2話
「なぁけい、お前なんかスポーツすれば?そうすればもっと人生楽しめるんじゃないか?」
「面倒。」
「あのなぁ、そんなんじゃ萌がいつまでもお前を心配するだろ。」
俺の悪友、けいはいつもつまらなそう。
かと言えば、幼馴染の萌に対してはやたら過保護で。
学校さぼっても勉強は出来るし、スポーツもそこそこ出来る。
何かきっかけさえあれば、こいつは変わる。
だが、中々うまくいかないのが現実。
「なぁ正樹、私はさ今電池切れなんだよ。燃費の悪い、車みたいな。」
「お前のガソリンは何なんだよ。」
「・・・・・宝物。」
意味がわからん。
けいはいつも空を掴むような事しか言わない。
正樹は頭を抱えながら、机に伏せた。
すると、けいの携帯が騒がしくなる。
誰かはすぐわかった。
けいは必要最低限の人間にしか番号を教えていない。
かつ、放課後にメールがくる相手など限定されていた。
「また萌か?」
「うん。私帰るや。迎えにいく。」
何故萌の事になるとこんなに行動的なのか。
「けい、いい加減萌離れしろよ。」
「正樹。」
珍しく真剣な声のけいに、思わず背筋がのびた。
が、けいの言葉は続かない。
しかしその表情はとても辛そうで。今にも消えてしまいそうなくらいのけいのもろさを感じた。
「じゃあな。」
「あ、あぁ。月曜日は必ずこいよ!」
面倒くさそうに片手をあげ、教室の扉をあとにした。
「昔は・・・もっと笑う奴だったのにな。」
過去が一番良かったとは思わないが、あいつはあの時が一番輝いていた。
そう思わずにはいられない。
正樹はけいが座っていた机を眺めては、深い溜め息をついた。