金の亡者と、平均的貴族夫人と、人の心の無い美貌の持ち主と、魔法バカ少女
平凡な伯爵令嬢の婚活
https://ncode.syosetu.com/n1608mr/ のヒロインの両親のお話。
お金大好き父さんのお話を書きたかった。
「私は君を愛する事はない」
だってお金が一番大好きだからーっ!と。
私の見合い相手、ルーバス伯爵令息は爛々とした目で言い切った。
なんて潔く美しい「君を愛する事はない」だろう、と、私は感動さえ覚えるのであった。
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私、リリベル・ダングースは、ダングース伯爵家の長女だ。
ダングース伯爵は、特筆の無い伯爵家である。
伯爵領は麦を主に育てていて、名産品も特に無い。
麦の収穫量が多い時は税を多めに取り、少ない時は税を少なめにと多少の調整をしているので、領民もそこまで不満に思っている様子はない。
不満に思っても、代々受け継いでいる土地があるから逃げられないだけかもしれないが。
そんな平凡な伯爵家で、私がとびきり美人だとか、特別に才能があるとかなら良かったかもしれないが、これまた平凡なのである。
ミルクティー色、なんて表現したら可愛いかもしれない、うっすいベージュ色の髪。
ガーネット色と言ったら美しいけれど、所詮赤味がかった茶色でしかない瞳。
若干釣り目。
釣り目なら高い鼻が合うだろうに低めの鼻。
小さくも大きくもない口。
あ、歯並びだけはちょっと自慢できるわ。
平民には「お貴族様だ!」と分かってもらえる程度には整った顔だけど、貴族学校だと埋没する平凡顔だ。
そんな平凡なダングース伯爵家の平凡な長女だが、学園では微妙に名を知られている。
私が注目されているのではなく、ダングース伯爵の名が知られているのである。
勿論、よくない意味で。
ダングース伯爵家は子沢山だ。
貴族には珍しく、そういった子沢山家系は重宝されたりする事もあるが、ダングース伯爵家にそういう要望がくる訳がない。
同じ父母の間にたくさん生まれたならともかく、そうではないからだ。
私、リリベルは、伯爵家当主と正妻の間に生まれた第一子だ。
そこは良い。
長男は父の愛人①が産んだ。
次男は父の愛人②。
三男は母が父以外の男(しかも高貴な人らしい)との間に産んだ子。
四男五男の双子は愛人③。
次女と三女の双子は母が父以外の男との間に産んだ子。
六男が伯爵家当主と正妻の間に生まれた子、という感じだ。
つまり、9人もいるのに、当主と正妻の間に生まれた子が私と末っ子の弟だけという状態である。
異母兄弟、異父兄弟祭りの我が家なのである。
六男が生まれるまで、後継者争いも兄弟間で凄かったが、六男が生まれた事により鎮静化した。
その辺りは父の愛人も弁えているようだし、母の愛人はそもそも貴族というものに興味が無いらしい。
これで父母が政略結婚で冷めきった関係とかなら分かるが、仲は良いのである。
むしろラブラブなのである。
しょっちゅうキスもするし、起き抜けのくっさい口でもキスするくらい仲が良いのである。
なら何故愛人をと思うが、愛し合ってはいるが、体の相性が物凄く悪いらしい。
愛する人となら最高に気持ち良いとかいうのは、都市伝説らしい。
愛し合っていても、そこは違うらしい。
なので、体の欲の発散は愛人と行う事にしているのだとか。
まあ、お互いともやるが、やっぱり相性悪いよねえ、というオチが待っているだけだとか。
で、それまで可もなく不可もなくなダングース伯爵家だったのだが、流石に子供が多すぎて、貧乏まっしぐら状態なのである。
明日食べるパンにも困る、という程でもないが、貴族の教育費はそれなりにかかる。
それなり×9は、結構かかる、になってしまうのである。
一応私は第一子の長女だし、当主と正妻の間の子なので学校には通わせてもらっているが、愛人の子供達がどこまで通わせてもらえるか分からない。
貴族学校に通える権利はあるので通えるが、学費が心許ないのだ。
だが、貴族学校を出るのと出ないのとでは、将来に雲泥の差が出てくる。
後継者争いで兄弟間の仲はちょっと前までギスギスしていたが、姉妹への当たりは普通だったし、姉ちゃん、姉様、と慕ってくる半分だけ血の繋がった弟妹達は可愛いと言えば可愛い。
