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記憶の彼方へ  作者: 山水
5/13

5話

まだ夜中は肌寒い季節。



萌はけいの部屋の前で立ちすくんだ。



けいの部屋は、玄関から入らないでもいいように裏口のすぐ横にあり、私と正樹だけがそこからの入室を許されていた。



けいのお母さんもしかり。




が、今この窓はとてつもなく遠くにあるように見える。



きっとけいは笑ながら許してくれる。

でもそれに甘えてはいけない。



でもいますぐ逢いたくて。

けいの胸で泣きたい。

懺悔したい。




でも今そんな資格私にはない。

だから、だからここからでも思わせて欲しい。

顔がみたいなんて言わないでから。




「なんて顔、してんだよ。」



「神様の・・・馬鹿。」



神様は私に甘過ぎる。

なんでけいに知らせるのだろうか。



突然開かれたカーテン

一緒に今にも泣きそうなけい



温かな手で招かれた部屋の中。

何も聞かず、抱きしめて、けいは頭を優しく撫でた。




駄目だとあれだけ思ったのに、けいはとても優しくて


けいに包まれたら何も隠せなくて



ただただひたすら泣いた。



頭が痛くなるほどに

声が枯れるくらいに

鼻水もきにならないくらいに










「なぁ、萌・・・。」



萌の涙や鼻水を優しくティッシュで拭き取りながら、けいは目をじっと見つめた。



「・・・・。」



返事をしたかったが、のどがカラカラで声が出なかった。



「他のやつの胸で泣くなよ?」



「・・・・?」


泣き過ぎてけいの言葉が理解出来なかった。

首を傾げると、けいは少し苦笑いしながら頬に手を当てた。


手の温もりが気持ちよ過ぎてつい目が細まる。




「萌の落ち着く場所が、いつまでも私であればいいのに。」



チュッ



おでこに柔らかな感触と熱を感じた。



目を開けると、けいは顔を隠すように力をいれて抱きしめる。




「いつまでもけいだよ。」



とても小さな声になったが、けいは聞こえたのだろう。


さらにしっかりと腕に力がこもった。




このまま一つに溶けてしまえばいいのに。


ぼんやりとした思考回路の中、萌は急激な眠気にあがらうことは出来なかった。




でもけいを抱きしめる手だけは、しっかりと力がこもったままだった。



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