●甥っ子 カズ(長男)
4歳下の妹の長男カズはとっても気持ちが優しい男の子。
お姉ちゃんや妹達に挟まれて男の子1人だが、それでも捻くれずにすくすくと育っている。
小さな頃は戦隊特撮ものが大好きで、よく戦闘シーンを真似て見せてくれていた。
ただ、気になったのが彼の敵がヒーロー番組には出てこなかったキャラクターだったのが気になる。
「ねぇ、カズ。今、誰と戦っているの?」
と聞けば、
「忍者!」
という返事が。
まぁ、それはいい。
なにか他の番組とごちゃ混ぜになっているのかもしれない。
だが、
「いま、キリンと戦ってるの!」
と、張り切って答えられた時、私はどう対応すればいいのか困ってしまった。
いったい彼は、どんな悪役が出てくる番組を見たのだろうか。
平和な社会を脅かす敵がキリンって……。
まぁ、それはさておき。
カズとのこれまでのやり取りで、みやこがけして忘れる事が出来ないセリフがある。
◇◆◇◆◇
あれは妹が3人目の子供を生む為に、実家に帰っていたときのことである。
この時の妹は体調が悪く、お腹の子の生育も順調ではなかったので、実家で静養していたのだ。
長女のみいちゃんは幼稚園に通っていて、そのまま旦那さんの家で祖父母と暮らしていた。
だがカズはまだ3歳ほどで、母親と離れての生活は難しい。
そこで妹はカズを連れて実家で静養していたのだった。
みやこは当時、実家近くのアパートで旦那様と2人暮らし。
仕事がない平日は、カズを預かることもたびたびだった。
そんなある日のこと。
リビングでお菓子を食べながらカズと遊んでいたのだが、そろそろ夕食の支度を始めようかと思っていたみやこは、
「いまから台所でお料理するから、カズはここでテレビを見ててね」
といって立ち上がった。
するとカズも立ち上がり、
「ボクも行く」
とついてきた。
「でも、台所は遊ぶものがなにもないよ」
「いい、見てる」
みやこが何を言っても台所から離れようとしない。
まぁ、本人がそこにいたいというなら別に構うことはないだろう。
そう思ったみやこは、調理に取り掛かった。
それから10分ほどしても、カズは冷蔵庫横の壁に寄りかかってみやこを見ている。
一向にその場から離れようとしない。
調理の合間に話しかけてはいるが、このままでは甥っ子も退屈なのではないかと思って声をかける。
「ねぇ、カズ。そろそろカズが好きな番組が始まるんじゃない?やっぱりテレビ見てきたら?」
「いい、ここにいる」
「でもさ、そこに立ってるだけじゃつまらないでしょ?」
みやこがそう言った時、ものすごい大きな声で返ってきた答えが
「つまるよ!!」
だったのだ。
思わず噴き出したみやこ。
言葉には反対語というものがある。
「高い」の反対は「低い」。
「大きい」の反対は「小さい」。
みやこが言った「つまらない」の反対は「楽しい」、「面白い」などだろう。
また、もともとの言葉を使って「高くない」「低くない」、「大きくない」「小さくない」という表現をする事がある。
ところがカズの頭では「つまらない」の反対は「楽しい」ではなく、ましてや「つまらなくない」ではなく、「つまる」と認識されていたようだ。
子供の思考回路は、素直でいて、そして面白いものである。