なので、私は金持ちと結婚せねば!と意気込んでいた。
こんな平々凡々でちょっと家が特殊な私だけど、若いうちからアピールしていれば、弟妹8人分くらいの学費を援助しても良いよと言ってくれるような、ちょっと心の広い金持ちと結婚できるかもと思っていたのだ。
だが、現実は甘くなかった。
と言うより、私の運があまりにもなかった。
私は学園に入り、友人選びに失敗したのが大きな原因である。
友人となったユリア・ミーディス侯爵令嬢は、美しい子だった。
いや、どちらかと言うと可憐とか可愛いという形容詞が合うか。
とにかく、学園で一番の美人or可愛い子はと聞かれれば、学園にいる人間の9割がユリアの名前を出すくらいだった。
貴族令嬢らしいおっとりとした雰囲気にも関わらず、成績も優秀だし、魔法使用にも長けている。
そんな才色兼備な彼女と友人になれて喜んでいたのは、最初の1か月だけだった。
彼女自身は良い子だ。
平凡な私を大切にしてくれている。
大好きだと言ってくれる。
…………いや、ちょっと愛しすぎている。
手を繋げば触り方がオッサンくさいし、すぐに腰に手を回してきたりするし、女性同士じゃあまり肩は組まないと思うけど組んでくるし、ついでに胸部も触ってくる。
最初はスキンシップ過多だなぐらいだったが、前世の知識も相俟って、セクハラという感想になるのは早かった。
あ、私前世の知識もあるのよね。
特に活用できてもないけど。
兎にも角にも。
何がユリアをセクハラオッサンに仕立て上げてるのか分からないけど、私に対してだけはセクハラオッサン道まっしぐらだった。
しかも執着心が半端ない。
結果、私にユリア以外の友達はできなかった。
交際相手を探しても、皆ユリアに流れていく。
さりげなく距離を置こうとすれば、泣かれて私が悪者になる。
令息がユリアを誘っても、私と一緒じゃないと嫌だ言い張り、同行者の私だけが睨まれるという負のスパイラル。
これで私が前世の知識を活かせたり、精霊が見えるというスキルが活かせたら良かったんだけど。
あ、私精霊見えるのよね。
見えても干渉はできないから、活用方法が無いんだけれど。
成績も平凡だし、ユリアの隣にいるせいで、容姿が平凡以下の扱いになってしまった私には、結婚相手を学園で探す事は絶望的になった。
そんな頭を抱える私にユリアは、
「えー?リリベルのためなら、弟君達の学費くらい出すわよー?」
と言うが、出してもらったが最後、私がどうなるか分からない。
「ふふ。私が男だったらリリベルをお嫁さんにしたのになあ……」
あ、リリベルが男だったら、お婿さんにもらってたわ!と、涎を垂らさんばかりの恍惚な表情で見られ、異性じゃなくて良かったと、心底思った。
ユリアの事は嫌いではないし、私なりに友情は抱いているが、ちょっと、恐い。
そんな激重な友情を抱いている友人がいるので、私は長期休暇に、父や母や、愛人達の伝手で見合い相手を斡旋してもらった。
最終ユリアに目移りされても、お金を出すという言質さえ取れれば勝ちだという気持ちで挑んだお見合いだった。
「わあ…………」
見合い相手を見て驚いた。
正確には、見合い相手に群がる精霊に。
基本、精霊は四大元素の性質を持つ子が多い。
火の精霊とか水の精霊とか、精霊と言われて思い付くようなやつだ。
精霊に好かれると、その魔法を使いやすく、またその元素に惹かれるという現象がある。
火の精霊に好かれれば、火魔法が得意だけど、極端に寒がりになるとか。
水の精霊に好かれれば、水魔法が得意だけど、喉が渇きやすかったり、1日1回はお風呂に入らないと気がすまないとか。
そして、ごくまれに、四大元素以外の性質を持つ人もいる。
光とか闇とかもいるにはいるけど、そういうものとは違う、もっと概念に近いものである。
そう、例えば、見合い相手のように、精霊が全てお金の形をしているとか。
お金の形とは少し違うかもしれない。
¥とか$とか€という形?記号?をしているのだ。
キラキラと輝き、クルクルと彼の周りをまわっている。
「ユッキチ・ルーバスだ」
「リリベル・ダングースです……」
諭吉……、と脳内変換をしつつ、令嬢相手に手を差し出したルーバス伯爵令息の手を、私はおずおずと握った。
「おっと失礼。令嬢相手に握手はおかしいな」
