11話
日頃からあまり感情を表に出す方ではないが、ここ最近は自分でも自覚するぐらい苛々している。
「けい、体調悪いのか?」
「いや、別に。」
正樹も心配して話しかけて来るが、わけを話すわけにもいかなかった。
まさか、萌と最近会ってないのが原因だとは。
あの日、小雪との練習を終えて以来、萌と顔もあわせていない。
こんなに会わないのは、意図的かもしくは偶然か
たが、本当はこれでいいはず。
本当は萌が違う学校にいき、距離が離れていく。
これが目的であったはず。
萌の両親の。
「もーまたもえ失敗したのー?」
正樹も驚くぐらいの反応で廊下をみれば、まったく萌に似てないが女子生徒が楽しげに話していた。
「あの子、もえって言うの?」
「あー?お前、同じクラスの名前ぐらい覚えろよ。城咲もえ。」
「同じクラスか・・・。」
気づかなかった。
と、言うか、クラスの人と話した事ない、あんまり。
萌と一緒の学校にいきたい。
また同じクラスでいたかった。
そればっかり考えて、萌と会う事だけ考えて。
クラスと馴染む事なんて考えてなかった。
「なぁ、正樹。萌離れしろって言ってたよね?今が・・その時なのかもしれない。」
「お、おい、けい?」
萌がいない日常になれる為には、違う日常を作るしかない。
そうでなきゃ、一生、萌を追ってしまう。
閉じ込めて、誰にもあわせないで、自分だけのものに。
そんな狂った考え、捨てなきゃいけないんだ。
萌を傷つけてしまう前に。