテミスとは別に縁も所縁もない。

 帝國の門閥貴族と同じで、地球系の祖先が格好いいからとオリュンポスの神々の名を冠してみただけなのだろう。

 崩壊しつつある北方統合府を目の当たりにしながら、厨二病患者は何時の世界も絶えないものだと、アーネイは他人事のように考えていた。

 

 立ち上がった砂煙がやや収まると、巨城を思わせていた統合府のシルエットは中央を喰い破られていたものの、構造体自体は持ち堪えていた。

 怪獣みたいな蟲も巨体を統合府に食い込ませたまま動かなくなっていたが、遠望にも怪獣蟲がぶち破った防壁の割れ目から、一番槍よりは小型の蟲の群れがうぞうぞと都市へなだれ込んでいく光景が見えた。

 実際には蟲の群れは視界の八割を埋め尽くしており、上空や地表を真っ黒に染め上げていた。

 小型といっても、それは怪獣と比してである。小さい物でも軽乗用車や牛ほどもある。

 大きいものは体高だけでも十階建てのビル並みだ。そんな巨大な蟲が道路のみならず、建物にまでびっしりと群がっている光景は、見る者に生理的嫌悪感を催させた。

 

 耳を覆っていた手を下ろすと、ギーネはアーネイに訊ねる。

「我々の荷物は?」

「ホテルの貸金庫に」

「預金は?」

「現地銀行から、本日をもって営業終了のお知らせのメールがたった今」

 アーネイが携帯式小型端末をプラプラさせた。ギーネも手持ちの端末を開ける。途端に、銀行員の絶叫が聞こえてきた。

「みなさまぁああ!マクガイア第一銀行を日頃のご愛顧、感謝いたしまあああ!

 蟲が!なだれ込んできて!残念ながら本日の業務は終了!撃て!撃ちまくれええ!」

 

 しばし固まっていたギーネが、首だけ動かしてアーネイを見つめた。

「無一文?」

「イエス、マイロード」

 アーネイは財布を取り出して逆さに振るが、何も出てこない。

 両替したばかりの都市発行の紙幣を数十枚所持しているも、たった今、目の前でけつを吹くにも使えない紙切れに転落するのを目にしたばかりである。

 一財産のはずが、一瞬で紙切れになってしまった。

 

 ギーネは自分の小銭入れを見た。ゲームセンターのコインに近所のスーパーのクーポン券。成人向けゲーム(百合)のおまけテレカ。帝都アヴァロンの地下鉄回数券などが入っている。

 母国でも二束三文な数々の代物。当然、惑星ティアマットでも無価値である。

 

「いかん。荷物、取りに行かんと」

 よたよたと覚束ない足取りで歩き出したギーネを見て、アーネイは首を傾げた。

「戻る?今から?あの中に?」

 目の前の盆地では、数万とも数百万ともつかぬ蟲たちが防衛線の戦車を食い破っていた。

 小型の蟲も含めたら、億に達するかも知れない。

 まるで漆黒の濁流が明確な意志を持って都市の防壁内に流れ込んでいるようだ。

 音速を超える戦闘機までも、上空で飛行型の蟲を前にあっさりと撃ち落されている。

「逃げ惑う人々も襲っていますよ、あの蟲たち。

 まるで人類に敵意を持っているよう。危険を感じます」

 アーネイは淡々と呟きながら、ギーネの腕を掴んで耳元に囁いた。

「今から取りに戻るのは無謀ですね。ここにいても危うい気がするんですが」

 

「私の考えではあんな生物存在する筈がないから、これは夢だと思うのだ。

 なのでアーネイ。目を覚ましたら、起こしてくれ給へ」

 淡々と呟いたギーネ・アルテミスに、従者のアーネイは強張った笑みを浮かべた。

「安心しました。軽口が叩けるなら大丈夫ですね」

 

「そうだ。私にいい考えがある。虫笛。穏やかな虫笛の音で蟲の昂ぶった気持ちを鎮めるのだ」

 ギーネ・アルテミスが、どこからかオカリナを取り出した。

 ぺっぺぽーと下手糞に吹き出している主人に、アーネイは困惑の瞳を向けた。

 想像を絶する事態を目の前にして、必死に動揺を抑えているのかと思ったけど、精神の限界を突破していたのか。

 どうやらギーネにしてからが、目の前の事態についていけずに衝撃で思考も麻痺しているらしい。

 それとも冗談で場を和ませようとしているのかしらん?