「いえ、お気になさらず。……ルーバス様の家は、手広くお商売をされてますから……」
貴族が商売など、と悪口を言っても負け惜しみにしかならないくらいに、ルーバス伯爵は、いや、目の前のユッキチ・ルーバスは儲けているのだ。
現ルーバス伯爵もある程度は事業に手を出していたが、ユッキチの足元にも及ばないだろう。
3年程前、彼が貴族学院に入学した辺りから頭角を現し、今では錬金術で石ころを黄金にしたと言われた方が信じられるくらいの財産を持っている。
「(これだけお金に愛されてたら、さもありなん、ね……)」
¥とか$とか€の文字にしか見えない精霊達は、嬉しそうに彼の周りを回っている。
金は天下の回りもの、というより、金が彼の体を回っている、という感じだ。
「最初に言っておくが、私は君を愛する事はない。だってお金が一番大好きだからーっ!」
「…………そうでしょうね」
これだけお金(?)の精霊に愛されているのだ。
彼がそれに引っ張られて、生身の人間より金銭至上主義になってもおかしくない。
キラキラしたお金の精霊に圧倒されている私に、諭吉は私の事を不思議そうな目で見た。
「珍しいね。大体このセリフを言ったら、令嬢は怒るか、媚び媚びに笑うかのどっちかなんだが」
まあ、失礼な台詞ではあるので怒るのは仕方ないだろうし、お金目当てなら、彼が金銭至上主義でも問題ないのだろう。
「…………信じるかどうかはお任せしますが、私、精霊が見えるんです」
「へえ。それは珍しいね」
ちょっと驚いたようだが、精霊が見える人は皆無ではない。
ちょっと珍しいな、くらいの扱いだ。
「ただ、触るとか話すとかはできないので、いるなあ、くらいのものなんですが……。諭吉、じゃない、ルーバス様の周りには、その、お金の形?記号?をした精霊が見えるので……」
「え!?これ、お金の形なのかい!?」
精霊が見える人にとっても、不思議な形をした黄金色の精霊としか分からなかったので、諭吉にも何の精霊かずっと分からなかったらしい。
黄金の精霊ですかねえ、と言われて、そうなのかな?くらいで終わっていたのだとか。
「この近辺の通貨ではなく、遠い、遠い国の通貨の形、と言いますか、記号です」
「なるほど。お金に愛されているのだな、私は」
なるほどなるほど、と諭吉はホクホク笑顔だ。
そしてお金の精霊も嬉しそうだ。
「で、どうする?」
「どうする、とは……?」
「私は、一にお金、二にお金、三四に財産で五に伯爵領、くらいにしか思えない人間だし、たぶん頑張っても、君を五位くらいまでにしか愛せない」
「…………なら、浮気は無いと思ってもよろしいでしょうか?」
お金目的の愛人志望はたくさん湧くだろうが、愛人がわんさか、というタイプには見えない。
私の返答が面白かったのか、諭吉の目が面白そうに細められる。
「無いね。浮気する暇があるなら金儲けをしたい。まあ、才能ある者に援助をするのはやぶさかではないが、体を差し出さなければいけないレベルの才能なら、私は興味が無いね」
むしろ私が出したいくらいに才能溢れた相手でないと、と楽しそうに笑う。
言ってる事は女性相手に、いや、男性相手でも失礼な話だろうが、それでも私はこの人なら信じられるような気がした。
お金に惹かれるのもある。
弟妹達への援助を欲するのもある。
だがそれ以上に、この人は私を裏切る事は無いと思ったのだ。
だって、私を裏切ろうと思う程、この人は私に興味が無さそうだから。
いつまでもベタベタラブラブな両親とか、友情と言う名の異常な執着を見せるユリアや、ユリアに好かれたいあまりに嫌悪を向ける学園の生徒に日々接してきた私は、これくらい私に興味が無い人の方が安心できた。
「私もお金目当てです。ですが、お金を儲ける事に才能ある貴方を尊敬はします」
いくらお金の精霊達に好かれていても、才能が無ければあれだけの財は築けないだろう。
お金の精霊達がこれだけ居心地良さそうにしているという事は、これからも彼は儲け続けるに違いない。
貴族としては失格なくらいにぶっちゃけた私を、ふふ、と諭吉が笑う。
「良いね。お金目当ての令嬢は今までたくさんいたが、君が一番金遣いが上手そうだ」
「お金遣いが上手い、……ですか?」
「ああ。僕の財産目当ての女性は、金遣いが荒そうな人ばかりだった」
