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在る日の卒業式

作者: なかむら

読もうと思っていただき、ありがとうございます。

少々雑でまとまりきってない部分がありますが、ぜひお願いしますm(__)m

 今日という日がきてもらいたくなかった。

 「今日で、みんなと別れるんだもんな・・・」

 そんな事を呟いた。これが、今日起こる出来事に対する正直な感想だった。


 3月。多くの学校では卒業式、離任式などといった巣立ちの時期だったりする。僕―藤野亮―の高校も今日卒業式を向え3年生である僕達は今日、今まで一緒だったクラスメイトと共に学校を離れる。大学も無事合格していて、無事進路も決まった。何事も問題はない。だけど・・そんな日がきてほしくなかった。

 窓を開けてみる。外はきれいに晴れていた。春風に舞う桜の花びらがとても春らしさを感じさせる。部屋に吹き込む春風が心地よかった。・・とても春らしい風景だった。

 「・・・」

 ただ、僕はその景色をぼんやり眺めていた。と、


 ピーンポーン。


 という音。家の玄関のベルが鳴った。時計を見るとすでに7時30分をまわっていた。いつもの登校時間だった。

 「しまった!早く行かないと遅刻だ!」

 僕は急いで着替えを済ませ、玄関に急いだ。


 

 玄関では、人が一人待っていた。黒の制服に身を包んだ女性とも少女とも言えないその女の人は背が僕よりも少し低いくらいで髪を肩の辺りまで伸ばしている。

 「あっ、おはよう!今日は少し遅かったね」

 僕を見て彼女―平川亜矢―は笑いながら言って来た。亜矢は家が隣でいつも登校の時に家に

迎えに来てくれる。幼なじみということもあるのだろう。いつも朝はこんな感じだった。

 「それより早く行こうよ!みんな待ってるよ。」

 「そうだね、早く行きたそうだもんね。行こう。」

 下駄箱から靴を取り出し履く。忘れ物がないか確認をし、

 「いってきます。」

 と言って家を出た。台所の方から「行ってらっしゃい」と母の声が聞こえた。


 

 外は本当に気持ちよかった。春というだけあって、暖かく、雲が1つもない空。これが卒業式日和というものなんだろうかとさえ思ってしまう。

 二人で何気ない話をしながら学校に向かっていく。いつもなら何も思わずに亜矢の話を聞いて楽しんだりしているのだが、今日は・・今日だけはなぜか悲しかった。僕と亜矢はお互い進路が違う。実際亜矢は卒業後就職することになっている。だから今日でこうやって登校するのも最後なのか・・・

 そういう気持ちが心のどこかにあった。

 「あっ、亮ちゃん。桜だよ!・・きれい。」

 亜矢がふと言ったそこは僕の学校で『桜色坂』と呼ばれている。桜の色で道も染まってしまう。花が散ると、辺り一面が花びらに包まれるほどだ。学校まで続いている約100メートルくらいのゆるやかな坂に沿って桜が隙間なく咲いている。なのでそう呼ばれていた。気が付けば、桜はもう満開だった。

 「そういえば、もう満開だな。この坂の桜、好きだな。」

 「私も。この景色は好きだよ。桜が散っているところを歩いたりするのもいいよね。」

 ここで、二人の会話はとまった。特に何かあったというわけでもなくただ自然と・・とまった。そのまま歩いていく。学校はもう目の前に見えていた。

 「・・ねえ、亮ちゃん。」

 突然の亜矢の声に僕は亜矢を見た。いつもと違う感じの亜矢だった。どこか、不安そうな・・そんな感じがした。

 「ん?どうかした?」

 「亮ちゃんって・・その・・・あの・・・・・」

 なかなか亜矢は答えない。そんなに言いずらい事なのだろうか。と思って待っていると、

 「いや、やっぱりいいよ。ごめんね。さあ、早く行こう!」

 それだけ言うと亜矢は校舎に走り出した。僕は亜矢の言葉に疑問を感じながらも亜矢の後を追いかけた。



 教室に入るとすでにクラスメイトのほとんどが来ていた。みんなそれぞれ自分の机にある卒業アルバムを手に取り眺めたり、寄せ書きとしてアルバムに何か書いてもらっていたり、グループで写真を撮ったりとしていた。僕は、自分の席に座りアルバムを手に取った。今までの高校生活の1コマ1コマが写真に収められている。クラブの様子、授業風景など、知らないときに色々な場面で写真を撮られていたんだなと驚いた。最後のページは寄せ書き用のページとなっていた。