 

「おい、死ぬ気ですか?何時まで現実逃避しているんです」

 アーネイに言われて、ギーネは地面にへたり込んでがっくりと肩を落とした。

「これがティアマット……ちょっと想像以上です。

 引っ越したばかりの町がいきなり滅びようとは……

 甘く見すぎていた。正直、滞在一週間で帰りたくなりました。くじけそう」

 アーネイはギーネの腕を引っ張って立ち上がらせながら、勇気付けた。

「これが日常茶飯事だったらティアマットの人類は滅亡していますよ。

 ガイドブックには、北部統合府は大陸北方で最大の都市と書いて在りましたから。

 こんな事件は滅多にありません。ないんじゃないかな?まあ、ちょっとは覚悟しておけ」

「つまり、これからが本当の地獄だ?」

 

 軽く瞳を細めると、何かを見据えるように蟲の波に飲み込まれる統合府をじっと見つめていたギーネ・アルテミスだが、やがて憂鬱そうに溜息を洩らすと踵を返した。

「行こう。ここもじき腐海に沈む」

「まだそのネタを引っ張りますか」

 斜め後ろを歩きながら、アーネイが突っ込みを入れる。

「ううう、そのうち口からレーザーブレス吐く巨神を量産して、薙ぎ払えって、って感じであの蟲どもを焼き尽くしてやる」

 物騒な事を口走るギーネをアーネイが制止した。

「おい、止めろください。世界が滅亡する」

「しっ、失敬な」

「お嬢さまのうっかり知性を考えると、暴走して世界も焼き尽くしてくれそうな予感がします」

 

 

 

 

「おい、聞いたか?北のほうで蟲共が……」

「……統合府に何かがあったとか」

「まさか……ただの噂だろう」

「陽光を遮るほどの数が……」

 口々に噂話を囁きあっている町の人々を横目に、大通りに蹲ったギーネ・アルテミスは口を半開きにして日光浴していた。

 

 ギーネと連れのアーネイは『ティアマット人入植者の服』を着ている。

 現地人入植者たちに大人気の、動き易さと頑丈さを重視した服である。

 安くて頑丈である為、ティアマットの現地人は、大半がこの服を着込んでいる。

 つまりそこら辺で死んでいるティアマット人も大抵はこの服を着ている。

 東海岸の一帯は乾燥している気候なので、死体は腐りにくい。

 つまり行き倒れの死体から剥いだ服でも、死臭がつかない。素晴らしい。

 これで精気の失せた表情で空を見上げているギーネは、折角の美貌も塵芥で薄汚れ、完全に怠け者の現地人女性にしか見えなかった。

 

「……まるで駄目な女、略してマダオ」

 棒っ切れで泥道にマダ……まで書いてから、首をぶんぶん振ったギーネは慌てて足で地面の文字を消した。

「大丈夫、まだ大丈夫。だって、ほら。まだ十七歳と585日(地球標準時間)だし!若いからやり直し効くし!

 そもそも遺伝子操作したアルトリウス人は不老長寿だから、最低でも寿命が三百年あるんやで!」

 誰に言い聞かせているのだろうか。焦って独りで言い訳しているギーネの傍らでは、赤毛のアーネイがコップに入った泥水を眺めながら、飲むか飲むまいか難しい顔で悩んでいた。

 

 北方統合府の消滅から十日が経っていた。大通りに憔悴した様子でへたり込んでいるギーネとアーネイの二人は、三日三晩を食うや食わずで歩き通して、統合府の境界付近にあった名もない小さな町に命辛々ようやく辿り着いていた。

 疲労困憊して町に入り込んできた見慣れぬ二人の旅行者を気の毒に思ったのか、町外れの食堂の親父が奢ってくれたのが、泥水と変な肉団子である。

 虐めか、虐めなのか?よそ者は出て行けと?