これから弟妹×8人分の学費を分取ろうとしている私は、金遣いが荒いになるんじゃないだろうかと不安に思っていたのだが、諭吉は笑うばかりだった。
「浪費するのは良いんだよ。宝石でもドレスでも、好きなだけ買えば良いし、きっと僕の手元から金はなくならない」
「お金を使う、という点に変わりないのでは?」
「違うね。買って終わり、なんてナンセンスだよ。着れない程のドレスや、コレクションにするだけの宝石なんて価値が無い。一度でも着て人に見せるドレスなら構わない。一度でもつける宝石なら、指10本分ずつ買っても構わない。ただ、私が求めるのは、周りに魅せる事だ」
「魅せる……」
「うちの財を魅せる、でも良い。うちの商会の商品を魅せるでも良い。儲けがなくとも、いつかの儲けに繋がるなら、どれだけ使ってくれても良いんだ」
君はその才能があるように思うよ、と諭吉は笑うが、私にどんな才能があると言うのか。
「……私は見ての通り、外見も平凡ですし、中身も平凡です。だから才能なんて……」
「その考え方は君も含め、もったいないよ」
「え…………?」
「君、自分が似合う色って知ってる?」
似合う色、と急に言われて、私は戸惑ってしまう。
「……よく着るのは、青や緑、でしょうか」
「きっと君は、黄色でもピンクでも赤でも黒でも白でも似合うよ。綺麗系から可愛い系まで全部着こなせる」
大抵の人間は、似合う色、や系統というものがある。
どんなに美しいユリアでも、黄色系や緑系はあまり映えないし、シンプルすぎるドレスは着こなす事ができないくらいなのに。
まさか、と信じられないという表情を浮かべる私に、諭吉は自信たっぷりに口を開く。
「平凡って君は言うけど、突出してないからこそ何にでも馴染める。白いキャンバスにはどんな色を乗せても美しいのと同じ原理さ。人によっては似合わない流行の最先端を、君ならいつでも何でも着こなせるだろうね」
広告塔として考えるなら、とてもありがたい存在だね、と諭吉が笑う。
「…………私についてる精霊が関係しているかもしれません」
「君にも精霊がついてるの?」
へえ、と諭吉が興味深そうな表情を浮かべる。
「四大元素ではない特殊な精霊だと思います。天秤の形をしていて、…………常に私に平均値を与えます」
一度父母に話した時に、平均値になるだけかあ、と落胆された声を出されてから、誰にも言った事がなかったのだが。
なんだそれ、というような反応を予想していた私を、諭吉は裏切ってきた。
「素晴らしいじゃないか!」
「え?」
興奮して立ち上がった諭吉を、私はキョトリとした目で見上げる。
おっと失礼、と言いながらも、諭吉は笑っていた。
「たぶんだけどね。その平均値の取り方、変えられるんじゃないかな?」
「平均値の取り方……?」
「例えば、国中の人間の給与の平均値と、貴族だけとか、高位貴族だけ、と変えていくとその値は変わってくる」
「あ……」
「悪いが、君の学園での成績は中の中だなと思った。けど、次回は、高位貴族の平均を狙ってごらん。きっともう少し上がるよ」
そんな使い方が?と私は自分についている精霊を見つめる。
天秤はいつでも水平だ。
どちらに偏る事もない。
「それに、僕としては君がいてくれるとありがたい!」
「どういう事でしょう?」
「僕はお金が好きで貯めるのは好きだが、使うのが下手だし、貯める一方で敵も増えてきた。だから、君が少し上めの平均値でならしてくれたら、必要以上に貧乏になって苦労したり、必要以上に金持ちになって敵を増やす事もなさそうだ」
考えてみれば、貴族社会からはみ出してそうなダングース伯爵家も、なんだかんだで上手くいってるもんなあ、と諭吉が笑う。
確かに、現在側妃ですら廃止した王家が、浮気者だらけのうちを嫌悪してもおかしくないのに、のらりくらりとやってはいけてる。
「私の精霊のおかげ……?」
「全てが精霊のおかげ、って事は無いだろうさ。何て言うか、君自身の要因も大きいと思うよ?」
「私……?」
「なんかね、君と一緒にいると楽な感じがする。良い意味でも悪い意味でも、君は公平な人なんだろうね。だから、私みたいな変わり者は、安心できるんだと思う」
そう言えば、ユリアも同じような事を言っていたなと思い出す。
ユリアのバックにあるミーディス侯爵家を見るでもなく、ユリアの外見しか見るでもない私が変わっている、と。
