●イトコの次男 コウちゃん
長男ゆう同様、彼女の遺伝子を色濃く受け継いでいる次男のコウちゃん。
このコウちゃんというのが、実はなかなかにイケメン君でして。
サラッサラのブラウンヘア(地毛。カラーリングなし)に、パッチリと大きな二重で黒目がキラキラ。
体型はちょっと華奢だけど、元気いっぱいの男の子。
そんなコウちゃんと「将来何になりたいのか」という話をした時のエピソードを披露いたします。
◇◆◇◆◇
コウちゃんは回転するものに異常なほど興味を示す男の子でして。
それは彼がしゃべるようになってからは、顕著に現れたものでした。
≪コウちゃん2歳≫
ある夏の日、イトコ宅へ遊びに行った時の事。
テーブルの上に画用紙を広げて、みやことコウちゃんが横並びでお絵かきをしていた。
ちょっと小腹が空いてきたので、お絵かきを止めてイトコが出してくれたおせんべいに手を伸ばすみやこ。
そこですかさず、
「みやこちゃん、食べちゃダメ!」
と、コウちゃんに言われる。
「だって、お腹空いたんだもん。コウちゃんのママも食べていいって言ってるし」
「ママがいいって言っても、コウちゃんがダメって言ったらダメなの!」
握った色鉛筆を振り回し、みやこを睨み付けるコウちゃん。
よく分からない暴君振りだが、そんな彼の言葉を無視してせんべいを口に運ぶみやこ。
「ああ!もう、なんで食べるの!ダメって言ったでしょ!」
プリプリと怒りながら、みやこのひざの上に乗ってくるコウちゃん。
「コウちゃんがみやこちゃんに食べさせてあげたかったの!」
口を尖らせながら、コウちゃんがみやこにせんべいを差し出してきた。
ツンデレか?ツンデレなのか?
彼のこのような行動は割りと日常的で、近所の自分より年上の女の子や若いママさんたちをこのテクニックで落としまくっているという話だ。
しばらくしてからお絵かき再開。
絵を描く事が好きなみやこは、コウちゃんのリクエストされるままに次々と色鉛筆を走らせる。
「みやこちゃん、花火かいて~」
「いいよ」
「次は小さい花火かいて~」
「うん」
「大きい花火もかいて~」
「分かった」
「それからもっと大きな花火」
「よし」
「もっと、もっと大きな花火かいて~」
「……」
「もぉっと、もぉっと大きな花火かいて~」
「…………」
飽きてきたみやこは、一旦色鉛筆を置く。
「……コウちゃんは花火が好きだね」
苦笑いを浮かべるみやこに、コウちゃんの満面の笑みが返ってくる。
「うん♪夜になったらね、パパと花火やるんだ。花火、だいすき!」
にこにこと本当に嬉しそうだ。
みやことコウちゃんの会話は続く。
「コウちゃんは、大きくなったら花火を作る人になりたいのかな?」
「ちがうよ」
即座に首を横に振られる。
「じゃぁ、何になりたいの?」
その質問を聞いて、コウちゃんは勢いよく立ち上がった。みやこの膝の上で。(2歳児とはいえ、何気に痛いです)
そして、得意満面でこう言った。
「せんぷうき~~~!」
「え?扇風機?」
「花火よりせんぷうきが好きだから、コウちゃんはせんぷうきになりたいんだ♪」
「で、でも、花火も好きなんだよね?」
「花火はグルグルしないから」
こういう感覚は、紛れも無くイトコのDNAによるものだろう。
≪コウちゃん3歳≫
9月末に誕生日を迎えるイトコにプレゼントを渡そうと、イトコ宅に遊びに来た。
お茶を飲んだりお菓子を食べたりして、二人ともおしゃべりを楽しむ。
そんな時、隣の部屋でお昼寝していたコウちゃんが目を覚まし、のそのそとリビングにやってきた。
子供の成長は本当に目を瞠るほど早く、一年経つとだいぶしっかりとしたものとなっている。
背も伸び、いくらか筋肉もついてきたようだ。
「そういえばさ、私、コウちゃんに去年“大きくなったら何になりたい?”って訊いたらさ、“せんぷうきになりたい”って答えが返ってきてね」
当時のことを思い出し、正面に座っているイトコに苦笑いしながら話しかける。
するとイトコも同じように苦笑い。
「ああ、この子って羽根が付いてグルグル回る物が好きなんだよ。変な子だよね」
その変な子はお前の息子ですけど。
さて、1年経ってコウちゃんの答えはどう変わっているのか。
「ねぇ、コウちゃん。大きくなったら、扇風機になりたいんだよね?」
みやこが訊けば、
「ううん、ちがうよ。せんぷうきになんかならないよ」
と、返ってくる。
流石に1年経てば、まともな方向に修正されたようだ。
よかった、よかった。
そう思ったのもつかの間。
「コウちゃん、せんぷうきじゃなくて、かんきせん(換気扇)になりたいんだ♪」
キラッキラの笑顔で答えるコウちゃん。
まともな方向に修正されるどころか、おかしな方向に加速していた。
≪その後のコウちゃん≫
みやこ的にはコウちゃんとのこのやり取りが結構面白くて、毎年彼に質問するようにしている。
訊くたびに
「ベランダにある四角くてグルグル回ってるアレ(エアコンの室外機)」
「ササラ電車(電車の前方に回転するロール状のブラシが着いている)」
など、例のごとくなりたい職業ではなく、なりたい物体で答えるコウちゃん。
そうこうしているうちに、コウちゃんも小学1年生になった。
そして、毎年繰り返してきた質問を彼にぶつける。
そこで返ってきた答えは……。
「戦闘機のパイロット」
よかったぁぁぁぁぁ。
「戦闘機のプロペラになりたい」って言い出さなくて。
ホッとしたみやこでした。