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ヒロイン矯正!  作者: アールエー
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40/64

その40 避暑地観光


メキルド神国は王都から南に、5日程馬車で進んだ距離にある半島の国だ。

聖霊教の総本山で、総主教の下に13名の枢機卿がいて、この方達が最高指導者として君臨している。と言っても、血筋で決まるのではなく、総主教は時の枢機卿の中から、枢機卿は各地の大司教が管轄する神官達からの投票で決まるので、一種の民主主義制度に近い体制となっていた。

階級の名前は元の世界の宗教と似たような感じだが、内容は異なる事が多い。


ちなみに、お嬢様の階級は準枢機卿待遇である。

直接お嬢様に命令できるのは総主教のみで、他の枢機卿はお願いする立場になる。ただし、組織に関する命令権はない。大司教に命令してお茶を持ってこさせる事はできても、大司教を他の支部に異動とかの権限はない。

まあ、高待遇のお客様という事だな(大司教にお茶の命令するのは、別の意味で失礼だけど)。


総主教猊下とは、お嬢様が王都で聖女認定された時に会ったっきりだけど、大司教や下で働く神官達とは治療の手配や場所(教会)の提供、患者の紹介に集まった患者の仕分け、宿泊の手配等、様々な所で下支えしてくれている。

そもそもお嬢様の学費や生活費は、教会と後援のウォルフ公爵家から来ているので、その辺りでもお世話になっているのだ。


その分、お嬢様が辻斬りならぬ辻治療をするのは、余り良い顔をされない。教会を通して欲しいと言う事。安全面も確かにあるしね。


国境の街の水害によって少しスケジュールは押したけど、一度王都に戻る筈だった予定を直接神国に行く事で調整し、早速馬車で向かう事になった。


「レイナ〜。働き詰めで、少しくらい休みが欲しいんだけど〜」


「そうですよね。労働基準法違反で労働基準監督署に訴えますか?36協定(さぶろくきょうてい)も結んでませんし」


「何処にあるのよ、労働基準監督署って…。つーか、36協定って何?」


あー、そういや高校生だったもんなぁ…。前世のうちの娘には、バイトする時に労働基準法を教えたけど。


「まあ、この世界では関係のない事ですね。それより、この先の少しルートから外れたローランドという街に、大きな湖畔の避暑地があった筈です。流石に急に宿を確保する事は難しいでしょうけど、教会に泊めて貰う事ができるか、神官様に聞いてみましょうか?せめて1日だけでも休みが取れたらと」


「本当!?いいわね、ハドルド王子様も遅れているし!」


ハドルド王子は一緒に行く筈だったのですが、どうしても王族の業務が片付かず、泣く泣く1〜2日遅れてくるとの事。


その後、神官様や大司教様に相談したところ、水害での活躍もあり確かに休日は必要だ、避暑地の街も聖女の訪問を喜ぶだろうとの事で、前後で奇跡を起こして頂けるなら、と行く事が決まった。


「やった!舟遊びしたり、美味しい物が食べたいわ!」


「この世界は乙女ゲームの影響か、やたらと料理技術が発達してますからねぇ。料理チートができないくらい」


多分、醤油とか味噌とかも、探したら見付かるだろうな。胡椒すらあるし。




「広い湖ね…。向こう岸が見えないわ」


避暑地に着いて、教会での治療を行った次の日。お嬢様が一緒に食べようと言ってくれたお陰で、私も豪華な朝食を食べ、早速この地方の有名観光地である湖に行ってみた。

大体、観光地図で見る限り琵琶湖と同じくらいの大きさだけど、この地方には高い山がない為、湖の向こう岸が水平線になってて完全に見えない。朝霧の影響もあるかも知れないけど。


「早くボートに乗ろう!って、レイナ、何でズボン?」


「ボートは二人乗りですので、いざという時に動ける様にです。護衛の騎士達はお嬢様の観光の邪魔にならない様、少し離れた場所にいますので先ずは私が動かないとなりません」


そのまま二人でボートに乗り込んだ。手漕ぎボートなんて久し振り(前世振り)だから大丈夫かな?

そう思いながらも軽快にスタート。ぐんぐんスピードを上げ、岸から結構離れた場所に着いた。と言っても、声がギリギリ届く範囲。

周囲には同じく女性同士か、カップルが乗ったボートが何艘か浮かんでいる。


「気持ち良いわね〜!私、ボートに乗ったのは初めてなのよ」


「私は久し振りですね。お嬢様、ボートはバランスが厳しいので、立つのはもちろん、水面を覗く時も声をかけて下さいね」


「幾ら夏でも、水泳はしたくないわね〜。ああ、ここにハドルド王子がいれば…」


「いても二人切りで乗せませんよ。シリウス殿下の厳命です」


「ちょっとシリウス殿下、厳し過ぎない!?本当にそんな事言ったの!?」


「やっちゃいけないリスト、お見せしましょうか?事細かに書かれて、ハドルド王子に何か言われたら見せろとサインまで…」


はっはっはっ、お嬢様お口あんぐりだ。

恋人とイチャイチャプレイできない青少年の、恨みと妬みと性欲が込められた、感情爆発しているリストだからなぁ。多分王太子殿下、解禁されたら上から順番にやってみるんじゃないかな?

書いてる内容は、例えばボートに乗って護衛の見えない場所に行ってチューするとか、中学生レベルだけど。


とか考えていたら、ドゴンとボートの横腹に衝撃。お嬢様がキャッと叫んでボートにしがみつく。ボートは揺れるが転覆せずに済んだ。


「ご、ごめんなさい!ちょっとミリー!ぶつかったじゃないの!大丈夫ですか…あっ…!!」


ぶつかったボートに乗っていたのはアリシア・ローランド伯爵令嬢。お嬢様の言う、今回の悪役令嬢であった。

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