駄目な事は駄目と言うし、嫌な事は嫌とも言う。
そんな人、今まで周りにいなかった、と出会って2週間目くらいにユリアは笑って言っていた。
…………それから更に2週間経った頃には、激重粘着系友情を抱くようになっていたけれど。
「君は平凡なんて、って顔してるけど、素敵な平凡、って言うか、平均だと思うよ」
こういうのを目から鱗というのだろうか。
私は今まで、どうせ、とか、所詮、と思っていた事柄を、諭吉は良いと言ってくれる。
器用貧乏だと思っていたけれど、器用金持ちにしてあげるよ、と諭吉が笑う。
「…………ルーバス様、結婚してくださいます?」
「ああ。こちらこそお願いするよ。ダングース嬢、いや、これからは、リリベルと呼んでも良いかい?」
「勿論です。私も諭吉様とお呼びしますわね」
「ユキチじゃなくて、ユッキチだよ」
「はい!諭吉様!」
それからも私は彼の事を諭吉と呼び続けたため、向こうがもう諭吉で良いと折れた。
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あれから20年ちょっと。
私と諭吉はほどほどに仲の良い家族をしている。
彼は今でもお金の精霊に好かれている、と言うより、憑りつかれている金の亡者だ。
家族の事はまあまあ大事にしてくれている。
貴族と言えどももうちょっと家族愛を、と思う人もいそうなレベルだが、人の心とか無いんかと言う性格破綻者の見目麗しい長男や、魔法の事さえ考えれたら世界が滅んでも良い、くらいの長女には程よい距離感のようである。
まあ私も、お金が好きなだけという単純な夫が相手というのは気楽なものだ。
たぶん私の場合は、ユリアという激重粘着ネチネチ系友人がいるので、これくらい淡泊な家族がいるという事で、人間関係の平均値を取れているというところなんだろう。
そして、弟妹達も全員無事学園を卒業、と言えれば良かったが、あれからも異母兄弟やら異父兄弟やら同父母兄弟が増える一方だったので、一番下の兄弟が漸く今年学園に入ったところだ。
一応皆無事卒業はできているが。
諭吉には申し訳ないなとは思うが、うちの兄弟達は皆私や諭吉に感謝しているせいか、実家のダングース家ではなくルーバス家に尽くしたいという子が多いので、それなりに学費の還元はされていた。
あれだけ後継者争いをしていた兄弟達なのに、誰一人ダングース家を継ぎたい人間もおらず、後継者争いならぬ、後継者押し付けが日々行われている。
君がお嫁入りしちゃったから、平均的な家族の幸せから逸脱しちゃったのかねえ、は諭吉の言葉だ。
「リルーシューっ、慰謝料少なかったし、そのお金、増やしてあげようか?」
右目を¥、左目を$の形にしながら、諭吉が娘のリルーシュに尋ねる。
普通、娘が婚約破棄とかされて慰謝料をもらうような事になったら、「お前が好きに使いなさい(優しい笑み)」とか、「うちに入ったお金はお前のものじゃない(下卑た笑み)」とか言うもんじゃないだろうか。
少なくとも、ちょっとはお金になって良かったね、と笑うものじゃない。
娘も娘で変わっているので、増やしてくれるなら良いよー、と軽い。
諭吉についているお金の精霊も、嬉しそうにピカピカしているので、それなりの儲けが出そうだ。
まあ、娘にもそれなりに還元されるだろう。
私は平均的な貴族夫人なので、息子も娘も平均的に育てたというのに、どうしてこう、2人共尖った成長を経たのか。
息子も娘も精霊付きとは言えど、ここまで酷いのはおかしい。
無駄だなとは思っているが、私は娘に、貴族令嬢として結婚とは、と小言を言う。
つまらなさそうに、嫌そうにしながらも、娘はちゃんと私の小言を最後まで聞く。
天才的な魔法の才能があっても、こういうところは素直なのだ。
人の心の無い、美貌しか取り柄のない長男も、一応私の小言は聞いてくれるし、諭吉もそれなりに私の尻の下には敷かれてくれている。
才能に秀でた家族達にとって、私は平均のつまらない女かもしれない。
だけど、私は平均的な貴族夫人としての幸せを享受していると自負できる。
守銭奴父さんのお話を書きたかったのですが、いつの間にか平均母さんのお話になっていました。
たぶん、平凡系ハーレム主人公の素質のある母上です。