 「おはよう!亮!!・・ん、どしたの?」

 そこで一人の生徒に声をかけられた。どこにでも一人はいるような元気が取り柄という生徒―村田和―。性格はお互いに対照的ではあるが、僕は彼の事をよく頼っているし信頼している。いわば、親友というものだろう。

 「いや、もう卒業なんだなって・・・」

 「何そんな事言っているの?!当たり前じゃん。・・でも、クラスのみんなとはずっとつながってられるって!」

 「・・・よく言ってもらいたいことがわかったね。」

 「バーカ、何年親友やってると思ってるの?」

 そして二人で笑いあった。実際、和とも進む進路は違う。というより、僕だけが大学に進学するという感じだった。場所も遠いので大学の近くに住もうと思っている。だから、あまりクラスメイトに会うということもないだろう。こんな風にできるのも今日までなんだな・・とあらためて考えてしまった。

 「ほら、そんなに考え込まない!せっかくなんだから写真撮ろうぜ。」

 といきなり僕の腕を引っ張り、クラスメイトの何人かと写真を撮った。

 「・・そうだよね。」

 僕は変に考えるのをやめて、和と一緒に過ごして楽しんだ。



 卒業式は予定通りに行われた。卒業証書をもらい、校歌を歌い後輩からメッセージをもらい。毎年と同じ流れだ。ただ、今年は少し違っていた。開けていた窓から桜の花びらが少しずつ、少しずつ会場に舞ってきた。卒業生である僕たちを祝ってくれているかのように式の間中ずっと舞っていたその花びらはとてもきれいだった。・・とても印象に残る素晴らしい卒業式だった。

 その後、僕達は全員教室に集まった。最後のホームルームを行うという事だった。

 「今日まで、本当にありがとう。」

 ホームルームの始めに三浦先生は言った。この三浦先生は生徒にあまり人気がなかった。でもこのクラスの生徒にはとても好かれていた。それは、このクラスだけにしか見せない先生の性格からだろう。ぽっちゃりとしたその体型から想像できるような気配りのある先生で、生徒一人一人をちゃんと見てくれていて何かあったときには相談にも乗ってくれる親しみやすい先生だ。

40の誕生日の時にクラスでパーティーを開いてみんなで祝って楽しんだくらいまとまりのあるとてもいいクラスだった。それは、きっとこの先生だったからこんな感じのクラスになったのだろう。正直、このクラスでよかったと思う。・・・この先生も前は違っていた。

 「じゃあ、最後だし前に出てみんなから一人ずつ一言もらおうかな。」

 ホームルームが最後まできたとき、ふと先生は言った。僕達は反対せずみんな自分の言いたいことを一人ずつ言った。僕も自分の言いたいことを・・

 「このクラスはよかったよ。みんなありがとう!」

 心からの、自分の言葉だった。ちなみに和は、

 「みんな今までサンキューな!!あっ、みんなでクラスお疲れさまでした的なパーティーしよう!!」

 と言って、最後の最後までクラスを盛り上げていた。・・和の事だから、こんな感じで言うんだろうなとは思っていた。亜矢はというと、前に出る時から泣いてしまっていて何か言ってたと思うのだが、聞き取れなかった。こうして、最後のホームルームは終わり僕の高校生活最後の日は終わった。



 卒業式も終わり、生徒もほとんど帰り始めていた。僕は、先生のところに行きたかった。和や亜矢も行きたいということだったので3人で行くことにした。教室をでて職員室に向かう。

途中でみえる窓から景色をみてみる。やはり桜が舞っている。今日で卒業式を迎えてしまった自分がいる。今日で高校生活も終わってしまう。その気持ちは僕の中でいっぱいに広がっていた。そんな自分が悲しくて仕方なかった。

 職員室には三浦先生しかいなかった。僕達は、先生と話をして少しの時間楽しんでいた。みんなで持ってきた卒業アルバムに先生から一言ずつ書いてもらい、卒業の記念という事で手紙を先生に渡したりした。アルバムに関しては、

 「家に帰ってからみてね。今は見ないでよ!」

 と言われ、すぐにも見ようと思っていた和は自分にだけ言われたと思ったのかびっくりして

アルバムを落としてしまった。僕達はそんな姿に笑ってしまった。

 「最後まで和って、こんな感じで終わってしまうんだね・・」

 和も始めは慌てていたけど僕たちが笑っているのに気が付いて次第に笑っていた。和や亜矢がいてくれて本当によかったと自分で感じていた。・・うれしかった。

 

