9話
「なー、私がコーチする必要ないんじゃない?」
先週からバスケのコーチを頼まれ、時間があれば公民館をかりて練習をしている小雪。
座り込んだまま言った。
「かなり入るようになったじゃん。」
小雪はシュート率をあげる為にコーチを頼んだようだが、私は片手、小雪は両手スタイルの投げ方の為やり方が違う。
しかし彼女は飲み込みが早いのか、それでもめきめきとシュート率をあげていったのだ。
「まだよ。これぐらい、周りはみんな出来てるわ。」
「やれやれ。じゃ、実践タイプでしようか。型は出来てるし。」
偉そうな事をいっているが、自分だってわかってしてるわけではない。
ただ綺麗なフォームか、早い動きについていく為にはどうしたらいいか。
それを見て、考えてやってるいるだけ。
「もう!けいのディフェンスはしつこいのよ!」
中々思いどうりにシュートさせないものだから、小雪は悔しそうにボールを強めにパスしてきた。
「簡単じゃ、面白くないだろ。」
「次はけいが攻めよ。」
「はいはい。」
スポーツマンは負けず嫌いだ。
勝つまで。納得いくまでする。
体力がついていけないんだよね。
けいは重くなる足を一瞬かばったのがあだとなり、もつれて小雪を巻き込んで転んでしまった。
「いてー・・・。」
思いっきり肘を打撲し、痺れてしまった。
そして小雪が上に乗っているものだから、息が一瞬出来ず、苦しい。
「ど・・け、こゆ・・き。苦しい!」
「ご、ごめん!」
やっと状況に気づいた小雪は慌ててのいたが、楽にはならなかった。
「あーもう今日無理。」
「う、うん。ほんとごめん!」
必死に謝る相手にこれ以上怒る気もしない。
しばらく動く気にもなれず、痛みに耐えていると小雪は慌てて立ち上がった。
「ちょっとタオル冷やしてくる!」
「お、おい・・。」
体育館の真ん中で置いてけぼりをくらうけい。
徐々に痛みがひき、高い天井を眺めているとバタバタと小雪が戻ってきた。
必死に冷やす彼女を見つめながら、けいは辛くなってしまった。
小雪が戻ってきた時、安心したのだ。
あんなに1人で平気だったのに。
少し一緒に過ごしただけで。
「けい・・・。」
「ん・・・!?」
呼ばれて顔を上げた瞬間、小雪の顔が至近距離になっていた。
よければ避けられた。
が、何故か動く事が出来ない。
「けいー!」
しかし、次の瞬間萌の明るい声が聞こえやっとそこで身体を後ろに引く事ができた。
「あれ?けい、どうしたの?」
お互いが座り込んだままだったからか、萌はごく普通に近づいてきた。
「なんでもないよ。ちょっと着替えて来るね。一緒に帰ろう。」
気まずかった。そそくさと立ち上がり、更衣室に向かう。
最低な気分だった。
私は淋しさを紛らわす為に、小雪を受け入れようとした。
「なにやってんだよ、私は・・・。」