 そう思ったアーネイだが、観察してみれば、食堂にいる連中は同じものを美味そうに食べていた。

 

 三百万人以上もいた筈の統合府の他の住民は、ここには一人も見当たらない。

 まさかとは思うものの、或いは、独りとして逃げられなかったのかも知れない。

 まるで統合府の住民を一人も生かして逃さないとでも言ってるかのように、蟲たちは巨大都市から逃げ出した避難民たちの列に襲い掛かり、苛烈で徹底的な攻撃を加えていた。

 中途の道合では装甲車や歩兵も蟲たちに応戦していたが、兎に角、数が違いすぎて殆ど生きて逃れることも出来なかったようだ。

 何故か蟲に襲われなかったギーネとアーネイだが、避難民の集団に混じっていたら死んでいたに違いない。

 統合府の国境地帯までも、蟲が徘徊していて空中から植物の種子やら卵を散布していた。

 発芽後には生態系が変貌し、数年で人類から蟲へと生存領域が書き換えられるのだろう。

 ティアマットに残った最後の高度文明の残滓がこうも呆気なく消え去るとは、さすがのギーネも全く予想していなかった。

 

「あいつら……高度な知性があるのかな。知性の共有?群体なのか?

 マザーなり、王なりの指令?精神波による操作?鳴き声による指令?

 作戦を決めていたようにしか見えない。

 高度に統制されていたようにも見える……兎に角も私たちには襲ってこなかったが」

 手元の食料を眺めて躊躇しているアーネイの横で、ギーネは気にした様子も無く肉団子をぽりぽり食べながら、泥水で流し込んでいた。

「お嬢さまが好奇心を押さえてくれたのは何よりでした」

「皮肉を言うな。近寄って威嚇された時はさすがにびびったが、やはり攻撃対象を何らかの方法で識別していたのか。

 もう少し近くで観察したかったけど……さすがにな」

 肉団子を最後まで食べ終わったギーネは、指に付いた脂を舐め取りながら、アーネイの手元を指差した。

「それ食べないんだったらわしにくれんか?」

「……この肉が何か気にならないんですか?」

「別に鼠だろうと、大サソリだろうと……」

 言いかけたギーネが突然に口を濁した。

「まさか、猫ではないよね?」

「ティアマットには猫は少ないそうです。野良猫も滅多にいないとか。」

「そうか、良かった。よくないけど。可愛いヌコに会えないのは残念だけど。

 猫を食べるような習慣を持つ蛮族共は死に絶えればいいのだ」

 ホッとしたような残念なような気持ちで言い放ったギーネに、アーネイが首を傾げる。

「それって帝國人が鯨食べると言う理由で、喧嘩吹っかけてきているドミナンテ共和国と同じ理屈では?」

「違う。アルトリウス人は、北欧系とか日系とかの御先祖を含めれば六万年以上も鯨を食べてきたのですよ。

 それをドミナンテのアホ共が脂取るために後先考えずにいきなり乱獲しだして、絶滅寸前になって慌てて鯨保護すべきだって自主制作ルール押し付けてきて。

 鯨は人類の友だち?絶滅させかけたのは奴らですよ。

 こっちは元から何千年もバランス考えて獲っていたのです」

 ギーネ・アルテミスはツンと首をそらして、傲然と言い切った。

「いきなり乱獲し始めておきながら、絶滅寸前になった途端、我らに汚名を被せて鯨の友だち面とか、やり口が卑劣です!