 

どのくらい時間が経ったのだろうか。話していたから気にしてなかった。和に、

 「もう帰ろうよ!パーティーについて考えないとだめなんだよ!!」

 と言われるまで気にしなかった。僕達は先生と別れて帰ることにした。後ろから三浦先生に

 「あっ、亮君。ちょっといい?」

 と言われてしまったので僕は和と亜矢と別れて先生と近くの教室に行った。


 教室に入って僕は先生と向かい合って席に座った。

 「どうしたんだろう・・なにかしたかな。」

 と少し不安だった。その独り言が聞こえたのか先生は、

 「突然ごめんね。少しゆっくり話がしたかったから・・」

 と言った。とはいっても余計どうしたのかわからず不安が強まっていった。

 「先生・・いきなりどうしたんで・・・」

 「大学生活始まるね?どう、大丈夫そう?」

 唐突に言われたその言葉。でも特に怒られるというわけではないという事に少し不安がなくなり普段通りに、

 「あっ、大丈夫ですよ。一人だけですけどどうにかなりますよ!」

 と答えた。正直大学での生活に心配を覚えていたが、とりあえずそう答えた。先生は

 「そう・・よかった。」

 と言って下を向いてしまった。いつもと違う感じの先生に少し驚いてしまった。普段はこんな感じではなかったのに。

 「・・先生?」

 「もう高校卒業なんだもんね。・・そうだよね。早いよね・・・こんなの。」

 気が付くと先生は目に涙をためていた。本当にいつもと違う先生のそんな姿に驚いてしまった。先生も僕のそんな様子に気が付いたのか、

 「嫌だ、ごめんね突然こんな姿見せてしまって・・でも私だって泣いたりするのよ。」

 と僕に謝った。

 「本当に早いわよ・・せっかくクラスにも溶け込んできて、たくさんの生徒に触れて、私は前より前向きになれた。今ではこの学校生活がすごい楽しい!・・そういう風になれたのも亮君のおかげだったのに・・・今呼び止めたのは今までのお礼を言いたくて。本当にありがとうね。亮君・・」

 先生は目に溜めていた涙を流していた。それを気にしないで僕に話した。僕は、そんな先生の姿を見ていてどうしたらいいのかわからなかった。


 三浦先生は今でこそ僕たちのクラスでは人気のあるくらいの人だが、前は違っていた。この高校に転任する前、別の高校で生徒からひどい暴力を受けていたらしい。理由は特にない。ただ、生徒がやりたい放題やっていたらしい。その生徒を受け持っていた三浦先生だったが一人ではどうすることもできず、今度はほかの職員からも、

 「生徒一人どうすることもできずにどうするんですか!」

 という感じで色々言われていたらしい。それから先生は一人の生徒とすら向かい合う事ができず、また、生徒に限らず人とも関わる事ができなくなってしまった。その状態でこの学校に転任してきたから勿論、生徒や職員とすら関わるような事をしなかった。初めて会った時に、

「なにか人に怯えているような気がする」と思った僕は、先生と話をしてみることにした。しかし始めは話をするどころか避けられていた。”自分の身を守るために”自分の心を閉ざしていて、誰の誰にも心を開くことをしないように感じられた。だからこそ僕は先生と話をして心を開いてもらいたかった。最初は授業に関する話、だんだんに広く色々な事を話した。次第に先生の方も心を開いてくれたのか話をしてくれるようになった。学期ごとにある教育相談では逆に先生から僕に相談された。そんな事もあってか少しずつ、少しずつクラスの生徒とも話をするようになり前向きに、そして明るい今のような先生になった。


 そんな先生だからこそ、僕は自分の気持ちを正直に話してみようと。決めた。

 「先生を・・始めは怖いと思いました。僕たちに怯えているようにして避けていって。逆にそれが怖かった。でも・・今はそんな先生じゃない、誰にでも接することができるし、勿論クラスの雰囲気にもなじんでいる。よかったです。先生がそんな風になってくれて・・心を開いてくれて。」

 本心だった。迷うことなく先生に自分の気持ちを伝えた。

 「・・・・ありがとう。私、あなたに会えてよかった。本当によかったわ・・私はあなたに触れてあなたの事が・・・好きになっていた。始めは誰とも話したくなかった。でも・・あなたを知り・・あなたと話していくうちに・・どんどん好きになった。今では、あなたを愛してる。」

