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記憶の彼方へ  作者: 山水
8/13

8話

我慢する事は昔から慣れていた。



家が貧乏でいつも兄のおさがりを着ていた。


周りの子が誕生日プレゼントを買っている中、私は買えなくて手作りのもので笑われた。


だから、好きな子の両親にも嫌われて当然で


それらを嘆けば自分の両親を傷つける事になる




だから、自分さえ我慢していれば周りは円滑にまわるなら、何も言わないでおく。




それが出来ているのは、萌がいるから。


萌が私の場所に来てくれるから。


でも時々思う。




もし萌が他の誰かに傾いてしまえば


もし萌に嫌われる事があったら




私はもろくも壊れてしまうのではないかと・・・












「けい!放課後買い物いこーぜ!俺、新しいバッシュ欲しいんだ。」



正樹はワクワクした表情で雑誌を見せながら誘って来た。



「いーよ。」



興味はなかったが、正樹は男同士でいくよりも私と買い物にいく方が楽しいらしい。

数少ない友達の誘いなら断わる事もなかった。




駅二つ先のその店は、よく考えれば萌の学校の近くであった。



放課後と言う事もあり、学生姿の生徒が目立つ。カラオケやゲームセンターが多いからもあるが、かっこうの寄り道場所だった。



「ラインはやっぱ赤がいいよなー。情熱の赤!」



だいぶ温度差はあるが、正樹は非常に楽しげにバスケットシューズを選んでいる。


自分はというと、適当にざーと店内をみていただけだが、ふと顔をあげれば何やらあー!と言う声をあげて駆け寄ってくる女子生徒がいた。



「練習試合に出てた子だ!」



「・・・・・・。」



特に記憶にもなかったから、無視しようとすれば思いっきり肩をつかまれた。



「はいはーい、無視しなーい。」



「私は知らないから。」



「でも私は知ってる。実際、一緒に戦ったじゃん。」



「まったく全然覚えてない。」



意地悪でなくて本当に。

だからこれ以上話す事もない。



再び去ろうとすれば、また引き止められた。




「待って待って!」



「・・・・・・。」



ぶすーとした表情で振り返ると、彼女はやれやれとあきれ顔で笑った。



「萌ちゃんの話じゃ、もっと優しい人だって聞いてたんだけどな。」



「萌の・・・友達?」



「同じクラスメイトよ。」



萌の知りあいなら、話だけはきいてやるか。


そんな態度を全面に押し出しながら、正面を向いた。



「で?なに?」



「私にコーチをして欲しいの!」



「断わる。」



迷う時間もなく、きっぱりと断った。

むしろ何を言われても引き受ける気などなかったが。



が、彼女はにやりと勝機の笑みをうかばせ、携帯画面をみせた。



そこには体操服姿、授業中、ランチタイム、家庭科実習のエプロン姿の萌が撮り溜めされていた。




「してくれたら、今ある分全部あげるし、これからも横流ししたげる。」



「・・・これ、全部あんたが?」



「そ。よく撮れてるでしょ。一筋縄ではいかないと思って準備したのよ。」




これはとても有効な賄賂だった。












「と、ゆーわけで、萌ちゃんの友達ちょっと借りるねー。」



ニコニコと笑顔で報告してきたクラスメイトの小雪に、萌はまったく事態を読めないでいた。



「けいがオッケーしたの?」


「うん。で、やっぱ親友を独占するのは萌ちゃんも複雑だろうから、これレンタル料であげるね。」



見せられたのは、携帯で撮られたけいのシュート姿

他にもジュースを飲んでいる喉元や、ふて腐れている表情など



中学にあがってからは、写真にうつる事がなくなったけいの貴重な品物だった。



「また撮れたらあげるね。」



「う、うん。」



「・・・・・似たもの同士。」



ボソッと呟いたが、萌は写真に夢中で気づいてないようだった。











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