 まあ、歴史もない僻地の田舎者ですから、仕方ないといえば仕方ないですが。

 いずれにせよ、反乱軍とその飼い主であるリガルテ共和国を片付けたら、その次は奴らの番です。

 ふふふ、その時になって帝國軍の恐ろしさを思い知っても、もはや手遅れです。

 精々、恐れおののくがよい!田舎者共よ!あっーはっははは」

 帝國軍以前に無一文の状態でなぜ、こんなに強気なのだろうか?

 ギーネの暴論にアーネイは肩を竦めた。相変わらず偏見が酷い人だ。まあ、アルトリウス人では珍しくもない。

 なにしろ散策中に外国人旅行者に出会った時『アルトリウスにようこそ、田舎者』とか『おお、珍しい。田舎者だ。何処の田舎からやってきたのだね?』とか平気で挨拶する国民性だからな。うちの国。

「アーネイの、両方に責任が在るみたいな言い方するところは嫌いです。

 片方が一方的に言い掛かりつけておきながら第三者の判定で喧嘩両成敗にされたら、因縁つけられた方はたまらないですよ。

 特に相手が悪意に満ちていて、敢えて相対化を狙ってなし崩しにしようとしていた場合とか」

「そう言われたら、まあ確かに……しかし、そんな理由で戦争になったら、我らもティアマットをそう笑えない気がします」

「資源は常に戦争の理由足りえます。それに、まあ、悪感情と言うのは蓄積するからね。地球時代にも似たような話が有ったりして」

 ギーネの適当な言い草に力なく笑ったアーネイも、おずおずと肉饅頭を口に含んだ。

「ふむ、思ったよりはいけるか」

 肉団子は歯応えがあり、塩気が効いていて美味しかった。何より温かい食べ物は久しぶりだった。

 アーネイが完食した頃に、頑丈そうな布袋を抱えた子供が埃っぽい道を駆け抜けて食堂へと飛び込んできた。

 

「おっちゃん!おっちゃん!虫を捕まえた!買い取ってくれよ!」

 少年の差し出した袋を覗き込んだ食堂の親父が、笑顔を浮かべた。

「ほう、イキがいいな。いい肉が取れそうだ。

 肉団子にするか?それともリングにするか?」

 リングとは、ティアマットの中央銀行が発行している惑星貨幣である。

 中心に穴の開いた環型の硬貨で、ティアマット特有の金属で作られている。

 少額貨幣だが、金属自体に価値があり、ティアマットのほぼ全土で流通しているので旅行者でも両替する人間は多い。

 所持していれば、そこら辺の村や農園、キャラバンでも気軽に物産や食料と引き換えることが出来るのだ。

 

「半分は肉団子にしてくれよ!」

 少年の返答にギーネが眉根を寄せた。

「むむ。なんだが、いやな予感がしてきたぞ」

 食べた後では、予感がしても手遅れである。袋に手を突っ込んだ親父が取り出したのは、緑色に輝く不気味で巨大な節足動物の死体だった。

「……甲殻類?……節足動物?……蟹?……フナムシ?……肉団子の材料?」

 ギーネの顔が青ざめる。逆にアーネイは平気な顔をしていた。

 実は、赤毛の家臣の予想の範囲内であった。

「節足動物は、次元世界の各地で食用や薬用として利用されていますよ」

 それから帝国公用語に切り替えて、言葉を続けた。

『吐いたら拙いですよ。不特定多数の現地人に不快感を与えます。それは分かりますね』

『今の状況でそれは拙いな、わたしの反応が注目を集めたみたいだし』

 数人の食堂の客が、変なものでも見るかのような視線をギーネに集中させていた。

『まあ、どうしても我慢できないようなら……お嬢さま?』

 蒼い顔をして震えていたギーネが、脂汗を浮かべつつ引き攣ったような笑顔を浮かべた。

「ふっ、ふふっ……これが、ティアマットか」

「大丈夫ですか?」

 アーネイは主人の顔を覗き込んだ。

「大丈夫。精神にちょっと致命傷を受けただけです。全然、大したことないぜ」

 涙目でギーネ・アルテミスは微笑んだ。


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