 さっきより先生は涙を流していた。自分が今の今まで溜めていたものを一気にだすように。

先生も自分の気持ちに正直になって話しているのだろう。少し頬を赤らめていた。

 「・・・僕は、本当に先生が前向きになってくれて嬉しかったです。前までの先生じゃな く、今の先生であってくれて。授業でわけのわからないことを言って、おっちょこちょいで、心配性で。でも、誰の何に対しても真剣に考えてくれる。そんな先生の事が・・好きです。」

 これも、はっきり言えば自分が今まで思っていた事を正直に言った。少し恥ずかしかったがこれで自分の気持ちを言い切れたのでよかったのだと思う。

 先生は顔を下に向けて体を小刻みに震わせていた。見ているだけで今にも壊れそうなほどに

も見えるその姿は前の頃の先生を見ているようで、怖くなった。

 「・・先生?」

 呼んでも反応がなかった。不安になったので僕は席を立ち、先生が座っているそこに近づいた。今度はさっきよりも少し大きめの声で、

 「先生、どうしたんですか?」

 と言った。これで答えてくれなかったらどうしようかと心配だった。すると先生はいきなり席を立った。そのあと僕の目の前が真っ暗になってどうなったのかわからなかったが、先生の腕を背中に感じ、ぬくもりを感じ、僕は先生に抱かれているとわかった。実際、先生は僕の胸に顔を押し当て声をあげて泣いていた。今まで溜めていたどうしようもない気持ちを吐き出すかのように声をあげて泣いた。どうしたらいいかわからない僕は、ただ先生の気持ちを受け止め、先生を抱き寄せ頭をぽんぽん、と軽く子供をあやすようにたたいていた。


 先生はそのあとしばらく泣き続けていたが、だんだん落ち着いてきたのを感じると僕は先生の顔を覗いてみた。涙に濡れた瞳は僕を見つめてきた。まるで簡単に壊れてしまいそうな玩具のような感じさえ覚えた。まだ体を少し震わせていたが、気にしていないようだった。少しずつ、少しずつと先生は顔を僕の顔に近づけてきた。僕も先生にあわせて顔を近づけていった。そして、お互いの気持ちをあわせるように唇を重ねた。


 

 玄関を出るとすぐそばで亜矢と和が待っていた。こちらに気付くと、二人とも手を振ってくれた。僕も手を振り返し、二人の元に急いだ。

 

 「これから、大学に進んで環境も変わるし色々な出来事があると思います。でも僕には、和や亜矢みたいなクラスメイトが居いるし・・・三浦先生もいる。だから、心配しないで下さい。できる限り、自分のしたい事をして将来の希望に向かえるように頑張りますね。」

 あれから、僕は先生ともう一度席に向かい合って座りこう、自分がこれからの事で考えている事を話した。先生は、いつものような先生の感じに戻り

 「わかったわ。」

 といってくれた。こうして僕は教室を出た。


 僕達は今、桜色坂を歩いている。日の光に照らされた桜は僕達の歩いている道を鮮やかに染め、花びらは風に乗り散っている。いつもこの時期にみる光景だった。ふと二人を見てみると

亜矢は僕と同じように桜を眺め、和はというとぶつぶつと独り言を言いながら考え事をしている。・・きっと、最後のホームルームの時に和の口から出た”お疲れ様でした的なパーティー”についてだろう。

 きっとこんな感じで3人でこの景色を見ることは。学校から帰るなんて事はもうほとんどないだろう。でも、きっと僕達3人だけでなくクラスメイトみんなとは絆でつながっている事と信じている。だから・・・

 「またいつか、こんな日がくるんだよね。」

 と呟く。何かと思ったのか和と亜矢は僕を見る。それがなぜかおもしろくて不思議と笑いがこみ上げてきた。

 「えっ、何で笑うの?」

 「・・いや、なんでもないよ!!」

 そう言って僕は坂を走り出した。後ろから亜矢と和も追いかけてくる。坂を走るのは気持ちよかった。

 「・・今は信じていようかな。いつか、こんなにすてきな日がまた来る事を・・」

 桜の木の下。僕は、舞い散る桜の花びらを見上げ呟いた。

読んでいただきありがとうございました。実は、内容は自分の思っていたのとはずれました。前回書かせていただいたものも自分の思っていたのとはやはり違うし・・とにかく読んでいただきありがとうございましたm(__)m

 よかったら批評をぜひお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言]  いまから酷評を申し上げることお許しください。  卒業式の日を書いた作品ですが、卒業式の日、一日だけで話をまとめてしまっているので様々な人の思いが交錯して理解しづらかったです。  特に三浦先…
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