18オオイヌとしょうねん
オオイヌのこどもと、ある病気の少年のものがたりです。
こどものオオイヌが迷い込んだ屋敷には、病気の少年と、そのお母さんがおりました。お母さんは目が見えず、家で織物を作って生計を立てていました。少年は外へ出てお母さんの手伝いがしたかったのですが、すぐに咳が出るのでとめられていました。
少年はオオイヌのこどものけがを手当してやります。お母さんも手伝ってやりました。そのお礼にとオオイヌの持ってくる果物で、少年は少しずつ元気になりました。
お母さんには、頭のいい犬が遊びにくるのだと伝えていました。お母さんは、これがただの犬ではないとわかっていましたが、よくしてやりました。
ある日、少年はオオイヌに名前をつけてやります。オオイヌはたいそう喜んで、そしてこれから何があっても、少年とお母さんを助けてあげようと誓うのです。
ある日、オオイヌは村の人に見つかってしまいます。少年はオオイヌを庇いますが、村の大人たちは、危険な生き物だと強く叱り、大人たちに追われたオオイヌは、姿を隠してしまいました。
それからいくつか季節が移り変わり、ある冬の始まりのこと。
急にお母さんが寝込んでしまいます。働きすぎだろうとお医者様は言いました。少年はお母さんの言いつけ通り、オオイヌの残してくれた果物を干したものを大事に少しずつ食べていたので、今ではすっかり元気になっていました。お母さんにもあげていましたが、いっこうによくなりません。
少年はお母さんの仕事を代わりにやりました。織物はできませんでしたが、村の仕事を手伝って食べ物を分けてもらったり、森に行っては食べられる木の実やとってきたりしました。
一生懸命看病しましたが、お母さんの具合は悪くなるばかり、お医者様も首をひねります。
もう干したあの果物もありません。
森に出かけた少年は、一人で泣きました。オオイヌを追い払ったバチが当たったような気がして、何度も大声で謝りました。
その翌日でした。
家の前に、みずみずしい果物がおいてあるのです。早速切ってお母さんに食べさせると、顔色がよくなり、言葉が話せるようになりました。
お母さんは、オオイヌに感謝していました。
それから毎日、運ばれてくる果物を食べさせると、お母さんは起き上がって話せるようになりました。少年は喜んで、夜オオイヌを待ち伏せます。
現れたオオイヌは、少年に気づくと、逃げるように去っていきました。
お母さんはまたしだいに弱っていきました。果物を口の前に持って行ってやっても、ホンの少ししか口をつけません。
お医者様は、最後にお母さんは頑張ったのだと言いました。
命の終わりに、お母さんは、お礼を言ってねと少年にたのみます。生まれつき体の弱いお母さんは、本当なら、もっと早く死んでいただろうというのです。その血を引いた少年も、あの果物がなければ、長くは生きられない体だったのです。
その夜やってきたオオイヌを、少年は責めました。どうしてもっと早く、薬の果物を届けてくれなかったのかと。
オオイヌは悲しそうな目で、少年に教えます。出会った時には、お母さんはもう間に合わなかったのだと。
二度とここに来ないでくれと、少年はオオイヌを追い払います。
村が雪に覆われた夜、村が盗賊に襲われました。
なすすべなく、ただ逃げ惑い、隠れる人々の中にまぎれ、少年は後悔します。こんなことなら、オオイヌにきちんとお礼を伝えておけばよかったと。
そして今まさに、盗賊の刃が少年に届くという時、一匹のオオイヌが闇を切り裂いて躍り出ます。
鋭い牙と、敵意に満ちた唸り声に驚いて、盗賊たちは我先にと逃げていきました。村人たちは、盗賊に向けるはずだった矛先をこの勇敢なオオイヌに向けようとしますが、その前にもう、オオイヌは盗賊を追いかけるようにして、村の外へ去っていくのでした。
そして少年も、未だ恐怖に震える足を奮い立たせ、オオイヌを追いかけてその名前を呼びます。自分を一緒に連れて行ってくれと頼みますが、オオイヌは頷きません。足手まといになるというのです。
少年は強くなりたいと願います。
そしていつか、オオイヌとまた友人になりたいと強く思うのでした。
少年は青年になり、村は元の姿を取り戻します。青年はとても強いのですが、その力を困った人を助けるためにしか使いませんでした。時にはそんな彼を臆病だと馬鹿にするものもありましたが、怒ったりせず、むしろそのものが困った時には手を貸してやりました。町が獣に襲われた時は、真っ先に立ち向かいました。
それは、人々に酷くされても、決してやり返したりせず、守り続けたオオイヌの姿に似ていました。
青年はいつしか、村一番、町一番の勇敢な若者となっていたのです。




