表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/22

6】ピ、ピ、ピ♪(ヒヨコじゃないよ)

「じゃ、店員さん呼ぶね」

 加奈がテーブルに置かれている“ホール係呼び出し用ベル”のボタンを押した。



 ピンポーン。


 店内に音が響く。……が、誰も来ない。


「あれ?気が付かなかったのかな?」

 再びボタンを押す。


 ピンポーン。


 それでも、誰かがやってくる気配がない。

 どうやらホール係たちは誰が行くかで、少しもめているらしい。

 こんなテーブル、誰だって近付きたくはないのだろう。



「変だなぁ」

 加奈は懲りずにボタンを押す。


 ピンポーン、ピンポーン。


 音だけがむなしく響く。

 店員たちはまだもめているらしい。

 再三、ボタンに手をかける加奈。



 ピンポーン。


 ピンポーン。


 ピンポーン。


 ピンポ、ピンポーン。

 ピン、ピンポ、ピンポーン。


 ピンポ、ピン、ピ、ピ、ピ、ピピピピピ……。


 おかしな電子音が、絶え間なく聞こえ始めた。


「な、何、この音!?」

 ママさんたちの顔が不安そうな色に染まる。

 ふと見れば、ものすごい速さでボタンを連打している加奈の姿が。


「ちょ、ちょっと!!ゆうママ、何やってんのっ!?」

 加奈の隣に座るママさんが、彼女の手をつかんで止めた。



「え?」

 突然動きを止められて、戸惑っている加奈。

 肩で息をしている。


(息が上がるほど連打する馬鹿がどこにいる?!)


(↑あっ、ここにいたよ……)



「ああ、ごめん、ごめん。つい、熱中しちゃった」

 ゲーマーの加奈は、ボタンを見るとつい連打してしまうクセがあるのだった。





 結局、加奈たちの席に来たのは小林。

「ホットコーヒを5つでよろしいんですか。6つではなくて?」

 小林が聞き返す。

 その顔はいつも通りで、すっかり暗黒マスクに慣れたようだ。


 この順応性と、懐の深さは本当に素晴らしい。

 彼女こそが、ソウルセイバーを持つにふさわしい人物だ。



 小林の問いかけに答えたのは加奈だった。

「うん、5つ。私はもうしばらくしたら帰るし」

 何気なく加奈が言う。


―――“しばらくしたら”じゃなくて、今帰れ!今すぐ帰れ!そして二度と来るな!!



 店内を迷惑以外何物でもない格好で来店しておきながら、ドリンクの一つも注文しない腹立たしさ満点のダースベーダーに向かって、小林は心の中で毒を吐く。

 見事な営業スマイルを貼り付けて。


「かしこまりました」

 小林はニコッと笑って、その場から去った。




“あの時の小林さん、笑っていたけど、こめかみに何本も青筋立っていたわよ。

 ボタンを押すたびに、オーダー打ちこむ機械が『バキッ』っていう音も聞こえたわ”



 後日。

 通路側に座っていて、小林に一番近かったママさんの一人がそう漏らしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