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ヒロイン矯正!  作者: アールエー
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その44 神国の表と裏


「ごめんなさいね、突然呼ばれてびっくりしたよね?どうしても、貴女に聞きたい事があったの。どうぞ、そこに座ってちょうだい」


メリッサ総主教猊下は、とても一番偉い人とは思えない低姿勢で私に椅子を勧めてきた。

こちらとしては、はいと答えるしかない。

場所はお嬢様達と対談した大きな応接間から、4人がけの椅子とテーブルが置いてある小さな応接室へ移った。部屋の飾りも少なく、何となく前世の会社の応接室を思い出した。

神官様がお茶を淹れて猊下と私に配ると、そっと出て行った。これで、部屋には2人切りとなった。


「一応ね、周りの人間には聖女様の普段の様子を聞きたいと言っているの」


ん?と言う事は、聖女とは関係ない話?


「これを話す前に、私の話をしましょうか。私は聖霊様から、御加護は頂いてないのだけど、聖霊様の御加護が掛かった物や人を見分ける能力を頂いたのよ」


…と言う事は…もしかして…。


「気付いたかしら?聖女キャサリン様ともう1人、貴女から聖霊様の力を感じる事ができるの」


…そっかぁ。それは、慎重に成らざるを得ないか。もしかしたら、二人目の聖女が現れるのだ。それも、聖女様の近くに居るにも関わらず、見逃していた聖女が。


「なるほど、私から感じる聖霊様の力が何なのか、知りたいと言う事ですね?」


「ええ、そうよ。聖霊様の力が関係する以上、私達神国の者は、見逃すわけにはいかないの。ただ、その事が報告に上がってないと言う事は、何らかの事情があるのかと思ってね。ここに来て頂いたのよ」


私はお茶を一口飲み、考えをまとめる。

実の所、私の御加護については何時かバレると予想は着いていたので、殿下達とは話をしていたのだ。


「まず、私は聖霊様の御加護を得ています」


「まあ、やはり…」


「ただ、キャサリン様とは違う聖霊様より、炎の御加護を授かりました」


「違う聖霊様…?」


この辺りは神国の、それも総主教猊下ですら知らないのか…。余程珍しいのか、歴史の陰に埋もれやすい加護なのか。…両方の様な気がする。


「キャサリン様に御加護を授けた聖霊様は、光と癒しの聖霊様、私は炎と武術の聖霊様より授かりました」


私は証拠として、人差し指を上に上げて、ライターの様に指先に火を灯しました。総主教猊下も「それが聖霊様の炎…」と喜んでくれました。


その後も聖霊様の種類、授かった奇跡の違い、誰がこの事を知っているかを猊下に話しました。


「…そう、そんな事になっていたのね…。ありがとう、レイナさん。ただ、そこまで話しても良いのかしら?もし、何か貴女に不都合が生じる様なら…」


そう言われる猊下は、本当に私の身を案じる御顔をしていた。神国の代表ではあるが、本質は優しい方なんだなと思えた。


「大丈夫です猊下、ありがとうございます。この件に付きましては、神国に、特に猊下に隠す事はないと国王陛下より許可を頂いております。猊下が、聖霊様について何らかの能力を持っておられるとは、王国上層部では勘付いておりました。何の力なのかは分かりませんでしたが…」


「そうなのね。ひとまず安心はしたわ」


「そこまでご心配して頂けると、私としては嬉しい限りです。王国は、聖霊様や聖女様について、一切隠し事はしないと伝える様、申し入れてくれと国王陛下より言葉を頂いております。これを以て王国の誠意とすると」


「まあ、うふふ…。こちらが気付かなければ、お話して貰えなかったのにね」


「その辺りはまあ、解釈の違いと言う事で。聖霊様に一番近い神国の事だ、きっと気付くだろうとの事でした」


「あらあら…」


メリッサ総主教猊下はニコニコしながらも、それで…と話を続けた。


「炎の聖女様は、どうされたいの?もちろん、貴女が聖女であると、今からでも認定する事も可能よ」


「ありがとうございます。私としては、このまま聖女様、キャサリンお嬢様にお仕えしたく存じます。これは、私の我儘です」


「…分かりました。聖女様の御心のままに。何時でも、相談にきても構いませんからね?神国は、聖女様を助ける為に建国されたのですよ」




メキルド神国神殿のとある一室


「それでは、聖女は王国へ帰られると?」


「はい、そのようで…」


幾人かの男達が、暗い顔をして一室に集まっている。その中でも特に、中央の男が暗く、苛立ちを隠せない様子で報告を聞いていた。


男の名前はフロリアン枢機卿、次期総主教と目されている…が、実際は良くて半数未満だ。それは本人もよく分かっていた。


「全く、総主教も聖女を留めておく事すら出来んとは。情けない。だから早く引退すれば良かったのだ」


「しかしフロリアン枢機卿猊下。このままでは総主教腹心の、ジャック枢機卿が次の総主教になるのでは?今日、聖女様にあった枢機卿も、彼だけなのですぞ」


「分かっておる、小賢しい腰巾着め。たが、奴らでは聖女を御する事ができない。儂だ、儂だけが聖女を意のままにする事ができる」


そう言うと彼は懐から手紙を取り出し、テーブルに置いた。


「これは…枢機卿猊下?」


「ふふふ…。王国の貴族も一枚岩ではないと言う事だ。この手紙の主は、余程聖女が嫌いらしい。捕らえて罪を被せ、神国へ寄越す手配を整えていると言う」


「な、なんと…!しかし、聖女様に対して不敬なのでは…」


「なに、罪を擦り付けるのは王国の貴族だ。こちらは丁重に扱えば良い。ただ、王国との軋轢を避けるため、少しばかり我が屋敷で落ち着いて貰わねばならんだろうな…」


フロリアン枢機卿は、自分が唯一聖女に命令できる総主教になり、自分の屋敷に聖女を留める日を想像した。今日、すれ違うように会った聖女。美しい顔、張りのある肌、そして艶めかしい身体…。長期間同じ屋敷に住めば、或いは間違いが起きないとも限らないではないか…!


「この貴族と連絡を取るぞ。神官の中から連絡員を選出しろ」


男達の身勝手な野望は部屋に暗い影を落とし、その影の中で欲望にまみれた想像を働かせていたのだった。


「………これは、総主教猊下にお伝えせねば…」


その影から1人だけ、そっと抜け出して行く事に、その場にいた誰も気付く事は出来なかった。

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